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無視できない大きさの影響なら政策変更もあり得る=円安で日銀総裁
Reuters
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
植田総裁が確認したように、円安を理由に追加利上げに踏み切るとすれば、円安が国内物価の基調を押し上げる可能性が高いと判断する場合になります。 現在の局面でそうした判断を下すためには、①円安圧力が当面持続しそうかどうか、②輸入物価の上昇が国内物価に波及するかどうか、がポイントになると思います。 このうち①については、日米の金利差だけでなく、国際商品価格の上昇や中東情勢の不安定化も、日本の経常収支の悪化見通しを通じて、金融市場では円安継続の思惑が続きやすいように見えます。 一方で②については、国内消費が力強さを欠く中で、企業がこれまでのように価格転嫁を進めることには懐疑的な見方もありました。しかし、賃上げの効果が実際の給与に徐々に反映する中で、家計のマインドに好転の兆しも見られ始め、価格転嫁の環境が維持されると考えることも可能となっています。 私自身は、海外経済の減速リスクや地政学的リスクも映じた内外資産価格の不安定化も踏まえると、4月MPMで連続利上げを行うのでなく、上記のポイントも含めた分析や議論を十分行なった上で、7月MPMで新たな見通しをもとに追加利上げを判断するのが良いと思います。 それでも、記事が取り上げた植田総裁のコメントを踏まえると、「リスクシナリオ」としての4月MPMでの追加利上げの可能性を念頭に置く必要も生じてきたように感じます。
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ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨
Reuters
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
6月理事会での利下げ開始は、先般公表された3月理事会の議事要旨で既に示唆されていた方向性であり、私も過去のピックで触れたように、、それ自体は新たな話ではありません。 その上で、今回のラガルド総裁の冒頭説明や質疑をもとに利下げ予告の背景を考えてみると、インフレの減速トレンドが明確であるだけでなく、景気への懸念が強いことが推察されます。 この点は、他のピッカーの方が指摘されたように、質疑の中で多くの記者が取り上げた米国との違いに関するラガルド総裁の回答に示されています。 つまり、ユーロ圏では、個人消費や設備投資が相対的に弱い上に、米国に比べて依存度の高い外需の回復も停滞し、さらには域内主要国の財政支出が縮小方向にある訳です。 物価安定のみが唯一の政策目標であるECBが、景気の先行きに対する懸念を主因に利下げに踏み切ることは、金融市場に対するコミュニケーションを複雑にしている面があります。 また、ECBの場合には、これから利下げを開始する一方で、PEPPによる保有債券の削減やLTROの返済の進捗等を通じて、いわゆる「量的引き締め」はむしろ加速していくことになります。両者のバランスをどうとって行くかも、今後の課題です。
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フィッチ、中国格付け見通し「ネガティブ」に下げ 成長にリスク
Reuters
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
野村総研が中国のシンクタンクである中国金融40人論壇と共同で開催してきた「日中金融円卓会合」でも、過去にしばしば議論してきたテーマであり、決して新しい問題でないだけでなく、以前から予見可能な政策課題であったと思います。 各会合の議事要旨は野村総研のホームページで公表しています。両国の専門家による議論にご関心のある方は是非ご覧ください。 その意味では、問題の所在が明確になった後に、ずいぶん時間が経ってからそれを指摘することにどの程度の意味があるのか、個人的には疑問も少なくありません。 むしろ、意味があるとすれば、この問題に対してどのような解決策がありうるのかを考えることですが、その際にも中国当局が現実的に取りうる手段を理解した上で議論しなければ意味がありません。 例えば、日本のような枠組みの下であれば、問題の深刻な地方政府に対して中央政府が選択的に財政支援を行うことが有用という結論になりますが、中国のように分権的な枠組みの下ではそうした手段の活用には制約があり、その本格的な発動には大きなpolitical capitalが必要と見られます。 その意味では、中国の政府がこの問題の解決について、政治的な視点も含めてどの程度の優先度合いを付与するかが、大きなポイントであるように見えます。
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ECB、利下げ論拠の強化確信 物価目標達成しつつある=議事要旨
Reuters
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
記事にあるように、議事要旨の最後の部分では、①利下げの条件が整いつつあることと、②インフレの先行きを判断するために必要なサービス価格の動向や賃金と企業収益の関係等に関する十分なデータは6月理事会(執行部見通しの改訂)で得られるとの見方の双方が明確に示されています。 つまり、少なくとも3月理事会の段階では、理事会の大勢は6月の利下げ開始をメインシナリオと位置付けていたことが確認できました。4月理事会での利下げ開始は時期尚早という考えです。 その上で、今回の議事要旨について個人的に興味深かったのは、既往の金融引き締めの効果に関する議論です。 金融環境のタイトさが徐々に緩和していくことで、景気回復を下支えするとの楽観論が目立った一方で、企業や家計に対する負担はむしろこれから顕在化するとのリスクが指摘されました。 上記の楽観論については、ECBの執行部見通しが金融市場の金利見通し(つまり、本年中の利下げの進行)を前提として作成されているだけに、いわば「堂々巡り」となっている点に注意する必要があります。 その上で、既往の借入の返済が困難となった家計や企業が増えつつあるとの指摘も含めて、上記の慎重論にももっともな面があるように感じました。この点は、もちろん個別の域内国で状況が違うと見られますが、私自身もフォローしていきたいと思います。
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デジタル通貨で国際決済 日銀、米欧中銀が実験
共同通信
井上 哲也野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニア研究員
CBDCについては、国内かつリテールでの意義や展望には様々な異論がある一方で、クロスボーダーでの可能性についてはグローバルに見て比較的多くの支持があります。 クロスボーダーの決済には、FSB/CPMIが既に整理したように、コスト、時間、不透明性という3大要因が存在しており、既存のシステムの改善によって解決が図られていることは事実ですが、より迅速で持続性のある解決が求められているからです。 今回のプロジェクトに米国が参加したことを意外と受け止める向きもあるかもしれませんが、FRBや米国財務省もCBDC全体にネガティヴである訳ではないように思います。 何故なら、上記の課題は米国にとっても重要であるだけでなく、米国が関与しないところで国際標準が決まってしまうようだと、米国の金融サービスの競争力を損なうだけでなく、長い目で見て国際通貨の地位にも影響しかねないからです。 もちろん日本にとっても、クロスボーダー決済の将来像は、金融サービスだけでなく、事業法人のサプライチェーンにも影響しうる点で重要なイシューです。 現時点のBISの公表だけでは、どの程度「ハード」な共同実験を想定しているか不透明な面がありますが、今後の動向に注目する必要があります。
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