ESGファンドに向かう英個人資金(海外投信事情)
英国の投資信託市場で個人投資家の資金がESG(環境・社会・企業統治)関連ファンドに向かっている。新型コロナウイルスの感染拡大などをきっかけに金融市場が大混乱となった1~3月期に株式ファンドが大幅な売り越しとなるなか、ESG関連ファンドには資金が流入し、個人マネーの受け皿となった。
■英ESGファンド、過去最高の資金流入超に
英国投資協会(IA)によると、株式で運用するファンドは3月まで2カ月連続の資金流出超となり、1~3月期の流出超過額は12億6300万ポンド(約1670億円)に達した。一方、ESG課題に積極的に取り組む企業に投資する「責任投資ファンド」は同13億9700万ポンド(約1850億円)の資金流入超と、株式ファンド全体の売越額を吸収する買越額を記録した。買越額は2019年10~12月期の12億7400万ポンドを上回り、四半期ベースで過去最高となった。
■ESGスコア上位銘柄の一角に底堅さ
英国の代表的な株価指数であるFTSE100種総合株価指数は1~3月期に25%下落した。同期間の指数構成銘柄も軒並み下落したが、ドイツのESG評価会社アラベスクS-Rayが算出したESGスコアで評価が高い上位銘柄の製薬大手アストラゼネカや特殊化学大手クローダー、製紙大手モンディなどは株価指数に比べて下落率が小さく、底堅さを示した。これらの銘柄は4月以降の相場反発局面でも堅調に推移している。
■コロナ禍で評価高まる?
英金融サービス会社カラストーンが投資家向けのオンラインセミナーで実施した調査では、ファンドの先行きについて、7割超の参加者が「ESG(を考慮すること)が全ての基準になる」との見方を示した。カラストーンは「機敏な経営管理体制や堅固なガバナンス構造を備えた企業こそが、コロナ禍における予測不能で前例のない市場環境をうまく乗り切れることを示すだろう」と指摘する。
今や個人も機関投資家も注目するESG投資。「アフターコロナ」ではESG課題に積極的に取り組み、評価を受ける企業が投資対象として選好される流れが一段と加速するかもしれない。
(QUICKリサーチ本部 荒木朋)