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豊洲への早期移転が望ましい理由 – Global Energy Policy Research
www.gepr.org
久保 一之東京コミュニティスクール 創立者・理事長
中西準子先生のこの論文は非常にわかりやすいので、ぜひ一読することをお勧めする。 数年前に読んだ、ピーター・ティールの『Zero to One』には、新しい何かを創造すること、すなわちゼロを1にすることの価値について書かれていた。ベンチャーというビジネスにおいて、一握りの成功者がその他すべてを大幅に上回るリターンを叩き出すこと、逆に言えば、失敗するリスクも極大するという「べき乗則」という視点が語られていた。 豊洲の移転の問題に限らず、現在の社会や環境問題を見ていると、リスクを低減・最小化しようという基本理念に関しては共感するものの、『One to Zero』という発想に縛られた議論には疑問を感じずにはいられない。 客観的に捉えれば、ゼロリスク(全くリスクがない)ということは非現実的であるに関わらず、人々はそれに強く引きつけられてしまう。この代表例がフランスの経済学者、モーリス・アレの「パラドックス」と呼ばれる不確実性の下での選択理論で、人はリスクを含む選択肢と含まない選択肢を提示された場合、期待効用がかなり低くなってもリスクを含まないほうの選択肢を選ぶ傾向があること、すなわち、1%から0%へのリスク削減は、n%から1%へのリスク削減よりも強く人を引きつける傾向が強いことはわかっているし、それは「自分を守る」という本能的な営みだと考えれば、『One to Zero』思考の方々を非難するつもりはない。 しかし、その議論の先には、人間が生きること自体が害でありリスクであるという問題が待ち受けている。その解決法は「自分を守る」という本能的な営みと矛盾する。 だからこそ、私たちはリスクを最小化する努力やイノベーションを求め続ける一方で、リスクレベルが低下するに従い、単位リスクを削減するための限界費用(金銭的な意味だけではない)は飛躍的に増大することを示す「べき乗則」を理解し、「受け入れ可能なリスク」とともに生きていくという選択をする必要がある。その「受け入れ可能なリスク」とは何かを考えていく際に、この中西先生の論は参考になると私は思った。
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