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アルツハイマー病治療薬承認に抗議、著名学者がFDA諮問委員を辞任
Bloomberg
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
このような動きは承認前から予想されていました。米国老年病学会は、学会として承認反対の声明を、承認前から出していました。 薬の承認は、感情ではなく、必ず科学で判断されなければなりません。しかし、今回の薬に関してはほとんど後者の根拠を欠いていると言わざるをえません。 アデュカヌマブの試験で認められた効果の大きさを表現すると、(あったとしても)既存薬であるアリセプトの約半分程度の効果だと考えられています。 一方で、約3割の方に脳内の変化が生じるような副作用が見られています。このために、CTやMRIなどでの慎重な経過観察が必須なのではないかとも考えられています。だとすると、莫大な薬価に加えて、検査費用の負担も積み重なり、大きな医療経済負担となります。このお金を患者さんの理学療法などに使う方が価値が高いのではないかという声はもっともです。 また、週に1回の点滴が必要になります。そこにかかる患者さんの負担や介護負担は何も計算されていません。 この承認が新たな競争を生んで新薬の開発が加速するという声もありますが、真に患者さんを助けるものではなく、中途半端な薬剤の開発を加速し、「真に患者さんを助ける」という目的が見失われていくという可能性も懸念されています。 私たちに必要なのは、真に患者さんを助けられる未来です。その未来を実現するために必要なプロセスは何かという視点で考え続けたいものです。
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アルツハイマー薬、米で承認=世界初、エーザイが共同開発
時事通信社
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
このニュースからポジティブな印象を抱く方が大半だと思うので、ネガティブな側面をここに列記しておきます。少なくともNewsPicksをご利用の方には、物事の両面を理解し、「盲目的」になることを避けてほしいと思っています。 承認申請の根拠になった試験結果を見てみると、確かにアミロイドβの量は薬の投与によって著しく減少しており、試験で用いられた「スコア」の上では薬の投与が2割ながら認知機能低下を遅くしていました。 しかし、これを実社会に当てはめた時に、患者さんのパフォーマンスや、介護をする家族、介護職の負担をどの程度減らせるかは試験結果からも定かではありません。あったとしても最小限なのではないかと推察されます。 また、当初の中間解析では差を示すことができず、単一の「再解析」の結果だけが根拠となっていて、同時に行われていたもう一方の試験では有効性を示すことができておらず、「十分な有効性がある」と支持できるだけの根拠がありません。そもそも「再解析」は有効性を示すのに適したものではありません。 これに対しては「少しでも有効な可能性があるのなら、何もないよりいいではないか」という批判もあるかもしれません。しかし、そこにも冷静な受け止めが必要です。そもそも、副作用のない薬などないのです。薬は常に「有効性」と「安全性」の天秤の中で使用されます。この試験の中では実際、約3割に脳のむくみや微小な出血といった脳の変化が生じていました。中には「混乱」や「転倒」といった症状につながっていたケースもありました。 また、抗体製剤は通常薬価が高く、コストも問題になります。継続的に投与される薬のコストだけではなく、副作用への対応で行われるMRIなどにかかるコストも考えると尚更です。費用対効果は本当に十分あると言っていいのでしょうか。 アルツハイマー病を克服したいという強い思いがあることは同じです。私も目の前の患者さんを一人でも多く助けたいです。しかし、ここまで得られた結果が示したものー認知症への限定的な効果、副作用リスク、コストーを見て、今自信を持って提供されうる治療とは、私は言えません。 引用文献 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31978357/
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エーザイと共同開発のアルツハイマー治療薬、米FDA承認
毎日新聞
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
このニュースからポジティブな印象を抱く方が大半だと思うので、ネガティブな側面をここに列記しておきます。少なくともNewsPicksをご利用の方には、物事の両面を理解し、「盲目的」になることを避けてほしいと思っています。 承認申請の根拠になった試験結果を見てみると、確かにアミロイドβの量は薬の投与によって著しく減少しており、試験で用いられた「スコア」の上では薬の投与が2割ながら認知機能低下を遅くしていました。 しかし、これを実社会に当てはめた時に、患者さんのパフォーマンスや、介護をする家族、介護職の負担をどの程度減らせるかは試験結果からも定かではありません。あったとしても最小限なのではないかと推察されます。 また、当初の中間解析では差を示すことができず、単一の「再解析」の結果だけが根拠となっていて、同時に行われていたもう一方の試験では有効性を示すことができておらず、「十分な有効性がある」と支持できるだけの根拠がありません。 これに対しては「少しでも有効な可能性があるのなら、何もないよりいいではないか」という批判もあるかもしれません。しかし、そこにも冷静な受け止めが必要です。そもそも、副作用のない薬などないのです。薬は常に「有効性」と「安全性」の天秤の中で使用されます。この試験の中では実際、約3割に脳のむくみや微小な出血といった脳の変化が生じていました。中には「混乱」や「転倒」といった症状につながっていたケースもありました。 また、抗体製剤は通常薬価が高く、コストも問題になります。継続的に投与される薬のコストだけではなく、副作用への対応で行われるMRIなどにかかるコストも考えると尚更です。費用対効果は本当に十分あると言っていいのでしょうか。 アルツハイマー病を克服したいという強い思いがあることは同じです。私も目の前の患者さんを一人でも多く助けたいです。しかし、ここまで得られた結果が示したものー認知症への限定的な効果、副作用リスク、コストーを見て、今自信を持って提供されうる治療とは、私は言えません。
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ワクチン接種でビールや無料保育、バイデン氏が7月目標達成へ新特典
Reuters
山田 悠史マウントサイナイ大学病院 米国内科専門医
ワクチン接種に金銭的なインセンティブを提供することには一定の論理があります。 まず、インセンティブには、予防接種にかかる間接的なコスト(予約、移動、待ち時間などにかかる時間によって発生するコスト)を相殺する役割が期待されます。ワクチン自体が無料でも、こういったコストが実際に低所得者がワクチン接種を受けるのを妨げる要因となることがありますが、金銭的なインセンティブで、真に「無料」のワクチン接種に近づけることができます。 また、個人の行動が他の人々にまで及ぼす影響のある場合、政府が介入する意義が高いことがこれまでの経済学的研究で示唆されています。なぜなら、人は自分の行動が他人に与える影響を過小評価する傾向が知られているからです。 例えば、対外的な「負の」影響の例として、大気汚染する工場が挙げられます。政府からの制裁がなければ、大気汚染する工場の方がコストがかからないため、汚染が進む傾向になります。このため、政策的な制裁が妥当化されます。一方、ワクチン接種は「正の」対外的影響をもたらす行動です。個人のワクチン接種が他の人々も保護することにつながるからです。しかし、そういった影響が多くの人に過小評価されるため、インセンティブが、その補正につながるという理屈です。 さらに、インセンティブは、ワクチン接種行動を促進することで、結果としてCOVIDにかかる医療費を削減することにつながるので、将来回収できるという理屈もあります。このCOVIDならば尚更でしょう。 インセンティブの欠点として、インセンティブが終了すると人々は行動を元に戻してしまうため、慢性的な持病の治療にはうまく働きませんが、ワクチン接種のように短期的な行動を変えるのに特に効果的と考えられています。 引用文献:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMp2107719
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