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 携帯電話大手3社の2020年4~6月期連結決算が出そろい、NTTドコモとKDDIは減収増益、ソフトバンクは増収増益だった。新型コロナウイルスの感染拡大で携帯電話端末の販売数は減ったが、販売店に支払う手数料も減少。テレワークをはじめとした法人需要の拡大も増益に貢献した。他業界に比べて安定ぶりが際立った。

 各社の決算説明会で興味深かったのが、2020年3月に商用サービスが始まった5Gの進捗状況に対する捉え方の違いだ。各社とも基地局の展開は順調とするが、提供エリアはまだごく一部に限られる。当然、契約者の5Gへの移行はそれほど進んでいない。5Gの契約数を開示しているドコモで24万件(2020年8月1日時点)の水準だ。

 ドコモはこの水準について「計画を上回っている。2021年3月末に250万件という目標に向かって取り組んでおり、(下半期に投入する)普及モデルが出てきたら本格的に広がるだろう」(吉沢和弘社長)との期待を示した。

 一方、KDDI(au)は「5Gへの移行が進んでいない。焦りを感じている」(高橋誠社長)と危機感をにじませた。「5Gの進捗は数字として出せないが、2020年3月と4月に予定していたイベントが中止となり出ばなをくじかれた。(2021年3月末に5Gの契約数を)二百数十万件まで持ち上げたく、2020年秋に再出発と考えている」とした。

 かたや、ソフトバンクは「スマホ累計契約数で2023年度に3000万件(2019年度実績は2413万件)を目指す」(宮内謙社長兼CEO)としたうえで、3000万件のうち6割は5Gスマホになるとの見通しを示した。さらに「2020年秋後半から2021年にかけて『5G祭り』が始まる」とまで宣言した。

 ここまでの説明を読むと、KDDIだけが不調のように感じるかもしれないが、恐らくそれほど大差はない。確かにドコモは順調に見えるものの、まだスタートしたばかりで決定的な差がついているわけではない。ソフトバンクは今回、決算と同時に成長戦略の詳細を説明したこともあり、必然的に威勢の良い話になる。