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Amazon、Walmartと中小が激突 ラスト数マイル物流

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CBINSIGHTS
新型コロナウイルスのまん延で利用が急増しているのがネット通販だ。米国では日常の食料品にも広がったその需要を取り込もうと、米ウォルマートや米アマゾン・ドット・コムなど大手を含む小売り・ネット通販各社が配送時間の迅速化を競っている。激戦の舞台となっているのが、都市部に設ける小型受注配送センターだ。顧客へ届ける「ラストワンマイル」の配達業務を含めたラスト数マイルの物流競争になっている。

受注配送システムは小売りが顧客をつなぎとめるための主戦場になっている。米国ではほんの数年前まで、オンラインで注文した商品が2日で出荷されれば上出来だとされていたが、今やこれは普通になった。米アマゾン・ドット・コムや米ウォルマートなどが配送インフラに積極投資したことでオンライン注文の配達日数は急速に縮まり、2~3日から一部ではわずか数時間となっている。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

アマゾンは世界各地で175カ所以上の受注配送センター(フルフィルメントセンター)を運営するなど、物流インフラの構築に数十億ドルを費やし、さらに米ケンタッキー州に15億ドルを投じて空港貨物の拠点を建設している。一方、ウォルマートは全米5000店以上の店舗網を活用し、オンライン注文をより迅速に配達している。

こうした大手が築き上げた強力な物流インフラに対抗するため、中小業者は「マイクロフルフィルメント(小型の受注配送システム)」に目を向けている。マイクロフルフィルメントとは、オンライン注文の受注から梱包までの配送プロセスを効率化するために小売りが活用する戦略で、場合によっては「ラストワンマイル」(1マイルは約1.6キロメートル)と呼ぶ顧客への配達も含む。近くの店で商品を受け取るスピード感に、自動化した大型倉庫による効率性を融合するのが目的だ。

都市部にそうしたマイクロフルフィルメントセンター(MFC=小型の受注配送センター)を設ければ、顧客の近くで注文品の配送準備を整えることができ、ラストワンマイルの配達がより安く速やかにできるようになる。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で人々は引き続き自宅にこもり、公共の場への外出を控えているため、オンラインショッピング、特に食料品の購入が増えている。

マイクロフルフィルメントの開発を手掛けるファブリックの2020年4月のリポートによると、食料品の売り上げ全体に占めるオンライン購入の割合は従来の予想よりも4年早い20年末には10%に達する可能性がある。新型コロナの感染拡大直前はわずか5%だった。

小売り各社はこの動きについていくため、速やかな配達形態や注文品の配送準備を効率化する方法を編み出そうと躍起になっている。

各国の都市封鎖(ロックダウン)で世界のサプライチェーン(供給網)が圧力を受け、小売業者はその耐性を高めるために新興のサプライチェーンシステム企業への投資を活発化している。マイクロフルフィルメントはこうした面でも貢献する可能性がある。

今回のリポートでは、マイクロフルフィルメントとは何か、小売り各社がなぜこの戦略に殺到しているのか、そしてどんな未来が待っているのかについて分析する。

マイクロフルフィルメントとは何か?

マイクロフルフィルメントとは、最終顧客の近くにある高度に自動化した小型保管施設を活用し、商品を配達するコストと時間を減らすことを意味する。

MFCは2つの構成要素に大きく分けることができる。オンライン注文を処理する管理システムと、倉庫の通路で商品を取り出して梱包スタッフとの間を行き来するロボットなど物理的なインフラだ。

このサービスには顧客への商品の宅配を含む場合もある。例えば、米ニューヨークに拠点を置くスタートアップ、ボンド(Bond)は消費者に直接商品を販売するD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)ブランドにスペースを提供しているほか、宅配も手掛けている。

MFCの面積は通常3000~1万平方フィート(約278~929平方メートル)で、小売店の中に設ける場合もあれば、独立型施設として複数の小売店にサービスを提供する場合もある。小さくまとまった設計で既存のスーパーの裏手やガレージ、駐車場、地下室などに設置でき、スペース、ひいてはコストを節約できる。

MFCは30万平方フィートもある従来の配送センターに比べればかなり小さい。従来の配送センターは巨大で郊外にある場合が多く、そこから消費者に注文品を届けるコストが高く、時間もかかる。大きなスペースを占め、賃料や運営費もかさみがちだ。

一方、MFCは小さいので都市部の利便性の高い場所に設置することができ、多くの人に速やかにサービスを提供できる。世界で都市部の人口が増えており、この点は特に重要だ。国連の18年のリポートによると、都市部の人口は18年には世界全体の半分強だったが、50年には3分の2を占めるようになる。

MFCは配送拠点の小型化を望む小売りにとって、魅力的な解決策として浮上している。例えば、米ディスカウントストア大手のターゲットは店舗をMFCのハブとして活用。ネットで注文した商品を店頭で受け取る「クリック・アンド・コレクト」や、車に乗ったまま店の脇で受け取る「カーブサイド・デリバリー」、当日配達など複数の購入方法を提供している。

MFCは小規模である上に、効率的に運用する技術を備えていることも多い。大抵はロボットを使って倉庫から商品を運び、人間の労働者が注文品を梱包する。様々な商品の配置やセンターでの商品の動きを最適化するために、人工知能(AI)ソフトを使う場合もある。

具体的なメリットは以下の通りだ。

間接費を削減できる:米証券ジェフリーズの分析によると、マイクロフルフィルメントは人間が注文品をピックアップする場合に比べ、注文に伴うコストを推定75%削減できる。

より機敏に対応できる:MFCはわずか数百万ドルの費用で2~3カ月もあれば設置できる。

ラストワンマイルの配達を迅速化できる:MFCは都心部にあり、郊外にあることが多い従来の倉庫よりも速やかに注文品を配達できる。

どんな企業が飛びついているのか?

多くの大手小売りが既存店の裏にMFCを設置し始めている。例えば、米国で最大の食品小売業者であるウォルマートは19年、ニューハンプシャー州セイラムの店舗に設けた。この分野のスタートアップである米アラート・イノベーション(Alert Innovation)と提携し、導入している。

ウォルマートのために開発した自動化システム「Alphabot(アルファボット)」は人間が従来の倉庫で収集できる10倍の速さで商品をピックアップできる。このMFCには冷凍食品や加工食品など、ウォルマートのネットスーパーで人気の高い商品がそろっている。同社は年内にオクラホマ州、カリフォルニア州、アーカンソー州のさらに3店舗でアルファボットを導入する計画だ。

他の大手小売りも業務自動化を支援する外部企業のサービスを活用している。例えば、米国とイスラエルを拠点とするスタートアップ、ファブリック(Fabric)はある食品スーパー(企業名は非公表)による米国での1万平方フィートのMFC設置を支援している。

ファブリックは18年にイスラエルのドラッグストア最大手スーパーファームのMFC設置を手掛けた際、自社のマイクロフルフィルメント技術を試験運用した。その後は事業を米食品スーパー向けに転換し、自社のロボット技術を採用すれば食料品を1時間以内に配送できるとうたっている。

同業のスタートアップ、米テークオフ・テクノロジーズ(Takeoff Technologies)はアホールド・デレーズ(オランダ)や米アルバートソンズ、米ウェイクファーン・フードといった食品スーパーのMFC導入を支援している。テークオフは在庫管理からオンライン注文に至るまで総合的なMFC運営テクノロジーを提供している。18年にはフロリダ州を地盤とする食品スーパーのセダノに対し、テークオフにとって米国第1陣となるMFCを提供した。

MFC技術は食品スーパーや総合スーパー専用というわけではない。

米百貨店大手のノードストロームは美容商品のオンライン注文を配送し、近隣店の在庫を補充するために、カリフォルニア州ニューアークにMFCを導入する計画だ。マイクロフルフィルメント企業向けの荷物仕分けロボットを手掛ける米トンプキンス・ロボティクス、カナダのマイクロフルフィルメント企業、アタボティクス(Attabotics)とMFC設置で提携している。

電子商取引(EC)の巨人、アマゾンも乗り出している。物流ロボット大手の米デマティックと提携し、新しいコンセプトの食品スーパーの中にロボットが運用するフルフィルメントエリアを設けた。例えば、カリフォルニア州に建設中の店舗では、MFCは7200平方フィートで、店舗総面積の約5分の1を占める。

アマゾンは独自のMFCも構築しており、現在はフィラデルフィアやフェニックス、ダラスなど米5都市で稼働している。これらのセンターでは、300万品近くの商品を注文当日に配送することを目指している。

アマゾンはMFCを展開することで、迅速な配達を保証するコストをいくらか削減するのに役立つだろう。実際、同社はプライム会員に当日配送を提供し始めたのが響き、19年7~9月期の配送コストは前年同期比46%増えた。

どのように小売業務を効率化できるのか?

既存の小売り各社はコロナ禍で一時解雇(レイオフ)、閉店の加速、需要の減退という未曽有の試練に見舞われ、顧客をつなぎとめる戦略の見直しを迫られている。生き残るにはオンラインでの存在感を高め、低コストで迅速に配達し、幅広い商品をそろえることがこれまで以上に重要になっている。

MFCを導入することで、オンライン購入で生まれる関連データを保存し、低コストで保管スペースを広げることができるため、こうした試練に対処しやすくなる。

地域に密着したデータと在庫:注文をより深く分析し、必要な商品をそろえる

MFCは極めてコンパクトで、これまで使われていなかったスペースを有効活用するため、小売り各社は従来の倉庫や店舗よりも効率よく商品をそろえることができる。

例えば、テークオフ・テクノロジーズのMFCは最大1万5000種類の商品を保管できる。顧客の近くに位置しつつも広範な商品が1カ所でそろうため、地域の注文をもっと多く配送できるようになる。週4000件の注文処理能力を持つMFCもある。

デロイトのリポートによると、品切れによる小売業界の損失は年間1440億ドルに上る。MFCは需要の高い商品の在庫切れを防ぎ、損失を減らす予測テクノロジーを展開するのに適している。

MFCは店舗の裏手や都心部といった便利な場所にあるため、スーパーや小売店は地域で保管できる商品が増え、近隣からの注文をより速やかに配送できるようになる。過去の注文のサイズやブランドの好みなど、顧客に関する地域特有のデータも収集できる。

このデータを使って注文を予測することも可能だ。このため、MFCがある地域ではサービスが向上する。

例えば、ロックダウン真っただ中だった20年4月上旬の米国の食料品の売り上げに基づくデータでは、顧客は食料品の購入に重点を置き、それ以外の商品の購入は見送っていたことを示している。さらに、ペットや美容、健康部門の売り上げも減少する一方、紙製品や家庭向けの掃除製品は増えたことも明らかになった。こうしたデータを活用すれば、各社は需要の高い商品の在庫を増やし、倉庫に適宜配分できるようになる。

MFCは他社の近隣店の在庫機能を担うこともできる。例えば、ニュージャージー州クリフトンにあるテークオフ初の独立型MFCは、地域で営業するインセラ・スーパーマーケッツとショップライトの10店舗にサービスを提供している。ターゲットも同州パースアンボイにある店舗で在庫を補充するのに、この方法を使っている。

ラストワンマイルの配達:配達を迅速化し、コストも削減

MFCの最も魅力的なメリットの一つは、ラストワンマイルの配達効率とコスト効果を高められる点だ。ラストワンマイルの配達とは、注文品を倉庫から顧客の手元に届けることを指す。

米マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、17年に世界の企業がラストワンマイルの配達に費やした費用は860億ドル以上にのぼった。こうした費用は商品の輸送費全体の約28%を占めるが、マイクロフルフィルメントを導入することで削減できる。

MFCは顧客の近くで注文の配送準備を整えられ、時には数時間以内などより迅速な配達が可能になる。配達の速さとコストは顧客をつなぎとめ、ブランドへの愛着を育む上でこれまで以上に重要になっている。ファブリックによると、オンラインで食品を購入した消費者のうち、92%が当日配送を望んでおり、65%が当日配送や車に乗ったまま商品を受け取る「カーブサイド・ピックアップ」のないスーパーからの切り替えを検討している。

多くのMFCはAIを活用してオンライン注文を配送態勢が最も整っている店舗に回す。仕分けから梱包、ラストワンマイルの配達に至るまでの様々な段階を自動化することで、配送プロセスを大幅に迅速化し、コストを削減できる。

MFCを使うと注文品の配送に至るまでのルートも変わるため、時間を節約できる。店舗から配送する場合には、まず商品を店の倉庫からピックアップし、店の棚に保管する。これを取り出してバックルームに運び、配送する。

一方、MFCでは商品を店のバックルームに直接運んで配送するため、その工程は簡素化される。店のバックルームがMFCである場合には、さらに簡素化できる。人の手をほとんど使わないラストワンマイルの配達システムを構築するために、一部の小売りは配送網の自動化を推進するテクノロジーを手掛ける企業とも提携している。

マイクロフルフィルメントの未来

マイクロフルフィルメント技術はラストワンマイルの自動配達や小型の無人店舗など、他の自動化や配送テクノロジーと共に発達している。

店の賃料は上がり、客足は減り続けており、米百貨店大手コールズやターゲット、スウェーデンの家具最大手イケアなどの大手小売りによる小型店舗の展開は今後も続くだろう。MFCはこうした都市部の小型店舗に併設する公算が大きい。さらに、アマゾンが全米各地で手掛けているように、レジなし店に設置される可能性もある。そうなれば、ショッピングの自動化は一段と進むだろう。

もっとも、自動配達は一般的になりつつあるとはいえ、まだ新しい分野だ。マイクロフルフィルメント技術と自動配達を組み合わせることで、小売りはコストを極端に削減し、顧客の利便性を高められる可能性がある。

この2つを融合した姿を実際に示している企業が、米スタートアップのボックスボット(Boxbot)だ。同社は19年6月、MFCとラストワンマイルの自動配達車を活用した完全自動配達システムを開始する計画を発表した。MFCでは自動で荷物を仕分け、ボットボックスの車に積み込む。そして、自動運転車が荷物を顧客の家に届ける。

マイクロフルフィルメント技術はさらに多くの既存店に組み込まれる可能性がある。そうなれば、独立型MFCの必要性は減るだろう。店舗内MFCは一部の食品スーパーで実証実験しており、日持ちする商品は店内のセンターの自動保管システムに、農産品やデリ、総菜などの生鮮品はセンターの端にある買い物客が利用できる場所に置かれる。消費者は注文した商品のうち、生鮮食品は自分でピックアップするが、日持ちする商品は保管システムから自動的に取り出される。

マイクロフルフィルメントは一部の中小業者にとっては法外といえるほどの費用がかかる。だが、注文から1時間以内の配達を求める消費者が増えており、こうしたトレンドに乗り遅れないようこのテクノロジーに目を向ける小売りが増えるだろう。

マイクロフルフィルメントの効率と費用対効果は向上しており、衣料品や消費財、ヘルスケアなど急成長しつつある他のネット通販にも導入される可能性が高い。パンデミックにおける食品スーパーのMFCの機敏さと強さを目の当たりにして、他の分野の小売りも採用したいと考えるようになるだろう。

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