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東京電力フュエル&パワーと中部電力の共同出資会社JERAがデータ経営にまい進している。同社を率いる小野田聡社長は燃料調達から輸送、発電、販売までの事業全体をデータとAIで革新すると宣言。熟練工頼みだった発電所運営にデジタルの力を組み合わせ、新たな電力会社像を模索する。

(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ編集長、松浦 龍夫=日経クロステック/日経コンピュータ)

小野田 聡(おのだ・さとし)氏
小野田 聡(おのだ・さとし)氏
1980年に慶応義塾大学大学院を修了し、同年中部電力入社。2013年取締役専務執行役員・発電本部長、18年4月から副社長執行役員・発電カンパニー社長。同年6月に代表取締役を経て、2019年4月から現職。1955年生まれ。愛知県出身。(写真:村田 和聡)
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コロナ危機で経済活動が大きく停滞しました。経営への影響はどうでしょうか。

 企業を中心に電力需要が落ち込んで、非常に大きな影響を受けています。ただ、この1年間を振り返ると2019年4月に2社(東京電力フュエル&パワーと中部電力)の火力発電事業を引き継いで統合し、年間売上高3兆円規模と日本最大の発電事業者になりました。事業領域の拡大のほか統合のシナジーを着実に発揮できています。

 統合に当たってはこれまでの東京電力F&Pと中部電力のどちらかに業務を合わせるのではなく、新しい形の業務を作り出すことを基本に据えました。具体的なシナジーとして2023年度までに1000億円の改善効果を目指しており、既に250億円ぐらいまでは計画を達成しています。

火力発電事業の統合に合わせて、新たな基幹システムを稼働させました。これも同じ発想で臨んだのですか。

 はい。統合前のどちらかに合わせるのではなく、全く新しいシステムを構築しました。いつでもどこでも仕事ができるというコンセプトの下、クラウドを全面的に採用しました。