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大学の授業、都は「オンラインで」、国は「対面で」…戸惑う大学「どうすりゃいいの?」
瀬地山 角東京大学 総合文化研究科 教授
私自身も「どうすりゃいいの?」という感じです。昨年度は対面もオンラインも経験しました。一方で首都圏の私大の2年生になった娘は、まだ入学以来数回しかキャンパスに行ったことがありません。見ていて本当にかわいそうです。
536席の階段教室が超満員になる「ジェンダー論」の講義は、今年度の初回受講者が900人を超えました。履修できるのは1~2年生だけですが、「以前は教室に入れず受講を諦めたけど、こうやって聞けてうれしい」といった感想が理系を含む他学部の3~4年生や大学院生からもあり、これはあきらかにオンラインのメリットのようです。ただ無観客の漫才は精神的に苦痛です。対面の時は冗談が受けると地鳴りがするのですが、オンラインではウケてるのかどうかもわかりません。コロナ後は教室に人を入れた上で配信することになるのでしょう。
大学院のゼミのように、ほぼメンバーが固定しているゼミもオンラインでの討論に大きな支障はないように思いました。ラオスで現地調査をしている院生の発表が聞けるのはすごいことです。
一方でもっとも困ったのが少人数で討論するタイプの授業で、その学期だけいろんな所属(学部・学科)から履修者が集まるものです。20人弱なのですが、みんな初対面なので、やっぱりコンパでアイスブレイクをして、対面で話さないと議論が活発化しません。授業はなるべく対面にしたのですが、みんなマスクをしていて、最後まで顔と名前が一致しませんでした。
いろんなところで言われていることですが、オンラインでは情報のやりとりはできても、関係性の構築ができず、結果として活発な情報のやりとりを阻害するように思います。
またサークルなどの活動も学生さんたちにとっては精神的なセーフティネットです。一律に制限したりはせず、対策をとった上で活動させてあげたいと思います。
女性研究者は16%の衝撃 OECD最低レベルの現状に沖縄から挑戦する
瀬地山 角東京大学 総合文化研究科 教授
OECDで行われている国際的な学力調査では、15歳時点で理科でも数学でも女子の方が点数の高い国が、北欧を含めいくつかあります。「女子は理系が苦手」というのは、生物学的根拠などなく、社会で作られる/変えられるものにすぎません。都内の女子の進学校では7割程度が理系という高校もあります。
日本の女子高校生は「女の子は家元から通え」「女の子は浪人するな」「女の子だから短大で充分」といった圧力で翼をもがれてしまっています。性別にしばられずに、好きな勉強ができる環境を整えていきたいと思います。東大でも出身の女子学生による母校訪問を行っていますので、いろんな高校からも手を挙げてください。
日本のジェンダーギャップ指数120位 過去ワースト2位
瀬地山 角東京大学 総合文化研究科 教授
英語の原文を読みました。このデータは男女の差だけに注目するので、たとえば男女とも同じように貧しいと順位が上がってしまいます。アジアのトップが17位のフィリピンなのは、ジェンダー差より階層差の方が大きい社会だからです。
みなさん政治と経済の話を取り上げるので、敢えて別の項目を挙げると高等教育(短大・大学)でも日本は110位で前年より落ちました。高等教育の在学者に大きな男女差があるからです。日本の大学進学率は短大を含めて計算するため、女子の方が少し高くなるのですが、国際的には日本と同じデータの取り方をする国はありません。高等教育在学率といって、18~22歳の人口を分母にして、(短大を含む)高等教育機関の在学生を分子にします。
こうすると短大生がいて3~4年生がいない分だけ、日本では女性の方が低くなるのですが、この時点ですでに先進国では最下位レベルになります。高等教育在学率は、男子で技術系、肉体労働系の職に就く層が一定数いるので、先進国ではほぼ女性の方が高いのです。
「女の子は短大でいいから」「女の子は浪人なんてしないで受かるところに」こうした圧力の結果が、高等教育在学率110位であり、東大の女子学生比率2割という性差別を生み出すのです。
これではいつまでたっても管理職や政治家の女性の割合は上がりません……。
中国、定年延長を検討 「孫の世話できない」と不満噴出
瀬地山 角東京大学 総合文化研究科 教授
中国文化圏(香港・台湾含む)は「老人は働いてはいけない」と考えている社会です。高齢者が働くことは息子の面子を潰すことと考えられ、忌避しようとする規範が強く働きます。
他方で日本の三歳児神話のような迷信とは無縁で、母子密着規範がないので、乳飲み子をおいて母親が出稼ぎに出ることには寛容です。したがって中国文化圏での女性の年齢別労働力率のグラフはまったくM字型にならず、日本で一番低い30代が、労働力率のピークとなる一方で、日本では高くなる50代以降で急に低くなります。
私の専門分野ですので、詳しくお知りになりたい方は『ジェンダーとセクシュアリティで見る東アジア』(勁草書房)をご参照ください。
東大前期、2993人合格 女性は2割、「通過点」と副学長
瀬地山 角東京大学 総合文化研究科 教授
通過点というより、スタートラインにたった程度のことです。女子学生を増やす学内のプロジェクトに関わっています。1998年、2012年など前年に社会/経済的危機があった年には、女子学生比率が下がる(←女子だけ受ける比率が下がる)ことがわかったので、今年は減るのではないかと心配していました。ですのでとりあえず減らず、2割になったことには安堵しました。
ただ指導的地位に就く人に占める女性の割合を3割に(これを2020年までに実現というが小泉内閣時代の目標)という目標が掲げられ、それに遠く及ばない状況で、東大の女子学生比率が2割では話になりません。欧米とよく比較されますが、北京大もソウル大も4割を超えています。
地方の東大に二桁くるような県立の進学校からの進学者で女子が1割になってしまうことが元凶で、なんとかそれにアプローチしたいと思っています。
私の講義は東大全学(に何万の授業があるのか知りませんが)で一番女性の受講者が多い講義なので、入ってきた女子学生のみなさんに希望を与えられるように、ジェンダー論の講義でメッセージを届けられればと思っています。
「本が嫌いでも灘高→東大」ゲームとYouTubeだけでも国語が満点な子のある習慣
瀬地山 角東京大学 総合文化研究科 教授
タイトルだけでアクセスを稼いでもうけようとする記事ですね。国語が満点といっても小学校の授業での話。東大生は学部生だけで1万4千人いるので、そりゃあいろんな学生がいるでしょう。
「本が嫌い」といっても中高で本を読まなかったとは書いていません。確かに挙げている例は思考力を試すものですが、特に変わったものにも思えません。この人がこういうやり方をしたのは事実ですが、このやり方をしたら成績が伸びるとは限りません。因果関係が逆で、できた人を見たらたまたまこういうやり方をしていただけです。
この手の「東大生がやってる勉強法!」なんて情報に振り回されずに、自分に合った勉強法を考えてください。あらゆる試験がそうであるように、東大の入試もそんなに特殊な勉強法の必要な試験ではありません。
若者の“映え離れ”が進行中?「雑誌化するインスタグラム」の新しい使い方
瀬地山 角東京大学 総合文化研究科 教授
この記事には一切根拠があげられていません。ニュースとは呼べず、単なる自社の広告で、期末のレポートで出てきたら「不可」です。
流行語が流行しなくなるのは当たり前。「○○するようになった」「○○が増えている」には、なんのデータの裏付けもありません。新聞などのメディアなら、「ちゃんと裏をとってきなさい!」とデスクに突き返されて記事にはならない、信頼性の低い情報です。ひょっとすると結論としては正しいのかも知れませんが、立論が間違っているので、フェイクニュースと変わりません。
自社サイトの広告なのでしょうから、NewsPicksもニュースとは区別して発信してほしいと思います。
大学生の1日のスマホ利用時間、平均は3時間45分 今"楽しい"と感じるもの1位は「YouTube、動画鑑賞」
瀬地山 角東京大学 総合文化研究科 教授
このニュースは間違っています。元の調査を見ると、そもそもランダムサンプリングではなく、回答者に占める文系女子の比率が異常に高くなっています。つまりクオータサンプリングとしても間違いです。
さらにそもそもネットで調査対象を募集しているので、スマホのヘビーユーザーの比率が高くなるのは自明です。電車に乗っている人に電車に乗る頻度を尋ねたら、平均より高くなるのと同じです。
したがってこの調査から「大学生のスマホ利用時間の平均が3時間45分だ」という結論を導きだすことはできません。こういう間違った情報が流通するのは、トランプのフェイクニュースが広がるのと同じ現象です。メディアが事実とは異なる情報を発信しており、受け取る側がその間違いに気づいておらず、大変困ったことだと思います。

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