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【直言】“補助金”を見直さなければ、林業再生はあり得ない
NewsPicks編集部
都藤 元彦(株)都藤商店 専務取締役
関西地方で材木屋を営む者です。 今回のインタビューを読んで不意に想起した話です。 1666年4代将軍徳川家綱の時代、稲葉正則を中心とする老中の連署によって『諸国山川掟』が発令されました。 安土桃山次代から続く旺盛な建築ラッシュや、戦乱の終結による生活の安定がもたらしたエネルギー需要から、特に大都市近郊の林産地を中心に、文字通り根こそぎ伐られた「禿げ山」が頻出した事。更に禿げ山となり治水能力が低下し、大都市近郊の河川の氾濫が相次いだ事。様々な弊害を受けて各地域の対策の指針として行政府から発令された史上初の法令です。(全国一斉だったのか地域限定だったのかについては賛否があるそうですが) そのあたりの幕府の対応を中心に、秋田杉で知られる佐竹藩や飫肥杉で知られる伊東藩といった現代まで知られる林産地の事情を含んで、木曽地方を領有した尾張徳川家の研究機関が編纂した書籍が下記のリンクです。 森林の江戸学 http://www.tokyodoshuppan.com/smp/book/b97267.html 江戸期の林政や林業の実態に関わる情報が体系的に網羅されている良著です。 良く歴史は繰り返すと云われますが、正確には「歴史は螺旋状に進む」です。螺旋状にどの方向に進むのかは分かりにくいですが、森林ストック量やマーケットの範囲など現代とは対極にあった過去の行政府の取り組みを知ることで、未来へのベクトルを推測し、自らの立ち位置を意識する一助になるのではないかと思い紹介させて頂きます。
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【必見】あなたは、最先端の林業の現場を見たことがありますか?
NewsPicks編集部
都藤 元彦(株)都藤商店 専務取締役
関西地方で材木屋を営む者です。 このような特集が組まれた場合、北欧を林業先進地として引き合いに出されることが多いのですが、彼の国々の先進性や生産性だけではなく、北欧の「樹種の少なさ」についても言及がほしいところです。 北欧の山林はそもそもがパインやスプルース等の針葉樹が大半を占め、かつ地形条件により林道を通しやすい立地に真っ直ぐ生育しています。また乾燥した気候条件もあり、それらの樹種だけでほぼほぼ自国の建築需要をまかない、外貨獲得手段として対外輸出される分も含め計画的に管理されています。 一方で日本に於いては、 ①杉・桧・松・モミ・ヒバ・ナラ・栗・クヌギと針葉樹と広葉樹が地方によって入り交じる天然林 ②杉・桧をメインに山主によって手の掛け具合の異なり且つ地方によって木味の差異が出る人工林 と、古来からの地域ごとの樹種や品質・育成状況にはパッと思い付くだけでも相当なバラツキがあり、さらに立地によってクリアしないといけない気象条件(湿度・雨風雪・土壌強度etc...) それらに応じて地場の大工さんが適材適所に加工して組み合わせ、家や寺社等を建ててきた歴史があります。 技術革新やICT化が進み、確かに手段としての林業はスマートになりつつあり、それが世界の潮流です。しかし、翻って見る我が国の林業や木材業の特色は、多様性と対応力です。最先端の設備やトレンドに合わせた経済合理性はもちろんとても重要な事です。ただまずは己を知りたい。そして、生育・地形条件の違いや歴史的背景の確認から始まり、多様性を認識した需要喚起に結び付けられるような、丁寧な議論が活発になってほしいと願います。 我々木材流通業者も色々とこれから実行に移そうとしているアイディアを持っています。多様性を武器に次代の価値観を考えていきませんか?隣の芝生は青く美しいかも知れませんが、我々の庭もなかなか味があって捨てた物じゃないんですよ(^^)
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【学び】日本人なら知っておきたい、木材の歴史・森林のすべて
NewsPicks編集部
都藤 元彦(株)都藤商店 専務取締役
関西地方で材木屋を営む者です。 森林環境税及び森林環境譲与税について、別の側面からも筆をとらせて頂きます。 ①森林面積②林業従事者数③人口に応じて算出された金額が、各都道府県や各市町村に、「森林整備」「木材利用」を主な使途として分配される「目的税」です。 しかしこの「目的税」は、上記の③の要件により、経済資源としての森林を殆んど保持しない都市部の市町村にも一定金額が分配されるため、使用用途を持て余してしまい、基金としてプール化して棚上げする市町村が出現しています。 かっての竹下内閣時代のふるさと創生事業のように、無理に消化されてしまうことを思えば賢明な判断なのでしょうが、「木材利用」を通じて循環(マネタイズ)を促し、「森林整備」に繋げたいという本来の創設目的からは、いささか寂しい現実です。 住宅への木材利用、公共建築を始めとする非住宅への木材利用、薪炭やバイオマス等エネルギーとしての木材利用、おもちゃ等知育や教育への木材利用・・・様々な用途に対して規制と緩和を繰り返し、補助金や助成金が付いてきました。が、押し並べて特効性の無いまま負のスパイラルが続き現在に至ります。 個人的な意見ですが、今の林業や木材業に求められているものは補助金や助成金ではなく、木材利用そのものを活発に議論するオープンな環境ではないのかなと思います。 山林は住生活・環境・防災等様々なトピックを包括した国民全体の共有財産です。にも関わらず、意思決定に関わっている人の数が少なすぎるし、一般的な認知が弱すぎる。また、新規参入業者も皆目です。プレイヤーが少ない市場程イノベーションが起きにくいのは周知の事実です。いわば集合知の恩恵を全く受けられていないに等しい。 林業も木材業も決してブラックボックスでは無いし、他山の石でも無いのです。少しだけ普段の日常生活から遠いだけなのです。今回のNewsPicksの特集がより一般的な議論の嚆矢となるよう切に願います。
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【秘密】元値は10分の1に。日本の林業をダメにした「真犯人」
NewsPicks編集部
都藤 元彦(株)都藤商店 専務取締役
関西地方で材木屋を営む者です。 川上の林業では無い、川下の木材流通の視点から筆をとらせて頂きます。 市街地に立地する材木屋(製材屋)は、その時々のエリア内の需要に合わせて取り扱う樹種や製品の比率を変えてきました。その中で弊社も昭和30年代頃から、米松を始めとする外国産材(外材)の製材に舵を切り、現在に至っています。 弊社のエリアに於いては地松(赤松)普請や栂(トガ)普請の住宅建築が伝統的に多かったのですが、需要の逼迫やキクイムシ等の影響により供給量と価格が維持できなくなった為、美しい木目を持ち歩留まりが良く米松への置き換えが急速に進みました。 しかし、建築様式が変わり壁や天井の裏に木材が隠れてしまうようになった現在では、美しい木目が求められる事も少なくなりました。つまり、新築住宅ありきの産業構造が最早成り立たなくなったのです。米松等外材の需要もまた漸減し、反比例して輸送コストや製材コスト等原価は上昇し続けています。需要減のスパイラルの中では、国産材・外材を問わず、なかなか販売価格に反映させ辛いのが現状です。 そんな中で我々街の材木屋としての大きな反省が1つ、今までがあまりにも「待ちの商売」だったのではないか、と。「間口だけ広げた奥行の無い旦那商売」と古典落語にもありましたが、言われるままの商いが故に提案力を持たず、山側へのフィードバックを怠り、変化し続ける市場と新たな市場にアジャストしきれず、今に繋がってしまっていると感じます。 私は今はあくまで外材メインの材木屋です。が、国産材や地域材の流通が活発にならないと我が国の木材利用その物が成り立ちません。今回の特集を通じて様々な方の慧眼や卓見に触れる事ができ、またそのあたりの意を強くしました。
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【独自】「違法木材」で囁かれる、東京五輪のダークサイド
NewsPicks編集部
都藤 元彦(株)都藤商店 専務取締役
関西地方で材木屋を営む者です。 林業では無い木材流通の視点から筆をとらせて頂きます。 山と街の中間で需給の調整弁となるべき我々材木屋が、目先の利益に追われて、日本建築の啓蒙活動と現代生活へのアジャストを適切に行ってこなかった為、川下の流通を滞らせた事も今日の状況の一因かと認識しています。 戦後復興から高度経済成長期にかけての旺盛な住宅需要の中、施工の簡素化・迅速化のニーズに応えて技術革新と置き換えが進みました。 ①柱や梁・桁はプラスターボードや合板の裏に隠れ、②瓦葺が金属ルーフに変わる事で屋根を支える垂木や広小舞といった部材が減り、③板張りや漆喰塗の和室がクロス張りの洋室に変わる事で床板や腰板・畳下の杉板が消え、④更には冠婚葬祭等を家で行う事が少なくなった事で床の間や座敷が無くなり、天井板や絞り丸太といった銘木の需要が激減しました。 つまり、日本の住宅における木材利用の在り方がすっかり様変わりしてしまい、節の有無や木目の綺麗さ、樹種そのものの希少性によって区分けされていた従来の価値や価格が維持できない現状を招いたのです。 山林の維持には莫大な手間隙がかかります。ところが、手間隙をかけても川下でペイできないという現実、後はもう推して知るべしです。 一方で、木材を多用した空間内での人体への影響を立証する実験結果が近年相次いで報告されています。例えば、九州大学で行われた睡眠時の呼吸を測る実験では、新建材に比して良好な結果が得られています。https://www.nishinippon.co.jp/item/n/225108/ また、街中のビル等の外装面に木材を利用する事で、アスファルトの照り返しを緩和し、市街地気温の上昇を和らげる取り組みも為されています。 長くなるのでごくわずかの例示ですが、この辺りに、今後のヒントと可能性があるのではないでしょうか。住宅だけではなく、ビルやオフィス・店舗等の内外装へと範囲を拡げて、木材利用の在り方に社会の関心が向いてくれないかと川下から願ってやまないものです。
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