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【3分解説】円安が止まらない3つの理由
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
理由をいくつかに分けることはできても、結局は経済のファンダメンタルズが根源だと思います。米国があれだけ利上げをしても経済が強くインフレ率もなかなか下がらないので利下げができないというのは「ファンダメンタルズの強さ」と言えます。同様に、「日本は『緩和的環境が続きます』と敢えて強調しないと実体経済や財政が耐えられない」と市場が見透かしているのであれば、それもファンダメンタルズの一要素です。為替の議論をするのであれば、表層的な交換比率の奥にあるファンダメンタルズの差をどう埋めていくのかという政策論に繋げていくことが大事だと思います。
為替介入を容認=過度の市場変動なら―IMF幹部
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
そもそもIMFは、個別国の為替介入の認否を決める機関ではありませんし、そうしたことに巻き込まれるこてをIMF自身避けたがっています。
また、「変動相場制採用国の為替介入はあくまで急激な変動への対処として行われるべきであり、特定の水準防衛を目的とすることは不適切である」というのはIMFの一貫した立場であり、これまでも言い続けてきています。
このように、一局長の質疑応答での、さらにIMFとしての公式見解を繰り返す発言が「介入容認云々」と切りとられて報道されること自体が、日本における為替(というか、日本の場合は特に円ドルレート)を巡る議論の特殊性を感じます。ここまで為替介入がニュースになりやすい国は、フロート制を採る先進国でちょっと他に見当たりません。
実質賃金、プラスは夏以降か=リーマン時に並ぶ23カ月連続減―2月調査
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
「実質賃金の『前年比』プラス云々」という論争は、あまりサイエンスとして意味があるようには感じられず、多分に「作られた論争」という印象を受けます。
・まず、賃金は典型的な遅行指標ですので、インフレの進行局面で賃金上昇率が物価上昇率を上回ることはもともと困難です。実質賃金上昇率がインフレ率を上回るのは、多くの国々で「インフレ鎮静化局面」です。(今次局面の米国も。)
・また、計算上の問題として、本来重要なのは「レベル」です。たとえば、物価が急に2倍に(例えば指数が100から200に)上がり、その後指数が横ばいであれば1年後に前年比はゼロになります。一方で賃金が年率3%ずつキャッチアップすれば、水準では全然追いつけない段階であっても「前年比」はインフレ率を超えます。
・実質賃金を問題にするのであれば単月の振れで超えた超えないを議論することの意味は乏しく、中期的、趨勢的にどうかが重要です。その決定要因は日本経済全体の生産性や構造改革であり、そのコンテクストで議論していくことが有益と感じます。
給与デジタル払い、開始見通せず=解禁1年弱、長引く業者審査
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
ビジネスの可能性を広げる規制改革は、基本的に良い事だと感じます。
その上で、海外においてノンバンクのデジタルペイメントサービス経由の給与支払が伸びているケースは、実際には(東欧からの移民や出稼ぎ労働者の方々など)銀行口座開設が難しい方々を主なターゲットとするものが目立ちます。一方日本では、人口の10倍近い預貯金口座が存在するなど、既に銀行サービスが広く浸透しているという環境の違いがあります。
したがって日本では、ノンバンクのデジタルペイメントサービスが、(単なる「顧客囲い込み」の手段を超えて)銀行口座を超える利便性とネットワーク外部性を提供できるかが問われるだろうと思います。
日銀政策は「正常化すべき時」、財政への忖度不要-吉川東大名誉教授
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
さすがは吉川先生、と感じました。
非伝統緩和、とりわけ長期金利への介入の副作用として、わかりやすい事象として市場機能や中銀財務の問題が挙げられることが多いですが、これらは(決して重要でないとは言いませんが)副次的な問題です。本質的に考えるべきは、財政規律への影響などを通じた資源配分への影響であり、不確実性に対処する手段としてのマクロ政策の柔軟性への影響です。このような、短期的には見えにくいが本質的な問題をズバリと指摘しておられることに感服しました。
また、「賃金と物価の好循環」という掛け声に対する冷静な見方も、さすがと思いました。
人口7割のドイツにGDPで抜かれた日本「世界4位で騒ぎ過ぎ」と語る人たちが分かっていないこと
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
拝読致しました。実体験に照らしても、共感する所が多くございました。
・本当に円安は一時的と考える市場参加者が多数であれば、為替レートは直ちに円高方向の力が働く筈です。理論的に詰めて考えるほど、現在市場で形成されている為替レートを前提に考えざるを得ません。
・実際、IMFの各国の議決権を定める「クォータ」の計算式でも、(一部PPPも配慮はされてはいますが)基本的には市場為替レートに基づくGDPが主な決定要素とされています。
市場為替レートに基づくGDPが、国際機関のポスト取りなども含めた日本の様々なプレゼンスに影響を与えることは、リアリズムとして認めざるを得ません。その上で、では日本としてどういう価値を創っていけるかを考えていくことが必要と思います。
緩やかな円高・ドル安=日米金融政策に転機―24年の為替展望
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
「市場が効率的であればさまざまな予想(期待)は瞬時に現在のプライスに織り込まれるはずであるので、市場の先行き予測は困難である」ことは経済学の入門編で誰もが学ぶことですが、(プロ野球等と同じく)「先行きの予想」を求めたがるメディアが多いことも仕方ないとは思います。
例えば物価であれば、ある程度の慣性効果が働きますし川上物価が上がればどの程度のタイムラグを置いて川下に波及するかといった分析も可能で、金融市場のプライスよりは多少は予測しやすいはずですが、それでもここ数年は世界中で予測を外しまくっているわけです。「市場の先行き予測」といったものは、ある程度距離を置いて冷静に見る姿勢が重要と思います。
「日銀は利上げ準備を」 IMFのコザック報道官
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
私がIMFに勤務していた頃から、IMFの報道官は実際には相当慎重な受け答えを心掛けておられます。今回の事例も、質問側の"What is your advice for the BOJ on the best timing to raise its short-term interest rate?"(日銀が短期金利を引き上げるベストのタイミングについてのアドバイスは?)というかなりあからさまな引っ掛け質問に対し、”we believe that the bank of Japan should remain prepared to raise the short-term policy rate once it is clear that the inflation target will be durably achieved.”(インフレ目標の達成見通しが立った暁には短期金利を引き上げられるよう備えるべき)という、かなり慎重、かつ当たり前の答え方をしています。
IMFのスタッフがしばしば驚くのは、自分たちの日本に対する言及が、遠い日本の地で、時に相当切り取られ、予想外に大きく報道されるということでした。皆さん毎回苦笑しておられましたが。
今年10月の家計消費支出2.5%減少 8か月連続の減少
山岡 浩巳フューチャー株式会社 取締役兼フューチャー経済・金融研究所長
賃金は遅行指標ですので、物価上昇局面で実質賃金が減少しやすいことは理屈の上でも当然ですし、最近の個人消費の弱さとも整合的と思います。
また、ここでの名目賃金上昇率はおおむね1%台と、春闘で喧伝されている賃上げ率などと比べてかなり低めです。これも、サンプルが大企業や輸出製造業に偏りがちな春闘の集計等に比べ、中小非製造業を含むトータルの数字は低いのは当然でしょう。
「賃金と物価の好循環」ですが、これも、賃金が上がればそれが新たなコスト要因として物価を押し上げるということですので、そうしたメカニズムに「好」というコトバを付すのは、あまり誠実ではないだろうと思います。実質賃金を中長期的に押し上げるのは結局は生産性の向上ですので、物価上昇自体が何かハピネスをもたらすような幻想を持たずに、イノベーションや構造改革に取り組んでいくことが大事と感じます。
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