19日時点の感染状況。直近1週間の新規陽性者数は14日連続で増加

 新型コロナウイルスの感染が各地で急拡大している。徳島県内では連日30人以上の感染者が確認され、4月の新規感染者数は393人。累計感染者は939人、死者は26人に上っている(19日時点)。病床232床のうちすでに154床が埋まっており、感染抑止が急がれる。急拡大の要因の一つとして挙げられるのが、大阪や兵庫を中心に流行し、県内でも主流に置き換わりつつある「変異株」だ。従来の新型コロナウイルスより感染力が強いとされるが、実際どういったものなのか。県新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の西岡安彦座長=徳島大学病院呼吸器・膠原病内科長=に聞いた。

県専門家会議の西岡座長

Q.そもそも変異株とは何なのでしょう

「遺伝子変異によるもの」
A.変異株はイギリス型、ブラジル型、南アフリカ型の3種類があり、いずれも遺伝子に変異が起きてできたものです。ウイルスが増殖・分裂する時にミスが生じ、同じようにコピーできずに遺伝子の配列が変わって変異します。イギリス型は「N501Y」と呼ばれ、ウイルスにあるたんぱく質の501番目のアミノ酸が「N=アスパラギン」から「Y=チロシン」に変わったことを意味しています。アミノ酸が変わるとウイルスの形が変わり、たんぱく質の機能が変わった結果、感染力が強くなったようです。

Q.従来のコロナウイルスより感染しやすいのですか

「1.5~1.7倍感染しやすい」
A. ウイルスが体内に侵入して細胞にくっつく際に「レセプター(細胞外からの刺激を受け取る受容体)にくっつきやすい」という研究結果がたくさん出ています。「くっつきやすい」ということは「感染しやすい」ということです。4月6日時点の国の資料には「モデリング上伝播性が5~7割増加の推定結果がある」とあります。これは、1.5~1.7倍感染しやすいということです。

変異株は分裂過程で遺伝子変異したウイルス

Q.変異株は通常のPCR検査でも検出されるのですか

「変異株用のPCR検査で検出し、ゲノム解析で確定診断」
A.これまでは変異株かどうか分かりませんでしたが、今は変異型を検出するPCR検査があり、徳島でもスクリーニングレベルでは検査できます。確定診断はゲノム解析で遺伝子配列を読んで行います。PCR検査の精度が高いので、ほぼ当たります。

Q.徳島で変異株が流行っている理由はあるのでしょうか

「全国的にほぼ変異株になる」
A.徳島に限ったことではなく、あと1カ月もすれば全国的にほぼ変異株になると考えてもいい。変異株の方が感染力が強く広がりが早いので、自然の流れです。

Q.変異株にもワクチンは効果があるのでしょうか

「変異株の影響はまだ分からないが、効果はある」
A.効果はあります。ワクチンは体内で抗体を作らせて、ウイルスが入ってきたときに迅速にやっつけるために打っています。できた抗体でウイルスの活性を抑える作用(中和能)がどのくらいあるのかは実験で見ることができ、実験では変異株の場合は中和能が何割か低下するということは言われています。ただ、正確に発症抑制効果が何割下がるかまでは分かっていません。従来のコロナウイルスに対するワクチンの効果ですら、ファイザー製だったら95%、モデルナ製だったら94%などとデータが出てきたばかりです。ワクチンを接種した人の感染率に変異株がどれぐらい影響するかは、実際のデータが出ないとまだ分かりません。

Q.変異株に感染すると、重症化しやすいのでしょうか

「重症化しやすい可能性がある」
A.データが十分ではないので断定はされていません。重症化しやすい可能性があるとしか言えません。はっきり分かっているのは、細胞にくっつきやすく、恐らく広がりやすいということです。広がれば重症者も自然と多くなる。変異株に感染した人が重症化するのか、広まったからたくさん重症者が出ているのか、分からないのが難しいところです。そこは慎重に判断しないといけないので、今は可能性があるとしか言えません。
 

Q.感染症対策はこれまでと同じで大丈夫なのでしょうか

「対策のレベルを上げないと感染拡大は止められない」
A.対策の方法は一緒です。ただ、感染力が増してることが分かっているので、対策のレベルも上げていかないと抑えられないでしょう。例えば、月に3回の外食を1回に減らすなど、一人一人が自分のやっている対策のレベルを上げていかないといけない。やることは一緒です。問題は本当に徹底できているかということ。1日でマスクをどのくらいの時間外しているか、手洗いを何回しているか、自分の行動を振り返ってみると、もっと徹底してできる余地があるのではないかと。皆さんそれなりに対策をしていると思うが、その中で急激に広まってきているのも事実。対策のレベルを上げないと、感染者が増えるのはとても止められません。一人一人が動きをセーブしないといけません。感染者がどんどん増えてきていますが、皆さんの先週と昨日今日の動きは変わっていないと思います。時短要請で外出は減るかもしれませんが、それだけでは追いつかないでしょう。

医療提供体制の負荷を表す指標 病床使用率は66%超

Q.病床使用率も急激に上がってきました

「感染者が毎日出て病床が埋まっていく」
A.感染者は毎日出ています。治るまで少なくとも1~2週間かかり、その間病床がどんどん埋まっていく。感染者を減らさないと、病床使用率は下がりません。減らすためにはどうすればいいかというと、やはり人と人との接触を減らす。それしかありません。

Q.このまま増え続けると、通常の診療にも影響が出てくるのでしょうか

「現場はかなり逼迫。一刻も早く感染者を減らす必要がある」
A.すでに影響は出ています。元々医療スタッフが多い地域ではない上にコロナ専従の医療スタッフがいないため、コロナ患者を診ること自体が負担になっています。そのため、通常の医療を減らしています。もう現場はかなり逼迫しています。防護服の着用や人の配置など負担が大きく、予定以上にコロナ患者を受け入れている病院もあります。増え方が急激なので、医療従事者はすごく不安に感じています。
 従来通りのことをしていたのでは感染が広まってしまうリスクがあり、このままでは防ぎ切れません。どこまで注意して行動できているか、もう一段高い注意を払わないと変異株を抑え込むことはできません。会議の席数を半分に減らしていたのを3分の1、4分の1に減らすなど、対策レベルを1段階、2段階上げていかないと安心できない。テレビや新聞を見ると、都会の人の出方が違いますよね。緊急事態宣言時のような緊張感が薄れているのは間違いありません。大阪も徳島もそう。緩んでいるのを引き締めるとともに、個人個人でさらに厳しい対策を行い、一刻も早く感染者を減らす必要があります。