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製薬協会長「ドラッグラグの兆し」 欧米薬国内投入遅れ
田中 真吾独立系臨床薬理コンサルタント Clinical Pharmacologist
製薬協会長記者会見の元資料になった調査結果はこちらです。
https://www.jpma.or.jp/news_room/newsletter/205/05pc-01.html
文脈としてはいつもの通りで、日本でドラッグラグが拡大し続けるのは日本での薬価が諸外国と比較して低いからであり、低薬価政策を見直せというものです。
しかしドラッグラグの原因について見逃せないのは、新薬の開発領域の変化と開発プレイヤーの変化です。新薬の開発領域は患者の少ない難病領域にシフトしており、またその開発主体が海外バイオテックに移りつつあり、当該バイオテックに日本の拠点がないことが大きな要因になっています。以下のnoteに詳しく考察しました。
https://note.com/_stapcdm/n/n6ec7f812f5d5
製薬協所属の企業にできることは薬価政策に対するロビイングだけではなく、日本での開発主体がいない新薬をもっと積極的にライセンスインすることなのではないでしょうか。今の新薬は対象患者が少ない希少疾患領域のものが多く儲かりにくいからこそ手を出していないのでしょうが、そういった新薬を日本国民に届けるために製薬業界としてできる努力はロビイングだけですか?
創薬力強化へ新興育成 初期治験に補助金
田中 真吾独立系臨床薬理コンサルタント Clinical Pharmacologist
金がない
というのは確かにずっと言われてきたことで、昔Bio Japanで某VCと話したときも、臨床試験を支えられるだけの投資はうちだけではできないから大手製薬会社の協力が必要、とか言われたのを思い出した。
たただ私がもう一つ強調しておきたいのは、
人材もいない
ということだ。日本から山のようにベンチャーシーズを出したいのであれば、それこそシーズを生み出せる研究者には山のようにベンチャーを起こしてもらわねばならないが、研究者にベンチャー創業を担える人材がかなり少ない。
そしてベンチャーはできても、しっかりした臨床開発計画を組めないと結局金を持ってこれない、持ってこれてもドブに捨てることになってしまう。
金は用意できてもどのように投資先を創出していくのか、投資の成功率を上げるためにはどのような方策を取るのか。これらを同時に考えなくてはいけない。
同時に実現できなかったからこそ、今ここにお金はないわけなので。
「世界一高い薬」売るノバルティス、高まらぬ開発効率
田中 真吾独立系臨床薬理コンサルタント Clinical Pharmacologist
ノバルティスやファイザーなど、現在メガファーマと呼ばれるような製薬会社と、ギリアドのような大当たりした新興バイオ企業、中外製薬のようなシード提供型のバイオ企業をひとつのテーブルで並べて評価するのは意味不明である。それぞれが全く異なるビジネスモデルで動いている企業であり、製薬会社というカテゴリーでくくることに意味はない。
ノバルティス、ファイザーは商社型のメガファーマで、どちらかというと薄利多売なビジネスモデルだと言える。武田薬品はビジネスモデルが近く、実際ノバルティスと武田は開発効率はほとんど同じである。もちろん効率は上げたいところではあるが、それほど高い効率が期待できないビジネスモデルであることも留意すべきではないか。
ギリアドは大当たりしたバイオ企業で、大当たりした企業の開発効率は当然高いが、同じビジネスモデルの会社のほとんどは開発効率がマイナス、つまり売り上げが研究開発費を下回っている、になっていると予想される。ギリアドは例外中の例外。中外製薬はメガファーマ群をお客さんとするビジネスモデルで、自社の基盤技術でシードを生み出しメガファーマにライセンスを売るもの。バイオベンチャーと同じで中外のようなうまくいっている会社なら効率は高いが、うまくいっていない会社も多数あるように思う。
医薬敗戦、バイオ出遅れ 21年の貿易赤字3兆円へ
田中 真吾独立系臨床薬理コンサルタント Clinical Pharmacologist
ちょっとトリッキーな印象を与える記事。貿易額の話なので、生産拠点が日本にあれば、海外発の医薬品でも黒字要因になる(AZのワクチンのアジア各国への提供など)。
医薬品市場における貿易赤字の拡大をもって「敗戦」というレッテルを貼るのはさすがにいかがなものか。医薬品生産はグローバル化しており、運搬コストも自動車のようなものと比較すると桁違いに低いので、そもそも生産拠点を各国に幾つも持つようなものではない。貿易黒字を達成するには、生産拠点の誘致が必要である。
とはいえ、海外発の医薬品の割合が大半になったというのは紛れもない事実ではあろう。データを見てわかるように、貿易額の合計値そのものが以前と比べて全く違う。日本の製薬産業が敗戦したというよりは、医薬品市場のグローバル化により海外の医薬品にアクセスするハードルが低くなった(海外の製薬企業が日本に進出しやすくなった)というだけで、日本の製薬企業の世界における影響力は特段変化しているわけではないように思える。
ただ確かに、医薬品開発に新しい技術を取り入れる力は、日本の弱みであるように思う。日本の製薬産業のバイオ医薬への取り組みが遅れていることは私が学生の頃が言われていたことだが、そもそも私が薬学部の学生だったころ、薬学部での創薬の意味合いは化学合成であり、アカデミアも新しい潮流についていけていなかったように思う。
なお日本はバイオ新薬だけでなくバイオ後続品(バイオシミラー)の分野でも遅れをとっている。抗体医薬はもはや過去の技術で後発品が参入している分野だが、バイオ後続品では韓国・中国企業が世界で存在感を発揮し、日本企業はローカルなプレーヤーでしかない。
さあどうするのか。
「バイアグラ」がアルツハイマー病発症リスクを70%低下させる可能性がある - ナゾロジー
田中 真吾独立系臨床薬理コンサルタント Clinical Pharmacologist
マジレスします。アルツハイマー予防を適応としてシルデナフィルが開発され申請承認に至ることはないと思います。
このデータをもって承認申請には至りませんが、企業がシルデナフィルのリポジショニング候補としてアルツハイマー予防適応の開発を考えること自体はあり得ると思います。アンメットニーズがあり、かつマーケットサイズが大きいので、考えることは考えるでしょう。
しかし開発計画を立案する時点で頓挫します。特に男性に投与する場合、シルデナフィルの「本来の薬効」はアルツハイマー薬としては有害事象になりますので、「バイアグラ」としてのシルデナフィルをアルツハイマー予防のために毎日飲み続ける、というのはおそらく困難です。飲んだら薬効が出てしまうので、プラセボ対照二重盲検試験は科学的にその盲検性に疑いが出ます。
では「本来の薬効」がでない程度に用量を下げようとなると、その用量ではアルツハイマー予防効果が出るという期待は低くなります。また開発の観点では用量設定は何を根拠に行えばよいのかという話になります。アルツハイマー予防のメカニズムがよくわかっていないとなると、もうこの時点で頓挫します。仮に脳内の血流が増加することがメカニズムの候補だったとして、どれくらい血流を増加させればいいのかが結局わかりません。減量した用量で巨大第三相アウトカムスタディに投資をするのはいくらなんでもギャンブル過ぎます。
というわけで、誰も開発にチャレンジしてくれないので、薬事承認されることがないというわけです。結局結論は出ませんので、信じるかどうかはあなた次第です、の世界です。
「ドラッグ・ラグ」に懸念=薬価下げで日本回避―製薬協会長
田中 真吾独立系臨床薬理コンサルタント Clinical Pharmacologist
製薬会社のポジショントークはそれはそれとして受け取っておきましょう。日本で薬価が上がることによって潤うのは誰なのか、ということです。
ドラッグラグ拡大のメカニズムについては、以下のnoteに詳細を記しました。
https://note.com/_stapcdm/n/n6ec7f812f5d5
日本への参入障壁として、薬価が低いこと以外に挙げなくていけないのは、日本における開発コストが高すぎることです。海外バイオテックが日本に参入する際には、その初期投資が必要なのです。
その日本における追加コストとは、日本におけるガラパゴス薬事規制による追加臨床試験と、日本の薬事規制に対応するための日本法人の維持費です。
国産第1号と期待のワクチン、最終段階の治験を断念…大阪の新興企業アンジェス
田中 真吾独立系臨床薬理コンサルタント Clinical Pharmacologist
アンジェス(笑)みたいな投稿は何にもならないので控えるとして、一般的にこういう失敗がある程度発生してしまうことは仕方がないこととして受け入れるべきなんだと思います。
アンジェスのような小さなベンチャーだから投資する価値がないということにはなりません。モデルナやノババックスだってコロナワクチンをやるまでは(笑)のような会社だったわけで、きっと世界にはアンジェスのような立場でワクチン開発に挑んで失敗した会社は山ほどあったでしょう。
日本の科学技術力という観点で問題を敢えて挙げるな候補品が少ないことと開発スピードが圧倒的に遅いことだと思いますが、中国ですら、とか、ロシアですら、とか書かれてますが、私は日本の科学技術力相応の状況だと思います。
なお残るドラッグラグ 「命の声」届ける
田中 真吾独立系臨床薬理コンサルタント Clinical Pharmacologist
ドラッグラグの文脈において「なお残る」という表現はあまり適切ではない。かつてのドラッグラグと現代のドラッグラグは、様相が異なっている。
ドラッグラグが問題になったのは10年以上前のことで、その頃問題になっていたのは日本における医薬品の承認審査の長さだった。現在、日本における承認審査期間は欧米に引けを取らず、むしろ早いくらいかもしれない。
今のドラッグラグはかつてのドラッグラグとは異なり、日本で医薬品が開発されてないことにある。過去5年で米国で承認された医薬品のうち半分程度しか日本では承認されていないようだが、日本において承認されていないというより、開発されていないという要因が大きい。
かつてであれば、厚生労働省に早期承認要望を出せば、承認審査を加速する対応もあり得たかもしれない。しかし現在は、そもそも承認申請が製薬会社側から行われていないので、せいぜい厚生労働省は早期開発要望を製薬会社側に出すぐらいしかできないが、製薬会社は外資で、日本に支社がない会社の可能性が高い。
どうすれば現代のドラッグラグは解決できるのか?この問題は真剣に考えられているのだろうか?
塩野義、ワクチン「3000万人分」量産へ…治療薬の治験も
田中 真吾独立系臨床薬理コンサルタント Clinical Pharmacologist
これ、ちょっとよくわからないんですけど、今年中にワクチンを3000万人分供給する気満々アピールは、政治に向けてプレッシャーをかけているということですかね?
このワクチンは現在国内で第1/2相治験を実施している、という話だったと思いますが、今年中に供給ということは、今年中に製造販売承認を得るという話であり、承認のためのデータはこの国内第1/2相治験データのみってことになります。塩野義製薬は条件付き承認という枠組みを使うことを政治に対して仕切りにアピールしていますが、ワクチンの有効性や安全性を十分なデータ量で評価できる第3相治験の実施していない「怪しい」国産ワクチンを流通させる愚策を、少なくとも今年分は質の高い海外製ワクチンが確保できている状況下で国策として積極的に推し進める理由なんてあるでしょうか?
もちろん、来年以降のために選択肢を増やすことは否定しませんが、他のワクチンがきちんと第3相治験まで実施している中で、このワクチンだけ第1/2相治験のデータだけで選択肢に上がろうとしているその発想自体が少なくとも科学的には「?」であり、政治や世論に対して無用な危機感を煽り条件付き承認を迫るビジネスセンスは製薬企業としてどうなのかな、と思います。
これだけワクチンの選択肢が多様になってきた中で第3相治験の実施自体が困難になってきていること自体は理解できますが、それは御社のワクチン開発のスピードの問題であり、そこに出遅れたことをそれを棚に上げて「国産ワクチンの必要性」ばかり都合よく振りかざすのはどうなんでしょう。海外ワクチンの国内販売ライセンスを得た上で、しっかり国内生産体制を整えている他の企業の方が、よほど日本国民のことを考えてくれているのではないでしょうか?
年内にも国内承認の可否判断 認知症新薬で厚労省
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