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中卒者、死亡率1.4倍 がん検診の低迷、喫煙が影響か
共同通信
高橋 義仁専修大学 商学部教授
かねて欧米では格差問題はより深刻化しています。例えば、米国では、大卒でない層の平均余命は2010年頃をピークに下降を辿っているということです。一方で収入や社会的な地位を得ている方は、健康を害するとそのベネフィットは一気に失われることを熟知していますから、使える収入をつかってさらに自分の健康に投資し、健康を可能な限りに維持する結果、ますます格差が開いています。 Anne Case and Angus Deaton, (2020)"Deaths of Despair and the Future of Capitalism" Princeton University Press https://press.princeton.edu/books/hardcover/9780691190785/deaths-of-despair-and-the-future-of-capitalism 新型コロナ流行期には、米国の調査では、新型ウイルス流行中には非大卒者の平均余命が一気に3.3年短くなり、大卒者との寿命の短縮が顕著に表れたとのことです。両者間にはワクチン接種率に大差があったため、ワクチン接種の有無の影響が大きいとされました。 もちろん学歴で寿命が規定されるわけではありません。しかし検診や喫煙や飲酒、薬物の摂取習慣の影響以外にも、過去の学びから得られた正しい知識、考え方、社会的地位、収入、コミュニティからの影響による健康に対する意識や総合的な行動習慣は、死亡率に影響していると思います。
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ジェットスター労組、3月29日からの「ストライキ」通告
弁護士ドットコムニュース|話題の出来事を弁護士が法的観点からわかりやすく解説するニュースコンテンツ
高橋 義仁専修大学 商学部教授
ジェットスター・ジャパンの株式の約1/3はJALが所有しており、JAL便とのコードシェアが行われているため、関連するJAL便にも影響が出ると思います。記事には今回のストライキは、ジェットスターの労働組合の委員長の同社解雇に対する反発とのことですが、事実なら問題とされます。ジェットスター・ジャパンの経営側は、労働組合側の説明に対する反論を公開する必要があるでしょう。 正当な手続きを踏んだストライキを含む労働運動は労働者が経営者に対応できうる保護された権利であり、経営者側が次のような行動を起こすことは、「不当労働行為」として厳しく禁止されています。 不当労働行為 (1) 不利益取り扱い:労働者が労働組合の組合員であることや、労働組合の正当な行為をしたことなどを理由に、その労働者を解雇したり、その他の不利益な取り扱いをしたりすること。 (2) 黄犬(おうけん)契約:労働者が労働組合に加入しないこと、もしくは労働組合から脱退することを雇用の条件にすること。 (3) 団体交渉の拒否 正当な理由がなく団体交渉を拒否すること。 (4) 支配介入・経費援助:労働組合の結成・運営に対する支配介入や経費援助。(最小限の広さの組合事務所の供与などは除く=介入により労働組合の活動に制限がかかるような圧力を防止する意図) 労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)は、民間企業には原則すべて認められていますが、自衛隊員、警察職員、海上保安庁職員、刑事施設職員には一切の権利が認められていません。国家・地方公務員の非現業職員職員には、団体行動権(ストライキ権)については認められていません。
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「紅こうじ」継続摂取の1人死亡 腎疾患、小林製薬が因果関係調査
共同通信
高橋 義仁専修大学 商学部教授
小林製薬製造・販売の紅麹菌を原料とした機能性表示食品は、医療用医薬品において国際的に遵守が定められている、研究開発におけるGLP(Good Laboratory Practice)、GCP(- Clinical -)、製造におけるGMP(- Manufacturing -)に準拠する必要がありません。また、医薬品であれば、医薬品との因果関係が否定できないすべての有害事象は規制当局や販売企業に報告される仕組み「市販後調査(PMS)がありますが、食品にはそれがないため、例えば、食べてすぐに集団食中毒が発生したなどのケースなど、因果関係が極めて明確なケース以外は、問題が発覚しにくいという基本的な背景があります。 医薬品では副作用は避けられないものとして制度設計されているため、問題は短時間に発覚しやすく、健康を害した方に対する対応も可能ですし、因果関係の調査もほぼリアルタイムに行うことができます。その上で、第三者による詳細な臨床医学調査によって、有害事象と原因物質の因果関係なしと判断されるケースは、実際には少なくありません。 また、(一般用も含む)医薬品の場合は、主に製薬企業が資金を拠出してつくられている「医薬品副作用被害救済制度」という制度があり、医薬品を適正に使用したにもかかわらず、入院治療が必要な程度の副作用が生じた場合に、医療費や障害年金などの健康被害について救済給付が行われます。これは、副作用は完全には防げないという前提に立つと、製薬企業や処方した医師には責任はないものの、被害者は困窮するために作られた制度です。 以上のような医薬品に対する仕組みに対し、今回のサプリメントは食品のため、これらの問題を見つけやすくする、または問題が発見された場合に対処する制度は適用されていません。今回の死亡例とサプリメントの因果関係の証明は、死亡後の時間も経過しているので、遺族側が立証するには相当な困難が伴うと思われます。(小林製薬は調査するとしています) 少量で体に良い作用があるものは、悪い作用も起こしやすいという原則は理解すべきです。少量で健康に好影響を及ぼすと宣伝されている食品の使用に対し、消費者は細心の注意を払う必要があります。サプリメントを食品として扱い、規制下に置かないことができる現状については、今後行政は改善を求めるでしょう。
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怪しい脱毛サロンは何が不自然?破産・返金ナシ「銀座カラーの悪夢」がまた起こる理由
ビジネス+IT
高橋 義仁専修大学 商学部教授
永久会員としての会費をおさめた以降に、期限を定めずに無料や格安でサービスが提供されるサービスは、後に高確率で次のいずれかのケースを辿ります。 (1) サービスが継続できないことを理由に永久会員を廃止する。この場合は、契約内容にそれらしいことが書かれています。 (2) サービスが非常に使いにくくまともに使えない。または、事後的にサービスを受ける条件を改悪する。この場合は、会員側の当初の目的が外れますし、やはり契約内容にそれらしいことが書かれています。 (3) サービスを持続することが採算的に成立しない。この場合は、企業倒産します。 (3)のケースに関してですが、株式会社の基本ルールは「会社法」で規定されます。企業の財産と私有財産は分離されることが基本で、企業が倒産した場合、経営者や株主が私有財産をもって債務を支払う必要がないことが明記されています(資本と経営の分離および有限責任制)。 経営が窮地に陥っている企業は、銀行等からの融資による資金調達は、すでに難しくなっています。何もしないとすぐにでも倒産してしまうため、資金集めの為に、一か八かの可能性をかけて、極めて魅力的に見える永久会員や長期にサービスを受けられる会員権を発行し、延命を図るわけです。しかし、もともとうまくいっていないのに、さらに低収益のサービスを提供してうまくいく可能性はほとんどありません。また、いずれ倒産しても経営者の懐の痛み具合は変わりません。 永久会員や長期サービスは、企業への投資や融資と同様の意味を持つと考えるべきです。百貨店等への積み立てサービスなど、一部の資金を企業の会計と切り離して管理しているところについては、問題が起きた場合の「全損」は避けられるものの、財産は大きく目減りしますから、基本的に例外ではありません。 近々倒産しそうかは、財務諸表に現れます。遠い将来の見通しは、財務諸表だけではわからないことが多く、経営戦略を分析するための総合的なリテラシーが必要になりますが、基本を押さえれば大体のことは外れません。 ビジネス、金融、法を理解させるための教育は大切です。しかし日本では、最近まで、お金儲けに関することは、必要な教育対象とは考えられておらず、したがって高校以前では教えず、大学でも専攻しないと学べないという残念な状態です。(最近は少しだけその重要性が言われだしています)
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「紅こうじ」サプリ入院26人に 小林製薬、健康被害拡大
共同通信
高橋 義仁専修大学 商学部教授
本件は、いわゆる「薬害」ではなく、「食品へのきわめて不適な異物混入による健康被害」の扱いです。また、医療用向けのすべての製薬企業に義務付けられている「市販後の安全性モニタリング」機能が、当該企業には備わっていないことがわかります。対象が食品ということで、この点を食品企業に求めることはできないことが、結果的に被害拡大につながっていると思います。 企業は、3月22日の記者会見で、「原因は未知の物質によるものの可能性があり、特定できておらず、製造ラインでの異物混入の可能性も否定しない」と発表していました。問題の原因が判明し、特定の製造ロットであれば対象範囲は限定されますし、仮に当該食品で毒性を示す原因物質が自然由来で、混入が避けられない物質だとするならば、品質基準を設け、設定閾値を超えた場合だけを回収対象にすることも可能です。 なお、問題が疑われる製造ロットについては、3月25日付で第2報として企業から報告がありました。 https://www.kobayashi.co.jp/newsrelease/2024/20240325/ 日本では、サプリメントは食品のカテゴリーで販売できます。これを企業は「動物実験や臨床試験(今回の場合は特に毒性試験)」を行わずに済むメリットと考える傾向があります。サプリメントは、「医薬品のような有用性の証明はされていないながらも、医薬品のような作用を期待されている」ものですから、製造上の問題も含め、一般の食品よりはリスクが高い物質と言えるでしょう。 毒性試験が実施されていれば、今回のような事故は防げた可能性があります。ただ、他の食品カテゴリーのサプリメントも同様、毒性試験はほぼ行われていないはずですから、小林製薬は運が悪かったということにもなります。おそらく、今後は、医薬品と比べれば簡易な方法ながら、サプリメント全体に対し、何らかの規制がかけられると思います。 なお、原料の供給先を小林製薬として明かすことは契約上行えない一方、原料を購入して最終製品を製造した企業側の食品衛生法上の責任であり、最終製品の販売企業が販売停止・回収する責任を負います。早急に原因を解明しないと、すべての可能性(危険性)に対し、関連するすべての企業が食品衛生法上の対応を迫られますから、消費者重視および経営上の危機管理として、原因の特定を急ぐ必要があります。
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小林製薬株、ストップ安 製品自主回収で売り殺到
共同通信
高橋 義仁専修大学 商学部教授
企業は、3月22日の記者会見で、「原因は未知の物質によるものの可能性があり、特定もできておらず、自社サプリの製造ラインで異物が混入した可能性も否定しない」と発表していました。ここに原料として供給した企業に対する配慮する意図があったのであれば残念な考え方で、このケースでは株価はむしろ悲観的に反応します。 問題の原因が判明し、特定の製造ロットであれば対象範囲は限定されますし、仮に当該食品で毒性を示す原因物質が自然由来で、混入が避けられない物質だとするならば、品質基準を設け、設定閾値を超えた場合だけを回収対象にすることも可能です。 なお、問題が疑われる製造ロットについては、3月25日付で第2法として企業報告がありました。 https://www.kobayashi.co.jp/newsrelease/2024/20240325/ 日本では、サプリメントは食品のカテゴリーで販売できます。これを企業は「動物実験や臨床試験(今回の場合は特に毒性試験)」を行わずに済むメリットと考える傾向があります。私が意見を求められるある種の「事業化プロジェクト」などでも「食品で出したい」との声がよく聞かれます。 サプリメントが、「医薬品のような有用性の証明はされていないながらも、医薬品のような作用を期待されている」ものですから、製造上の問題も含め、一般の食品よりはリスクが高い物質と言えるでしょう。 結果論ですが、しっかりした毒性試験が実施されていれば、今回のような事故は防げた可能性があります。ただ、他の食品カテゴリーのサプリメントも同様に毒性試験はほぼ行われていないはずですから、その意味からは、小林製薬は運が悪かったということにもなります。おそらく、今後は、医薬品と比べれば簡易な方法ながら、サプリメント全体に対し、何らかの規制がかけられると思います。 なお、原料の供給先を小林製薬として明かすことは契約上の理由から行えず、その原料を購入して最終製品を製造した企業側が果たすべき食品衛生法上の責任ですから、引き続き危険性が排除できないなら、最終製品の販売企業が販売停止・回収する責任を負います。 早急に原因を解明しないと、すべての可能性(危険性)に対し、関連するすべての企業が食品衛生法上の対応を迫られますから、消費者重視および経営上の危機管理として、原因の特定を急ぐ必要があります。
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小林製薬株、売り注文殺到 東証、午前は取引成立せず
共同通信
高橋 義仁専修大学 商学部教授
一般論としてですが、株式は人の心理も反映してしまうので、先が見えない状態では、想定されるワーストケースをベースラインとして、悲観が勝ってしまうために実態より低く見積もられてしまいがちだと思います。 企業は「健康被害は事実として起きているが、原因は特定しておらず、未知の物質の可能性があり、製造ラインでの異物混入の可能性も否定しない」としています。この場合のワーストケースは、原料のすべての供給先の使用停止・製品回収。小林製薬で問題が発生した商品の製造ラインで製造したすべての商品の使用停止・製品回収を、企業の責任として速やかに行う必要があります。 問題の原因が判明し、特定の製造ロットであれば対象範囲は限定されますし、仮に当該食品で毒性を示す原因物質が自然由来で、混入が避けられない物質だとするならば、品質基準を設け、設定閾値を超えた場合だけを回収対象にすることも可能です。 食品だからということで、日本ではサプリメントは動物実験や臨床試験(今回の場合は特に急性毒性試験)の実施義務が省略されているようですが、これが実施されていれば、今回のような事故は防げた可能性があります。ただ、適正な試験は他の企業でもほぼ行われていないはずですから、小林製薬は運が悪かったということにもなります。おそらく、今後は、医薬品と比べれば簡易な方法ながら、サプリメント全体に対し、何らかの規制がかけられると思います。 なお、紅麹菌由来の食品原料の不具合が原因とする説も否定されていませんが、原料の供給先を小林製薬として明かすことは、契約上の理由からも行えないと思います。あくまで、その原料を購入して最終製品を製造した企業側の食品衛生法上の責任ですから、危険性が排除できないなら、最終製品の販売企業が販売停止・回収する責任を負います。 いずれにせよ、早急に原因を解明しないと、すべての可能性(危険性)に対し、関連するすべての企業が食品衛生法上の対応を迫られますから、消費者重視および経営上の危機管理として、原因の特定を急ぐ必要があります。
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薬の不足状況、随時公表へ 厚労省HPで、4月から
共同通信
高橋 義仁専修大学 商学部教授
製薬企業は、医薬品の認可に付随して安定供給の義務を課されています。しかしながら、品質に問題が発生したり、企業が勝手に製造手順を変えていた(製造承認要件逸脱)場合は、これまで製造した分を含め廃棄せざるを得なくなります。発覚すれば企業側が自主的に対応することがほとんどですが、実害が大きかったり、恒常的な製造手順違反などでは、行政が業務停止を命令します。その場合は、製造できない期間が長期に及びます。原料調達に問題が発生する場合もあります。これらは製造企業に起因する問題です。 また、製造販売認可を受けた医薬品は、日本では政府が価格(薬価)を決めます。さらに、毎年の薬価改定で医薬品の価格見直され、価格を下げられることが多いため、薬価の長期収載品に関しては採算性に重大が問題が発生することや、企業としては価格が高い海外で欠品を起こした場合の経営への影響が大きいことから、製造ノルマ的扱い分を超える分の製造を避けたり、海外向け販売分を優先する結果、国内分の医薬品供給が遅れがちになります。これらの問題の本質は政策に起因するものであり、企業の責任にしてしまうと解決を遅らせると思います。 いずれのケースでの欠品見込みにせよ、企業が状況を把握した場合は、まずは厚生労働省に事前に届け出て、医療機関ごとの過去の実績に基づいた配分計画も提出します。一方、このリストは医療機関には出しません。このようなリストを出すと、企業は各医療機関から個別に「要求」を受けるためで、「要求」に応えると、今度は他の医療機関への影響がより大きくなるためです。また、欠品の見込みに関する情報を出すと、医療機関から買いだめ、買い占めが発生し、特定の医療機関への過剰在庫が起き、欠品に拍車がかかる(全体最適にならない)からです。この方針は行政の求めでもあります。 企業は品薄情報をほぼリアルタイムに行政に届けていますが、行政当局から医療機関には出されていなかったのが実情で、医療機関が把握するためには毎回企業に問い合わせなくてはなりません。以前は、欠品を起こす医薬品は例外的でしたが、今や欠品が当たり前の状況になっているため、厚生労働省はまとめて公表することにしたという理解です。
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小林製薬、「紅麹」50社に供給=生産の8割、自主回収相次ぐ
時事通信社
高橋 義仁専修大学 商学部教授
小林製薬が販売する紅麹菌由来機能性表示食品(サプリメント)によるものとみられる健康被害が発生していることが事実としてあり、「原因物質は突き止められていない」と企業が発表しているため、発生の可能性があるものすべてに対する予防措置が必要になります。 食品衛生に関する法律には、以下の定めがあります。 販売の禁止:次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない(食品衛生法6条)。有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの。ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない(同6条の2)。 原因の除去:食品等事業者は、販売食品等に起因する食品衛生上の危害の発生を防止するため、前項に規定する記録の国、都道府県等への提供、食品衛生上の危害の原因となつた販売食品等の廃棄その他の必要な措置を適確かつ迅速に講ずるよう努めなければならない(同3条の3)。 それでも食品衛生法には、「発生予防のために講じられる規制」がほとんどなく、手間の少ない製造が可能になります。しかし問題が発生した場合には、製造責任企業としての対応義務があります。 医薬品では発生予防のための規制は厳しく、「GMP」(Good Manufacturing Practice:医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準)を遵守しないと製造できません。GMP管理下では、意図しない事故を防ぐために、製法監査後の特定原料の変更や製造手順の変更(効率的な製造方法への変更)は許されません。一方、サプリメントは食品製造のルールで製造できます。 日本で販売されている他の健康補助食品(サプリメント)も同様です。日本で「医薬品のような効果を期待して販売されている食品」が非常に増えている現状から、今後は健康補助食品の製造については、より強い規制下に置かれることになると思います。 小林製薬は、外部からの異物混入も否定していません。医薬品の場合は、その場合は同一製造ラインで製造された商品のすべてを回収します。原因未究明のまま自主回収しない場合、行政から指示を受ける可能性があります。
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小林製薬、遅かった自主回収の判断 積み上げた信頼に傷 工場管理に落とし穴も
産経ニュース
高橋 義仁専修大学 商学部教授
今回は食品での健康被害であり、医薬品でのそれとは異なります。医薬品等の場合は、薬事法で、「医薬品、医薬部外品、化粧品若しくは医療機器の製造販売業者又は外国特例承認取得者は、その製造販売をし、又は承認を受けた医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器について、当該品目の副作用その他の事由によるものと疑われる疾病、障害又は死亡の発生、当該品目の使用によるものと疑われる感染症の発生その他の医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の有効性及び安全性に関する事項で厚生労働省令で定めるものを知つたときは、その旨を厚生労働省令で定めるところにより厚生労働大臣に報告しなければならない」(第77条の4の2)と定められています。 具体的には、企業が医療機関等から収集した医薬品・医療機器の「副作用・感染症・不具合情報、研究報告、外国での措置」に関する情報等を厚生労働省に報告する ことが義務付けられ、医師、歯科医師、薬剤師等の医薬関係者は、医薬品、医療機器等 の副作用等について、厚生労働省や製薬企業に報告をしなければなりません。 期間も厳密に定められており、今回のような、発生傾向が使用上の注意等から予測できない重篤な副作用が疑われるケースでは、15日以内に電子的な方法で報告することが義務付けられています。製薬企業は通常MR(医薬情報担当者)という職務を設置しており、一般にここが窓口の役割となり、報告の迅速化に関与します。製薬企業は、その時点で厚生労働省と連携を取りながら、必要な場合には商品の流通をまずは自主的に止め、注意喚起します。なお、副作用の発生は完全には避けられないものであり、企業に瑕疵がある場合を除き、企業やそれを処方した医師の責任は問われません。 今回問題になっている(機能性表示)食品の場合は、上記のようなルールが定められていません。一部の健康食品の場合は副作用の頻度が比較的高いため、期間を定めず報告義務が課されていますが、それ以外のもの(今回の食品を含む)は基本的に「食品」として、食品衛生法の範囲での対応が求められるのみですから、これがメーカーの対応の緩慢さにつながっていると思います。 (関連コメント)「紅こうじサプリで腎疾患6人入院 小林製薬、想定と異なる成分か」(共同通信 2024年3月22日) https://newspicks.com/news/9748891/
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アスリート盗撮は「性暴力」。福岡県議会が条例改正案可決。高校女子選手の代理人「やましい気持ちなければ盗撮しない」
ハフポスト日本版
高橋 義仁専修大学 商学部教授
福岡県議会は、条例を定める立法機関です。条例に矛盾や誤解を招く表現は避けるべきだと思います(でも、もう可決したのですね)。矛盾を含んだ条例は恣意的な運用を可能にし、冤罪が生まれる原因になります。それに対して「性的な意図を持って同意なく、正当な理由なく撮影する」行為すべてが「性暴力」という表現は行きすぎだと思いますし、「性的な意図」を客観的に判断する指標も書かれていません。すべての撮影が「性暴力」なら、保護者による撮影も性暴力になるかもしれません。 記事が言いたいことはわかりますが、主観を伴った判断を避ける必要から、単に「ここは施設管理者の管理下であるから、その方針により無許可撮影禁止」とし、例外を認めない運用にすれば解決するはずの話だと思います。 なお、無許可かつ撮影をしている姿を隠した撮影は「盗撮」と定義され、「盗撮」は軽犯罪法や各地方自治体の 迷惑防止条例により禁止され、取り締りの対象となっていますが、その表現での運用だとなぜ不十分なのかが、よくわかりません。 さらにですが、仮に他人に同意を取らない写真がすべて「性暴力」と定義するなら、旅行における公共の場でのスナップ(背景に人が映る場合)、報道記者の業務、防犯カメラの撮影はすべて「性暴力」になります。もちろんそれらを公開する場合は、肖像権侵害の問題から「被写体の同意」は必要ですが、公共の場におけるスナップ撮影が(性暴力との表現を用いて)全面的に禁止というルールは存じ上げません。
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紅こうじサプリで腎疾患6人入院 小林製薬、想定と異なる成分か
共同通信
高橋 義仁専修大学 商学部教授
紅麹は、麹菌の一種です。麹菌は、みそ、しょうゆ、日本酒、焼酎、老酒などを製造する際の発酵に用いられます。紅麹については赤色発色を伴う発酵を起こします。紅麹には「モナコリンK」というコレステロールを抑制する可能性があるとされる成分が含まれていますが、今回のような「機能性表示食品」や「特定保健用食品」、「栄養機能食品」の場合、その商品での薬効レベルの効果は実証されたものでないことについて、まず知っておく必要があります。(医薬品のように効果がはっきりしたものではないという意味です) 紅麹菌には、「シトリニン」という腎臓障害を引き起こす毒性が強い物質を産生するものがあることが以前から知られています。「シトリニン」は、市販の紅麹米などの穀物やチーズ、日本酒、赤色色素から発見されています。ヒトや家畜で腎臓毒として作用する物質です。 今回のケースで指摘されているわけではありませんが、今回の商品での重篤な腎障害が発生してる原因は、同一原料に含まれるこの物質(「シトリニン」)またはその類似物質の可能性はいまだ否定できないと思います(メーカーはいまのところ未検出としています)。発酵に使う麹菌の種類により「シトリニン」などの様々な物質の産生量には大差があることが知られるため、麹菌で発酵商品を作る際には、起源・系統のはっきりした菌種を使う必要があり、製造過程における慎重な品質管理も必要だったはずです。 医薬品の品質基準であれば当然に慎重に管理し、臨床試験にも最低数年間の時間をかけ、有効性と安全性を確かめますが、機能性表示食品ではそのような非常にコストがかかるようなことはされていないと思います。 機能性表示食品などの食品やサプリメントは、もともとの効果が医薬品よりマイルドであることにより、医薬品のカテゴリーでの販売を外して販売されたものであり、安全性の検証は医薬品のレベルに全く及ばないことは知っておいた方がよいでしょう。また、食品と言えども運が悪いと今回のように重大な健康被害が発生することがあることも知っておくべきだと思います。
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「頭ポンポン」はなぜセクハラなのか「在職中に99件」ハラスメントの限りを尽くした町長が示した生きた教材
PRESIDENT Online
東京五輪談合、博報堂に罰金2億円求刑 企業側へは初 東京地裁
毎日新聞
高橋 義仁専修大学 商学部教授
企業は経済的目的をもった組織体、社会の制度であるため、基本的に最大利潤を上げることを目的にしています。その目的達成のために企業内の仕組みが作り上げられてしまっています。例えば、ノルマの達成は賞与、昇給、昇進、昇格など、基本的にすべての「社内評価」と関連付けられる仕組みを企業は有しています。これが動機付けとなり、従業員は企業が求める行動をとろうとします。会社の為に貢献したいということもあると思いますが、それよりも、企業内で好待遇を受けたいという動機が「頑張りの本質」でしょう。企業はこれを十分理解しており、インセンティブを設定しているものと理解しています。 ほとんどの企業倫理の破綻のケースは、企業が従業員に「犯罪行為」の指示を与えて起こってはおらず、むしろ最大利潤獲得を追及するよう、従業員が自発的に「頑張る」結果、談合、贈収賄、独占、公害、欠陥商品、その他不公正な取引などの「倫理的問題」がつくり出されています。企業は見て見ぬふりをし、結果、企業に利潤が転がり込む仕組みになっています。 社会一般の事象に対して、多くの人は倫理体系から逸脱することに抵抗感を有しています。しかし、企業倫理の逸脱に関しては、抵抗感が麻痺しがちです。特にオリンピックなどに関連する政府や地方政府の公共事業においては、判断までの時間が少ないことによる政府の判断能力の低下(事業費積算の甘さにつながる)や、高収益を獲得しやすいと企業側が認識することによる誘因、政府の推進という錦の御旗による企業倫理体系への判断能力の欠如が重なるため、企業倫理の逸脱が非常に起こりやすい環境が生まれます。 しかし、談合という犯罪行為が明らかになると、その責任は個人に帰属することになり、企業によりその社員の処分が行われます。個人としては、このような犯罪に手を染めることは割に合わないのですが、それだけでは企業に対する抑止力は不十分です。社員の犯罪行為を前提とする企業の収益に対しては、極めて莫大な「懲罰的制裁金」をかけるなどの方法で抑止することが必要でしょう。その意味では、企業に対する2億円程度の罰金では、企業に対する抑止力としては全く不十分です。その100倍程度の罰金の基準を設けないと十分な抑止効果は期待できないと思います。
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