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 米Apple(アップル)は米国時間2020年9月15日に新製品発表会を実施した。発売が遅れるとされているiPhoneの新機種が登場せず「主役不在」の発表会となった。新たに発表されたApple WatchとiPadの新機種、そしてサービスからはアップルのビジネスの変化を明確に見て取ることができる。

Apple Watchにも「SE」が登場

 新型コロナウイルスの影響により、2020年のiPhone新機種の発表は数週間遅れると公表していたアップル。米国時間の2020年9月15日と、ほぼ例年通りのタイミングで新製品発表会をオンラインで実施したことから、新iPhoneの発表も期待する向きも少なからずあった。

 だが発表会の冒頭、CEOのティム・クック氏は「2つの製品を取り上げます。それはApple WatchとiPadです」と明確に宣言。新iPhoneの「チラ見せ」もなく、SNSでは落胆の声を上げる人も多かったようだ。やむを得ない事情があるとはいえ、主役不在の印象が否めないというのが正直な感想でもある。

 とはいえ今回の発表内容からは、アップルのビジネスの方向性に明確な変化が出てきたことを見て取ることができる。そのことを示しているのが低価格なデバイスのラインアップ充実であり、中でも象徴的な存在といえるのがApple Watchである。

 今回アップルは、従来のApple Watchの正統な後継モデル「Apple Watch Series 6」だけでなく、新たに低価格版の「Apple Watch SE」を用意。価格も2万9800円(税別)からと、4万2800円(税別)からのApple Watch Series 6より安価に設定され、購入しやすさを重視したモデルとなっている。

アップルが新たに投入した「Apple Watch SE」。「Apple Watch Series 6」と比べいくつかの機能が減らされているが、その分2万9800円からとより安価に提供される
アップルが新たに投入した「Apple Watch SE」。「Apple Watch Series 6」と比べいくつかの機能が減らされているが、その分2万9800円からとより安価に提供される
(出所:アップル)
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 もちろん、Apple Watch SEは低価格化のため、Apple Watch Series 6に追加された血中酸素濃度の測定機能などは用意されておらず、ボディ素材を選ぶこともできない。だが性能面では前モデルとなる「Apple Watch Series 5」にかなり近く、コストパフォーマンスが高いApple Watchとなったことは確かだ。