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【塩野誠】GAFA v.s.国家、勝つのはどちらか
伊藤 俊幸金沢工業大学虎ノ門大学院 イノベーションマネジメント研究科教授
後進国は必ず先進国から技術移転を行い追い越していく。その結果、覇権国とそれに挑戦する台頭国が戦乱に陥る。これが「トゥキディデスの罠」だ。実際の戦争になるかはともかく、覇権国からパワーを奪うような経済とテクノロジーの変化、そして成長の異なる挑戦者が現れたとき、国家間の激しい争いが起きる。塩野氏は、その豊富なハイテク関連の知識を駆使して現在の米中対立に至る現代史を読み解く。
在米大使館防衛駐在官や海幕指揮通信情報部長などの勤務を通じて、筆者も防衛面における情報通信技術に関わってきた。インターネットを産んだ米国DARPA(国防高等研究計画局)で、人のEmailにハッキングするデモンストレーションを20年前に見せられたことがあるが、当時は豊富な国家予算により新しい軍事技術が開発され、それが民間にスピンオフする最後のころだったといえよう。その後米軍は、逆に民間のハイテクを軍事に利用するスピンオンにシフトしてきたが、本章はそのあたりの歴史も詳細に描かれた労作である。
【塩野誠】ハイブリッド戦争とサイバー攻撃#2/6
伊藤 俊幸金沢工業大学虎ノ門大学院 イノベーションマネジメント研究科教授
「ハイブリッド戦」とは、軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧にした現状変更の手法で、相手国に軍事面にとどまらない複雑な対応を強いる作戦行動だ。例えば、国籍を隠した不明部隊を用いた作戦、サイバー攻撃による通信・重要インフラの妨害、インターネットやメディアを通じた偽情報の流布などによる影響工作を複合的に用いる。
この手法は、2014年のロシアによるクリミア併合時、ウクライナに対して行われ、世界中の安全保障関係者を驚愕させた。サイバー攻撃により作戦開始以前から情報を盗み出し、作戦が始まるとサイバー攻撃はマルウェアを送り込むだけではなく、サプライチェーンなどにも攻撃した。同時に部隊を侵攻させ物理的に通信ケーブルを破壊しIXP(相互接続点)を占拠した。
このハイブリッド戦は、純然たる平時でも有事でもない、いわゆる「グレーゾーン事態」といわれる状況で行われる。そう、今現時点でも日本に対して行われている可能性があるのだ。本章では、特にサイバー攻撃にフォーカスしその実例が紹介されている。
【塩野誠】日本はどの未来を選ぶのか#6/6
伊藤 俊幸金沢工業大学虎ノ門大学院 イノベーションマネジメント研究科教授
新型コロナウイルス感染症は、日本がデジタル後進国だったことを明らかにした。陽性者数を手計算でFAXしていたり、システムによる給付金の登録がまともにできなかった政府や自治体に多くの人が驚いた。一般企業も印鑑を押すためだけに出勤するなど、テレワークも当初は進まなかった。本章にも、デジタルデバイスを指導に取り入れる際に必要な教育スキルを持っている教師の数は、79ヵ国地域中日本は最下位と書かれている。本作品の各章の論考においても、日本の遅れが指摘されてきた。
しかし塩野氏は日本の未来をあきらめていないのだ。それは絵空事でも浪花節でもない。日本の正しい未来を選択するため、経験と実績に裏打ちされた塩野氏の提言がここにある。新しいことにチャレンジをしない、保身と社内政治に汲々としている粘土層といわれる中高年は、心して読むべき内容だ。
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