天才、藤井聡太2冠のAIの使い方 (2) XAIで「メカニズムとして理解する」

2020年9月3日 17:19

印刷

 XAI(説明できるAI)の必要性を理解するには、物事を「メカニズムとして理解する」必要がある。これが出来ないと「天才の働きと弊害」にも気付けない。「知識」を知っているだけでは気付けない。「物事の関係性」を理解しなければならないのだ。

【前回は】天才、藤井聡太2冠のAIの使い方(1) 「AIの結論を自分なりに考えて解釈していく」

 「権威」や「ブランド」で知識を本物と覚えてしまっているのが人間の性とも言える。「メカニズムとして理解」できていないのだ。

 藤井聡太2冠のような「天才」と言える人々が世界の科学技術の進歩に大きく貢献しているのだが、その一方で、「天才」は違う分野では素人であり、その人の理解の及ばないところで専門家と称し、その権威で影響力を持つことは人類にとって悲劇だ。実は、藤井2冠の天才ぶりは人間社会の歪みをあらわにしているのだが、気付けない国民が大多数だ。

 日本社会はこうした背景を背負い、GDPの回復が遅れ、中国など経済活動を先行させている国に遅れ、経済覇権の力学によって、いずれ(10~30年後)自ら支配される立場になっていくのであろう。古くはローマ帝国の繁栄と衰退、現代ではこれまでのアメリカ経済、政治に従っているのと同じだ。その世界覇権の変化が、新型コロナウイルス感染拡大の対策の違いで急速に起きている。

 XAI(説明できるAI)の必要性が叫ばれるようになってきたが、これはAIを使っていく人類にとって重要なことである。藤井2冠が「AIが出した結論を、自分なりに考えて解釈していく」ことで成長しているように、「AIの結論」を自分自身の基準で評価せずに「権威ある知識として覚える」ことは間違いだ。「なぜ?その結論になるのか?」を『メカニズムとして理解する』ことが重要だ。

 『メカニズムとして理解する』ことに価値観がないのが、現在の日本の教育でもある。そのため、社会のエリートと言われる人々が、現実に起きている事態に対して正しい判断が出来ないことが起きてしまう。つまり、クイズの答えのような「覚えた知識の塊」ではなく、物事を『メカニズムとして理解する』ことを教育現場で教え、訓練する必要がある。

 そして、入学試験の内容についても、「真のエリート」を選ぶことが出来るよう、クイズ問題のような「知識偏重の試験」から、『メカニズムで理解する』試験問題に改善することが必須だ。「AIを使って理解度を評価できる採点方法」を研究開発してでも、成し遂げなければならない。これがAIの使い方としては「王道」と言えるだろう。

 すると、社会のエリートと言われる人々の言動が変化し、行政組織などの運営が劇的に変化すると思われる。「法律」においても、「社会システム」として「社会正義」の視点から法律の変化が必要であることが理解され、迅速に「人類正義」の方向に改正が進むはずだ。

 つまり、「法律が先にあるのではなく」、「人間社会の正義が基準となる」ことが理解できるようになるのだ。知識偏重の人々にとって「法律」そのものが目的でとどまってしまうが、『メカニズムで理解する』人々にとって「社会正義」を実現するのが目的で、「法律」はその手段の1つであるにすぎないことが理解できている。それが完璧でない法律をさらに「カイゼン」して「社会正義」を実現していく力となるのだ。

 藤井2冠の姿は、我々人類の本質を体現していると理解することが出来る。AIもまだまだ未完成で、当面はXAIの開発普及に望みを持つべきなのだろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事