インタビュー:バークシャーと書簡で意見交換、相互利益高める=三井物産社長

大林優香 平田紀之
[東京 12日 ロイター] - 三井物産の安永竜夫社長は、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米バークシャー・ハザウェイが他の日本の商社とともに同社株式を5%超取得したことを受け、ビジネス面で「ミューチュアルベネフィット(相互利益)」となる取り組みを進める方針を示した。9日に行ったロイターのインタビューで述べた。バークシャーとは書簡を通じて意見交換しているという。
バークシャー側から直接的な要求は来ていないものの、三井物産としては、コミットした事業計画の達成と、相互利益につながる取り組みが重要だと指摘。具体的には、バークシャーが筆頭株主となっている米透析クリニック最大手のダビータとアジア展開で提携していることを挙げ、「これをしっかり伸ばすのが、相互利益のひとつの対象になる」とした。同様の取り組みを「あといくつ作れるかは、これからのチャレンジ」という。
同社は非資源分野の柱の1つとして、ヘルスケア領域に注力している。出資するアジア最大手の民間病院グループIHHヘルスケアでは、コロナ禍で遠隔診断など医療サービスのオンライン化が進みつつあり、データを活用した新たな事業展開に追い風とみる。保険、製薬業界との提携も視野に入れるほか、疾病の予防につながる栄養分野も強化する考えだ。
<石炭、石油からガスにシフト>
資源・エネルギー分野では世界的な脱炭素化の潮流を踏まえ、石炭・石油からガスへのシフトを強める。同社は温室効果ガスの排出を削減貢献量と相殺することで2050年に「ネットゼロ」にする目標を掲げており、安永社長は、インドネシア、中国、マレーシア、モロッコの4カ国に持つ石炭火力発電事業を2030年までにゼロにする考えを示した。各国の事情を考慮しつつ「売却のタイミングを見ていく」とした。
コロナ禍の不況を受けた投資見直しの結果、原油の上流分野で新規を含む複数の投資案件を見送ったと述べた。一方、LNGは計画通りの進捗で、モザンビークやロシア北極圏のプロジェクトが4年程度で立ち上がる見通し。同社のエネルギーの権益生産量に占める原油の比率は2030年に向け低下するという。
日本政府は、老朽化した石炭火力発電所を段階的に休廃止する方針を示したが「一足飛びに全て再生可能エネルギーにシフトするというのは現実解ではない」と指摘。発電量を調整しやすいガス火力は、発電ボラティリティの高い再エネと相性がいいと見ており、コロナの影響や供給過剰で一時は大幅に下落したLNG市場も、中期的には回復するとの見方を示した。
足元の最優先課題としては、コロナを機に新たな成長事業を創出するとともに、コロナ禍で需要が減退した事業のダメージの最小化を挙げた。「場合によっては、賞味期限というかビジネスライフが想定より早くなり得ることを考え、撤退するものは、早め早めの撤退を考えないといけない」と述べた。

大林優香 平田紀之 編集:石田仁志

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