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【塩野誠】GAFA v.s.国家、勝つのはどちらか
井上 友貴VISITS Technologies株式会社 エグゼクティブディレクター
デジタルテクノロジーを巡る国家安全保障上の根深い問題であるファーウェイ事案から切り出される。米中対立、技術覇権という国際政治上の従来議論の延長線上にデジタルテクノロジーを巡る攻防は大きくのしかかることを示す。
話は過去に遡り、国家が技術を奪い合ってきた実例を挙げながら世間での注目を浴びる機会の少ない技術安全保障の重要性を物語る。
蛇足だが、日本でも2020年8月に施行された「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」(経済産業省提出)は、5Gインフラ構築上、安全性・信頼性・供給安定性を確保するためのものであり、第1条(目的)には「…我が国の安全保障に寄与することを目的とする」と規定している。経済産業省の情報政策において安全保障を目的とした法律ができたのは初めてのことであり、ファーウェイ事案等を意識した強い意気込みが感じ取れる。
さらに民間での事例に話は移る。テック業界人(テクノロジー業界やスタートアップエコシステムに生きる人:筆者造語)にとって、常識として知っておくべき過去のデジタルテクノロジー分野の転換点となる事例の解説が続く。Wintel同盟、DARPAとその発明品であるインターネット、Googleのページランク、スタートアップエコシステム、中国企業の台頭。目まぐるしく勢力図が変わってきた同領域の動向を今後ともアンテナを高く張ることがほかの業界の企業経営者にも必須となるだろう。
【塩野誠】デジタル通貨と国家の攻防 #5/6
井上 友貴VISITS Technologies株式会社 エグゼクティブディレクター
課税問題以上に国家がデジタルプラットフォーマーに危機感を覚えたのはデジタル通貨への野望であったのは間違いない。単に利益を隠す小賢しいキツネではなく、国家権力を脅かす反体制派に見えたからだ。
確かにデジタルジャイアントにしてみれば、「海外送金を手軽に」「口座を持たない貧民にも金融サービスを」というペインを解消するためのイノベーションの活動がその発想の原点であったかもしれない。しかし、国家にしてみればそのインパクトは単なるペインの解消にとどまらず、国家権力の領域に土足で踏み込むように見えただろう。
リブラの動きを解説しつつ、国際的な政府の反応が解説されており、読み応えのある章となっている。筆者はこの章を読んで、「サピエンス全史(ユヴァル・ノア・ハラリ)」で語られた「サピエンスの統合は貨幣、帝国、宗教によって加速した。特に貨幣制度は、これまで考案されたもののうちで、最も普遍的で、最も効率的な相互信頼の制度である」ことを思い起こした。万国共通認知となっている貨幣の根っこを握ったらさぞ英雄気分が味わえることだろう。しかし、既得権益を持つ国家はその持てる力を注いで阻止しようとするのもまた間違いない。
【塩野誠】国家がプラットフォーマーに嫉妬する日#4/6
井上 友貴VISITS Technologies株式会社 エグゼクティブディレクター
今を我が世と思うGAFAなどのプラットフォーマーへの厳しい対処の必要性が感じられる。一般ユーザーはプラットフォーマーから無料でメールや地図アプリを使わせてもらう一方で自分の個人情報を提供している。ID情報を提供しつつ決済機能をプラットフォーマーに依存することで一層ロックインされ、ほかのプラットフォーマーへの乗り換えが難しくなる構図を作っている。こうしてプラットフォーマーは他社の参入障壁を設けることでその地位を確立している。
このような巧妙な仕掛けから政府はプラットフォーマーを危険視し始めている。欧州がGDPRを盾にGoogleに対して執拗に制裁を課しているし、米政府も公正な競争の観点からGAFAを議会に呼び出してお灸をすえている。
プラットフォーマーは政府以上に国民生活のインフラを提供し、利便性を届けているようにも見えるが、勿論彼らは営利企業であり、国民から選ばれた人間がコントロールしてるわけでもないことを痛感させられるのが、ここで縷々述べられている課税回避問題だ。
法の抜け穴をついた課税回避はどう言い逃れようとしても良識ある行動には映らない。善良な市民としての立ち居振る舞いがプラットフォーマーにできていたら、果たして今のように政府から危険視されることはなかったのではないかと思うし、一定の縛りが必要となるのはやむなしであろう。
【塩野誠】デジタルテクノロジーと権威主義国家#3/6
井上 友貴VISITS Technologies株式会社 エグゼクティブディレクター
インターネットはアラブの春に代表されるように個人に力を与える一方で、権威主義国家にとっては格好の支配ツールとなった。個人の嗜好や行動パターンなど国民監視や統治にはうってつけであることがわかる。
ケンブリッジアナリティカの政治的干渉の事件の背景は詳細かつ簡潔に描写されており、有権者にとっては、自分の投票行動が知らずに左右されていることがあり得ると考えると背筋が寒くなる思いである。
日本の政治家はお世辞にもデジタルテクノロジーに精通しているとはいいがたい。日本のIT担当大臣はPCが使えないし、USBメモリが何のことか分からないと他国で報道され、世界で一番サイバー攻撃に強い大臣と揶揄されたことが記憶に新しい。政治とデジタルテクノロジーが密接になるのが避けられない中、日本の政治が他国の干渉にさらされることがないか心配である。
【塩野誠】ハイブリッド戦争とサイバー攻撃#2/6
井上 友貴VISITS Technologies株式会社 エグゼクティブディレクター
ここではデジタルテクノロジーの負の側面をえぐる。平時でも有事でもない「グレーゾーン」における主役はサイバー攻撃である。サイバー攻撃の低コスト性、犯人隠避の容易性、与えるダメージの重大性は、貧者の武器としては最適である。特に犯人が特定しづらく表立って人を殺傷したり、施設を破壊することが少ないため、攻撃側は実行に躊躇がなくなる。
サイバー攻撃に対して武力による対抗措置の是非、サイバー空間の主権の存否など通常兵器を前提にした戦争倫理に対する新たな論争や安全保障上の論点を解説している。
一般市民の我々もデジタル化やネットワーク化による利便性には、光と影のようについて回るサイバー脅威があることを思い知らされる。果たして、デジタル化に身をゆだねることに一度我々は立ち止まる必要はないのか考えさせられる。
【塩野誠】日本はどの未来を選ぶのか#6/6
井上 友貴VISITS Technologies株式会社 エグゼクティブディレクター
2000年に成立したIT基本法では、世界最先端のIT立国を目指し、電子政府の実現が謳われていた。20年が経過し、日本のデジタル化の遅れが新型コロナウィルスの対応で露呈し、当時掲げた目標は虚ろに映る。インターネットの普及が本格化した2000年以降、日本発のイノベーションは息をひそめ、今の日本にデジタル化の遅れを取り戻す以上に、世界を牽引するだけの意気込みと能力が備わっているかは甚だ疑問である。
しかし、著者は今の日本こそ相対的に地位が向上すると断言し、そのためにはソートリーダーの存在が不可欠であると述べている。そのソートリーダーが日本のリソースを使ったアジェンダセッティングとルールメイキングを行うことが活路であると。ソートリーダーの育成には意思と能力のある人間に多様性を持たせることが不可欠であり、多様性を持たせるためには政府と民間を行き来するリボルビングドアが必須という。ゲームはまだ終わっていない、未来志向で立ち上がれと鼓舞する著者の叫びがヘルシンキから聞こえてくるようだ。
「無駄な規制、通報して」 河野行革相が開設「縦割り110番」
井上 友貴VISITS Technologies株式会社 エグゼクティブディレクター
河野大臣の前例にとらわれない本質的かつ合理的な思考は日本の政治家とは思えない資質。
自分が外務省にいた頃の大臣が河野大臣だった。当時、大臣の海外出張には省内の幹部がぞろぞろついてくるのが当たり前でそのための準備と費用が馬鹿にならなかった。役人からは無駄だからそんなことはやめたいとは大臣には言えないため長年温存されていた風習が、河野氏が外務大臣にると「こんな無駄なことはやめなさい」と指示を下した。
過去の何人もの大臣が当たり前と思っていた見過ごされていた無駄を変えられるのは素晴らしい英断で、心底すごいと思った。
【最前線】AIは、“クリエイティブ”になれるのか?
井上 友貴VISITS Technologies株式会社 エグゼクティブディレクター
芸術家によると「作者の内面」の発露が作品となって世に出るもので、発露の仕方には創造性が深くかかわるという。漫画が芸術であるかは別としても、手塚治虫氏は漫画を通じて彼の内面にある何かを世に伝えたかったはず。
人間個人の「内面」は多様性があり、それこそが個性や創造性につながると考えると、そもそも「内面」を持たないAIが作った作品には、「作者はこの作品を通じて何を表現したかったのか?」という最も重要な問いかけが未意味になる。AIによる音楽、絵画、小説等の創作は、内面の発露たる芸術性の観点からは新たな価値の定義が必要であろう。
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