米差別抗議デモ 左派・右派の衝突先鋭化

 トランプ米大統領の支持者=29日、オレゴン州ポートランド(AP)
 トランプ米大統領の支持者=29日、オレゴン州ポートランド(AP)

 【ニューヨーク=上塚真由】米国で黒人差別に対する抗議デモが再び拡大する中、抗議デモ隊に紛れる過激な左派勢力と、警察を支持する右派集団の衝突が激しさを増している。トランプ米大統領は1日、衝突が起きた中西部ウィスコンシン州ケノーシャを訪れる予定だが、地元では対立を悪化させるとして「訪問は不必要」(バーンズ副知事)と懸念が広がっている。

 デモ再拡大のきっかけとなったのは、ケノーシャで8月23日、黒人男性のジェーコブ・ブレークさんが背後から警官に複数回撃たれ半身まひとなった事件だ。ケノーシャでは事件後、放火や略奪行為などが頻発。これに対抗するため、武装してパトロールする自警団や民兵団が集まった。

 25日夜には、民兵として現場にいた中西部イリノイ州の17歳の白人少年がデモ隊に向けて発砲し、2人が死亡した。警察を支持する運動に共鳴する少年は殺人容疑で訴追された。弁護側は「自衛のために撃った」と主張している。

 発砲事件が起きるまでは、武装した民兵らに地元警察が飲料水を提供する姿などが確認された。デモ隊は「黒人が武装していたら警官に射殺されているはずで不公平だ」と警察への不信感を一層強めている。

 西部オレゴン州ポートランドでは29日夜、トランプ氏を支持するグループと警察に反発する左派勢力が衝突。極右グループ関係者とされる男性1人が胸を撃たれ死亡する事件が起きた。

 地元メディアによると、当局が事件に関与した疑いで捜査しているのは元軍人の白人の男で、ソーシャルメディアで自らを極左過激勢力「アンティーファ(ANTIFA)」の支持者と紹介、6月末から抗議デモに伴う暴動に参加していたとされる。米国で最もリベラルな都市の一つであるポートランドでは、抗議デモが90日以上続いている。

 ウィラー市長(民主党)は8月31日、「報復のためにポートランドに行くつもりだとツイッターで発信している皆さん、来ないでほしい」とさらなる衝突を警戒。「分断や暴力をあおっている」とトランプ氏を批判するが、対応が不十分だとして市長の辞任を求める声も上がっている。

会員限定記事会員サービス詳細