恐怖…世界が注目の「毒殺未遂事件」から見えた「深い闇」

「ノヴィチョク」と毒ガスの歴史

ナワリヌイ氏毒殺未遂事件

本年8月20日、ロシアの弁護士で野党の指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が、西シベリアからモスクワに向かう飛行機内で体調不良を訴え、緊急着陸後に入院した。

一時的には人工呼吸器が必要な状態まで悪化したようだが、その後は徐々に回復とのことで、ここまでであれば、そう珍しくない飛行機での急病人発生という事件だ。

その後、彼の飲み物に毒物が入れられたという疑惑が持ち上がり、8月22日にはベルリンの病院に移送され、検査の結果、旧ソ連で開発された軍用の神経ガス「ノヴィチョク」が検出されて、事態は大きな国際問題となりつつある。

アレクセイ・ナワリヌイ氏〔PHOTO〕gettyimages

ノヴィチョクは、イギリスの二重スパイでロシアに狙われていたセルゲイ・スクリパル氏とその娘のユリヤ氏の毒殺未遂事件(2018年3月4日、イギリスのソールズベリーで起きた)でも使われたとされる毒物だ。

ノヴィチョクとは、ロシア語で「新人」を意味しており、1980年前後に旧ソ連で開発され量産されていた化学兵器(毒ガス)である。

 

ナワリヌイ氏の場合は飲み物から、スクリパル氏の場合はドアノブから毒物が体内に入り込んだと推測されている。

地下鉄サリン事件で使われたサリンと同じタイプの神経ガスなので、鼻水やよだれや冷や汗が止まらなくなり、瞳が点のように小さくなり、腹痛や筋肉のけいれんが生じて意識消失し、多量に浴びた場合には呼吸筋の麻痺や脳の呼吸中枢の障害によって数分で窒息死する(アセチルコリン過剰状態)。

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