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 「直近の5年間、建設業の業績は好調だった。だが、新型コロナウイルス感染の影響がこれから出てくると懸念する企業は少なくない。コロナ禍でも安心して企業が成長していくための選択肢になればと強く思う」。ランドデータバンクの徳永順二社長CEO(最高経営責任者)は、2020年9月1日に提供を開始した建築資材・機材の「立替・決済サービス」についてこう話す。

 ランドデータバンクは官民ファンドのINCJ、コマツ、三井住友銀行、三井住友ファイナンス&リース、三井住友カードの5社が出資し、2019年7月に設立した金融サービス会社。主に中小の建設事業者に対し、デジタル技術を活用した金融関連サービスの提供を狙う。

建設事業者の「キャッシュアウト先行」を回避

 ランドデータバンクが提供する第1弾が立替・決済サービスだ。建設事業者が資材会社などから工事に使う資機材を購入した際に、ランドデータバンクが代金を立て替えて資材会社に支払う。立て替え金額は1工事当たり500万円から1億円まで。

 工事完了後に建設事業者が工事代金の入金を受けた時点で、ランドデータバンクが立て替え分に手数料を加えた金額を事業者の口座から引き落とす。立て替え期間は最大10カ月としている。

立替・決済サービスの概要
立替・決済サービスの概要
(出所:ランドデータバンクの資料を基に日経FinTech作成)
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 「このサービスは建設事業者、資材会社の双方にメリットをもたらす」と徳永社長は強調する。

 建設事業者にとっては資金繰りの心配を減らす効果が期待できる。通常は資機材を前払いで購入する必要があり、工事代金が入金されるまでの期間は「キャッシュアウト先行」になってしまう。立替・決済サービスを使えば前払いする必要がなくなり、「受注が突然増える、入金のタイミングが変わるといった事態が生じても、心配なく事業を続けられる」(徳永社長)。申し込みから実際の立て替えまでWebで完結し、独自開発した与信アルゴリズムを使うので審査のために財務諸表や担保・債務保証などを提出する必要はない。

 資材会社にとってもメリットが見込める。最短2週間と通常よりも早く代金を回収できるほか、ランドデータバンクが建設事業者に対する与信審査を実施するので、自ら与信を手掛ける必要がないからだ。

 ランドデータバンクはサービスを利用する建設事業者、資材会社の双方から手数料を得る。料率は立替期間や金額にかかわらず、共に1.0%にした。徳永社長は「サービスを多くの企業に使ってほしいので、戦略的に低く設定した」と説明する。この手数料率は2021年3月末まで有効で、その後は状況に応じて半年または1年ごとに見直す方針だ。初年度は「まず数十社の上のほう。できれば100社以上」(徳永社長)の利用企業獲得を目指す。

ランドデータバンクの徳永順二社長CEO(最高経営責任者)
ランドデータバンクの徳永順二社長CEO(最高経営責任者)
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