ニュースアプリは本当に価値ある情報を流せているか - ネットジャーナリズムの光と影奥村倫弘
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注目のコメント
ニュースピックスのピッカーの仕組みはかなりベターな仕組みと思うけど、たぶん有料会員制でしか成り立たない。あとはantennaのようなブランド選別化か。他のはPV重視でしかありえない
とても考えさせられる問題提起だし、Picksの変化の歴史とも重なる。まず、価値がユーザーの行動によってのみ判断すべきかという部分に関して、サービス初期はその思想だった。なのでタイムラインしか最初はなく、誰をフォローしフォローした人がPickした記事でソートされた。
その後で、全体のユーザーの行動によって何が注目されているかというのも観点としてあり、Top20(現在の総合トップ)ができたが、これは本当にPick数だけのランキング。しかし、キャリアや面白ネタだけになり、ユーザー行動によってPickしやすい記事が集まったが、Picksが目指している「発見と理解の場」にはつながっていないというジレンマが出来た。その後、トップ記事の中に運営による記事差し込み(注目されるべき記事の差し込み)やカテゴリトップができ…という流れ。
個人的には、個人の嗜好は違い、それを一番反映できるのがタイムラインだと思っている。初期の思想が理想で、ユーザー行動というのが「価値ある情報を判断でき、価値ある情報が賞賛され、価値ある情報の提供者がビジネスをちゃんとできる」という状態が理想。そこは曲げたくなく、だからこそCGM色が強いPicksだからこそ、価値があると思った情報はコメントとかPickとかをどんどんしてほしいし、価値がないと思ったものは無視を決め込んでほしい。
自分はCGMの力を信じたいし、その力を発揮するための場としての整備をPicksがやっていけたら、ものすごく価値があると思っている。ヤフートピックスを長らく率いてきた奥村氏による、ニュースキュレーションに関する問題提起。キュレーションサービスは、的確にコンテンツの価値を理解し、そのうえでキュレーションできているのかと。賛同するかどうは別にしても、とても重要なことを指摘していると思う。
やはり大きなトレンドとしては、価値の評価主体が、知識や経験をもとに時間をかけて評価に取り組む一部の専門家から、あまり時間をかけず知識もないまま即時的に評価する大量の一般生活者に、いま移りつつあるというパラダイムシフトだろう。いわゆる「集合知」というものだが、この動きがこれまでの専門家知識の構造を破壊的に変えていることは否めない。
奥村さんが「私たちの生活が「なんてことのない記事」で満たされている時代がすぐそこにあるとしたら? 嫌な予感がしませんか?」と訴えたくなる気持ちも理解できるし、僕自身そう感じることもしばしばある。しかし、その「なんてことない記事」という評価も、すべての人に自明でもないし、妥当でもないことを、いま専門家の人たち自身も自覚しなくてはならない。
モナリザってだれが良いっていったんだっけ? ゴッホってだれが素晴らしいっていったんだっけ? 俺らはそうは思わないけど。ほら、美術館に行かなくても、もっと身近なところに、こんな魅力的な絵を描く人たちがいるじゃない。もっとこっちにも目を向けてみようよ。こんな感じに言えてしまうのが、インターネットが実現した社会。そもそも価値とは相対的で流動的なものであるとするならば、情報やコンテンツの価値など、だれが一番正確に評価できるかなど、議論することのほうがナンセンスという見方もできる。
トラディショナルなメディアが持つコンテンツの目利きと選別の力は、新興メディアがちょっとやそっとでは真似できないほどの分厚い蓄積がある。それはいまのデジタルの時代もまったく廃れることはないと思う。ただ、いままでとはまったく違う基軸で、大勢のモノの見方をITの力で吸い上げて、それを集約し、可視化してくれる、「インターネット的」なコンテンツの評価や測定の可能性に、やはり僕は大きなフロンティアを感じてワクワクする人間である。