中東がラマダン明け、行楽期突入 コロナ状況悪化で引き締め策

23日、モロッコ・カサブランカで、マスクを着用して洋菓子店の前に並ぶ人々(AP)
23日、モロッコ・カサブランカで、マスクを着用して洋菓子店の前に並ぶ人々(AP)

 【カイロ=佐藤貴生】イスラム教のラマダン(断食月)が終わり行楽期に入った中東の主要国は、新型コロナウイルスの感染抑止策を強化している。多くの国がラマダン前に外出制限などを一部緩和し、感染者や死者が増えた。欧州などで制限緩和の動きがみられるなか、各国は厳しい対策を取って国民の気の緩みを引き締めている。

 中東の多くの国では、今年のラマダンは4月24日から5月23日頃まで。その後の数日間は断食明けの祝祭(イード)で休日となる。ラマダンの間は日の出から日没まで飲食が禁じられるため、普段の年ならその後は旅行や里帰りで羽を伸ばす人が多い。

 人口が1億人以上と中東で最も多いエジプトでは22日、1日当たりの新たな感染者数が783人と過去最多を記録。イードの間は夜の外出制限開始を4時間前倒しして午後5時からとするほか、食堂や娯楽施設、公園なども閉鎖される。

 しかし、厳格な措置が感染防止につながるかを疑問視する人もいる。首都カイロ在住の主婦(46)は「ラマダン期間中、外出禁止のはずなのに深夜まで渋滞している通りもあった。イードで両親や親類宅への訪問も頻繁になる。感染は拡大するのでは」と話す。

 トルコとイランではラマダン中、それぞれ1700人以上が死亡した。どちらも人口8千万人以上の地域大国だ。トルコのエルドアン大統領はイードの間、全土でロックダウン(都市封鎖)を行うとし、イランも旅行を控えるよう呼び掛けた。

 イランでは総勢約1万人の医療関係者が感染したとされる。初期の対応の遅れに加えて医療崩壊の疑いも指摘され、医療従事者の防護対策も不十分な状態が続いたとみられる。

 また、ペルシャ湾岸諸国ではラマダン期間中、カタールで感染者数が5倍以上に増えるなど状況が深刻化、外国人出稼ぎ労働者の宿舎での感染拡大も問題になった。中東のメディアによると、サウジアラビアはイード期間中、ほぼ全域で24時間、外出を禁止。アラブ首長国連邦(UAE)は夜間外出制限の開始時刻を前倒しし、マスク未着用など規則に違反した者の罰金の額を上げる方針を示した。

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