深層リポート

川崎市がパートナーシップ制度導入 多様性「正面から受け止める」

受領証を手に喜びを語る川崎市のパートナーシップ宣誓者第1号の2人=7月1日、川崎市(浅上あゆみ撮影)
受領証を手に喜びを語る川崎市のパートナーシップ宣誓者第1号の2人=7月1日、川崎市(浅上あゆみ撮影)

 川崎市は先月、性的少数者(LGBT)が抱える生きづらさを解消する目的で、当事者自身がお互いをパートナーであると宣誓し、市が宣誓の事実を公的に認める「川崎市パートナーシップ宣誓制度」の運用を開始した。全国ではこれまでに50を超える自治体が同様の制度を導入しており、その取り組みは急速に広まっている。日本の伝統文化に反するとする声も根強いが、多様性を受け入れる社会の実現に向けた一歩として、向けられる期待も大きい。

法的効力はないが…

 「2人で歩んできた中で、思い出に残る一日になった」。川崎市で宣誓者第1号となったのは、同市川崎区内で同居するいずれも会社員の30代と20代の男性カップル。2人は勤め先で知り合い、平成29年から共同生活を開始。会社には社内制度を利用してパートナーの届け出を提出し、同時期に今後の財産管理などに関しても公正証書を作成し、細かく取り決めを行った。生活していく上での問題点はクリアしているが、それでも2人は、市が公的に自分たちを認めることを「心待ちにしていた」と明かした。

 実はこの制度では、結婚のように相続権や税金の控除など、法律上の権利や義務は発生しない。それにもかかわらず、市はなぜこの制度を導入したのか。市人権・男女共同参画室の担当者は「パートナーとしてともに生活したいカップルの気持ちを、行政が正面から受け止めることに意義がある」と説明。制度の導入を契機に「パートナーシップが尊重される取り組みが広がっていくことを期待している」と続けた。

市営住宅へ入居OK

 同市では、市職員の立ち合いのもとで2人が宣誓書や同意書に署名することを宣誓とみなす。カップルは市内在住の成年などが条件で、戸籍上の性別は問わない。宣誓はプライバシー保護のため個室で行い、市が認証したことを示す受領証や受領証カードが交付される。

 パートナーとして認められたカップルが、市から受けることができるサービスの一つが、市営住宅への入居条件の緩和だ。これまで単身者向けの部屋を除く市営住宅への入居は、生活する者同士が親族(事実婚を含む)である必要があったが、今後は受領証を得たカップルも認められることになった。こうした動きは一般企業にも広がっている。

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