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<あのころ>人類初の宇宙飛行 ソ連のガガーリン少佐
土屋 武司東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授
何年か前に古本屋で買った「ガガーリン」 https://amzn.to/3g3W6VE を読了.今年4月12日は,ソ連のユーリー・ガガーリンが1961年4月12日に人類初の有人宇宙飛行に成功してから,60年になる.
ガガーリンはいつ,どのように選ばれたのか,セルゲイ・コロリョフ(ソ連のロケット開発者)との関係はどうだったのか.
ガガーリンは最初ではないという説がある.実はそれより以前に宇宙飛行を行った人間がいる話であるが,真相はどうか.
面白いのは,自動操縦で飛行する宇宙船で宇宙飛行士は操縦の必要がなかった.というか,させたくなかった.亡命するかもしれないから... でも万が一を考え,マニュアル操縦に切り替える秘密のパスワードを用意した.それをどう隠し,どう伝えるのか.
そして,英雄の苦悩と事故死の真相.
綿密な取材にからよくまとめられて,ソ連の初期のロケット開発の一旦が分かる.
準天頂衛星「みちびき」で高精度単独測位、自動運転向け受信モジュール
土屋 武司東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授
「みちびき」のいくつかあるサービスのうち,「センチメータ級測位補強サービス」(CLAS)は,メートル単位の測位誤差をもつGPSを補完し,測位誤差を数センチまで高めるというもの.あらかじめ正確な絶対位置が分かっている電子基準点で,GPSなどのGNSSからの測位情報の誤差を計算.その誤差分を補正する情報(測位補強情報)を準天頂衛星から配信する.結果として,任意の地点で誤差数センチという高精度の測位が可能になる.ユーザーが基地局を置かないといけないRTK-GNSSと異なり,衛星からの信号だけで高精度な位置検出が可能であり,自動運転などの幅広い用途で利用が期待されています.
そういえば,「みちびき」によって既存のスマホやカーナビの位置精度が上がるという誤解を聞かなくなりました.多くの人は忘れたのだと思うけど.
米スペースシャトル「コロンビア」打ち上げから40年
土屋 武司東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授
当時,小学校5年生でしたがテレビ中継を見ていました.延期されて打ち上げられたのが真夜中.斬新な宇宙船は新しい宇宙開発時代の始まりを期待させ,子供向けの雑誌,学習本,漫画でも持ちきりでした.誰でも宇宙に行ける時代が来たと.
しかし,スペースシャトルの問題点も分かってきました.
例えば,当初の目標は,打ち上げコストは従来の1/2~1/3,年間打ち上げ回数は50回(週一回のペース),帰還した機体を簡易整備とペイロードの詰め替えを行って10日後には再打ち上げする.
ところが実際は,帰還したらエンジンを換装,表面のTPS(タイルなど)を張り替えるなどの重整備が必要で,引退までの30年間で4機で135回しか打ち上げれませんでした.
上がらない打ち上げペースを焦って無理した結果が,1986年のチャレンジャー号の爆発事故につながりました.
スペースシャトルは完全再使用型宇宙往還機(Fully Reusable Launch Vehicle)ではなく,部分再使用型宇宙往還機(Partially -)でした.なぜこのような中途半端になったかというと,ベトナム戦争の影響で十分な開発費が獲得されず,そこそこの開発費でそこそこのコスト減で妥協したためでした.
ざくっと調べた打ち上げコストは以下です.
名(低軌道打上能力) 打上費用
スペースシャトル(24 ton) 620億円
ソユーズ(6.9 ton) 60億円
H2A(10 ton) 85~100億円
ファルコン9(10 ton) 50億円
(日本の次期主力ロケットH3はH2Aの半額を目指しているとのこと)
すぐにNASAもシャトル後継機の開発を始めます.1980年代のオリエント・エクスプレス,NASP,90年代のDC-X,X-33,X-34のいずれも挫折.結局,現在NASAが開発中の使い捨て型のSpace Launch System(SLS)もシャトルの機器が多く受け継がれています.
最近は再使用といえばSpaceXのVTVL(Vertical Takeoff, Vertical Landing)が耳目を集めています.しかし,大本命は飛行機のように乗って宇宙との間を往復できる有翼の完全再使用型HTHL(Horizontal -, Horizontal -)スペースプレーンだと思います.生涯のうちに実現したい.
737MAX運航一時停止 ボーイング、電気系に問題
土屋 武司東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授
詳しくは分かりませんが,737MAX8, 9(すべてのMAXではない)の Fuel Quantity Processor Unit (FQPU) に問題があるようです.
“This proposed AD was prompted by a report that, during refueling of the right main tank, if there is a failure of the automatic shutoff system, the refueling panel does not provide the required indication that the automatic shutoff has failed. This proposed AD would require installing a new fuel quantity processor unit (FQPU) and doing an FQPU software check.”
https://simpleflying.com/faa-max-ad-fuel/
AD(耐空性改善通報)はまだ出ていないらしい.
人類初の宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンの飛行から今年の4月12日で60年
土屋 武司東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授
このとき,アメリカは有人ロケットの打ち上げも行っておらず,1ヶ月後の5月にアラン・シェパードによる初めて弾道飛行に成功した.ジョン・グレンが周回飛行に成功したのは翌年の2月.そして,5月のケネディ大統領演説.
We choose to go to the Moon in this decade and do the other things, not because they are easy, but because they are hard.
に繋がり,1969年7月のアポロ11号月面着陸に至るわけですが,もしガガーリンの飛行があと1年遅かったらどうなるか.アメリカの有人飛行の方が早かったかもしれない.あるいは,ソ連の方が早かったとしても,60年代中(in this decade)に月着陸という切りの良い実現可能な目標が立てられなかったために,月への競争はもっとマイルドに行われたかもしれない.そもそも月着陸などという宇宙計画はなかったかもしれない.
ガガーリンに関する情報は少ない.「ガガーリン - 世界初の宇宙飛行士、伝説の裏側で」 https://amzn.to/3wREp1w がおすすめ.
戦闘機での空中戦も全自動に? 進化するAIが「群制御」での飛行と攻撃を実現する
土屋 武司東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授
今週から新学期が始まり,今日から始まった制御の授業で最適制御の歴史を話しました.
第二次世界大戦中に始まったオペレーションズリサーチ(数理計画,最適化)が,制御に応用されて最適制御が確立されていったのですが,その中心となったのが航空工学でした.
1962年,Arthur E. Brysonは,スクランブル発進する戦闘機が,ある高度,ある速度まで最短時間で到達できる飛行法を最適制御の数値計算で導き出し,論文で発表しました.その飛行方法が常識外れであったために当初は信用されず,後日,実際の戦闘機で試してみることになりました.その結果,ほぼ計算ピッタリの時間で飛行でき,しかも,その時間はベテランパイロットの飛行よりもはるかに短いものでした.人間パイロットがコンピュータの計算に負けた瞬間でした.
以来,コンピュータの能力とアルゴリズムは発展を続け,人間を必要としないのではないか,という段階にまで到達しました.
ちなみに,F-16なのは,米軍戦闘機の中で空力係数や制御則を含め最も多くのデータが公開されているからです.

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