[東京 18日 ロイター] - 三菱電機<6503.T>の柵山正樹社長は18日の経営戦略説明会で、2020年度までの売上高目標5兆円以上について「オンラインできている」と述べ、目標達成に向けて順調に推移しているとの認識を示した。

稼ぎ頭の産業メカトロニクスの今期の見通しに関しては「中国におけるファクトリーオートメーション(FA)が従来はスマートフォン(スマホ)関係の産業向けに非常に大きな需要があったが、下期以降の状況が不透明だ」と述べ、「若干リスクを見ている」としたほか、自動車機器についても「足元は非常に好調に推移しているが、若干減速することもあると見て堅めの予想にしている」と説明、両事業とも保守的に見積もっていることを明らかにした。

今期の産業メカトロニクスの業績予想は、売上高が前年比1%増の1兆3000億円、営業利益は同4%増の1520億円と、それぞれ前年の17%増、49%増から成長スピードが鈍化する見通しとなっている。

同社は2020年度までに営業利益率8%以上の目標を掲げており、部門別にも利益率目標を設定している。柵山社長は「目標は1ドル95円の時代に設定したもので、現在のようなレートが続くのであれば、(部門ごとの)社内での目標設定は少なくとも見直していきたい」と語った。

現在は家庭電器が6%以上、電子デバイスが7%以上、情報通信システムが5%以上、産業メカトロニクスが13%以上、重電システムが8%以上の目標となっている。

製造業をめぐっては、ドイツが次世代製造業の姿を「インダストリー4.0」と呼び、官民を挙げて標準化などに向けた動きを強める中で、日本は国としての取り組みが遅れているとの指摘も聞かれる。柵山社長は「欧州での標準化が日本やアジアの産業を強くしばり、われわれが入りにくい状況ができるのが一番まずい」と指摘。「欧州の標準化に参画する動きも並行してとりながら、日本を中心とした規格を立てるのであれば、そこもしっかりと参画していきたい」と語った。

足元ではアベノミクスによる円安などの影響もあり、過去最高益を稼ぐ輸出企業も少なくない。三菱電機もその1社だ。ただ柵山社長は「順風満帆という雰囲気が社内に漂うのが一番まずい」と強調。「世界的な景気のリセッションは何年かに1回は来る可能性があり、それに対する備えをしっかり行うことが重要だ」と述べ、慎重にかじ取りしていく姿勢を鮮明にさせた。

同社は、景気変動の影響を短期的に受けやすい分野として、産業メカトロニクス、電子デバイス、家庭電器の3事業を、景気変動の影響があらわれにくい分野として、重電システムと情報通信システムの2事業を挙げ、それぞれ違った視点で事業強化に取り組んでいる。

柵山社長は株主還元について「配当は従来よりも手厚い方向にしていきたい」との意向を示す一方で、自社株買いに関しては「株主資本利益率(ROE)を上げていくときに分母を減らすのではなく、分子を上げていく取り組みをしていきたいと思っており、自社株買いよりも投資に回していきたい」と否定的な考えを示した。

(志田義寧)