福島第1の処理水処分「理解進んでいない」 地元で意見聴取
経済産業省は17日、東京電力福島第1原子力発電所にたまる処理水の処分に関する5回目の意見聴取会を福島市で開いた。福島県議会の太田光秋議長は「現時点で県民、国民の理解が十分に得られているとは言えない」と述べ、国に慎重な対応を求めた。
太田議長は県内の市町村議会で処理水の放出に反対する意見書などが相次いでいることや漁業関係者を中心に風評被害への懸念が根強いことを指摘した。幅広い関係者の意見を丁寧に聞いて、慎重に検討するよう求めた。
意見聴取会には福島県青果市場連合会、福島県水産市場連合会のほか、県が設置した廃炉に関する住民会議のメンバーも参加した。住民会議のメンバーからは海洋放出に明確に反対する声も出た。
処理水を巡っては2月に経産省が設置した有識者小委員会が、国内で実績がある海洋放出が「より確実に処分できる」との報告書をまとめた。経産省は処分方法の決定に向けて4月に関係者の意見聴取を始めた。今後、さらに漁業、農業の全国団体などから意見を聴取する予定だが、その後どのような手続きで処分方法を決めるかは未定だ。
2011年に炉心溶融事故を起こした福島第1原発では、高濃度の放射性物質に汚染された水が発生し続けている。東電は専用装置で主要な放射性物質を取り除いた処理水として敷地内のタンクにため続けている。約1000基のタンクに約121万トン(6月25日時点)たまっている。
東電は20年中に計137万トン分のタンクを確保するものの、22年夏ごろに満杯になるとしている。処分を決めても、準備に2年かかるとされており、20年夏にも処分方針を決めるとみられてきた。