昇進すると一般に、地位や給料が上がるだけでなく、意思決定の権限や社内外でネットワークを構築する機会なども与えられる。部下と比較すれば明らかな優位な立場にあるが、筆者らの調査によると、職場での嫉妬心は、同僚に対してだけでなく、上司から部下にも生じることがわかった。加えて、「有能だが冷淡」だと評価する部下に嫉妬心を抱いた場合、上司は虐待的な対応をとることも判明したという。


 上司は、その地位に伴う、さまざまな利益を享受している。リソースを掌握し、重要な意思決定を下し、高い給料やその他のありがたい特典を受け取り、社内外の「陰の実力者」とネットワークを構築する機会がある。

 こうした明白な優位があるにもかかわらず、上司は「下への嫉妬」、つまり自分が管理している部下への嫉妬心を持たないわけではない。これが特に顕著なのは、部下が高い対人能力を持っている、リーダーシップの潜在能力を発揮している、上級管理職と緊密な関係を築いている、革新的なアイデアの源泉と見なされている、といった場合だ。

 職場での同僚間の嫉妬については広く研究されてきた。上司に対する部下の嫉妬についても同様だ。ところが、部下への嫉妬心に関して、特にそれが職場でどう表出しているかについては、ほとんど研究されていない。

 我々の研究はこの不足を補うものであり、部下への嫉妬の存在を明らかにしている。その感情を我々は次のように定義した。「管理者であるリーダーが、自身は欲しているが持っていないものを部下は持っている、と気づいたときに抱く、つらい劣等感」

 また大方の予想に反し、部下への嫉妬は必ずしも職場に害を与える要因とは限らないこともわかった。実際には、正しい条件さえ揃えば、嫉妬心がポジティブな効果をもたらして意欲を高める可能性もあるのだ。