Microsoft、全固体電池の新素材発見 AI使い2週間で
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20年ほど前に材料分野で博士号を取得した際は、とにかく理論に基づいてがむしゃらに日々実験と言った状況でした。
当然材料の組み合わせは無限にあるわけで、研究室で夜を明かすこともしばしばあった、そんな時代でした。
いくら理論に基づいて最適な組み合わせを予想すると言っても、新たな理論が生み出されるような先端研究分野ではこのやり方が正しいわけではないと言う想いもありました。
今は理論に基づく推論をAIが肩代わりしてくれるため、昔ほど材料研究に泥臭さを感じなくなってきているかもしれません。
そういう意味で、AIの活用(マテリアルズ・インフォマティクス)が材料研究の盛り上がりに貢献するのは歓迎すべきことですね。
なお、現段階でこの手法でわかるのはあくまでも材料の組み合わせのみだと思われます。
その材料をいかにして安定的に作るかまではわからない可能性がありますので、従来の材料研究者はその領域で手腕を発揮できます。
ただしAIの学習モデルはものすごい勢いで進化していきますので、材料の作り方を学習したモデルが出てくると、いよいよ私を含めて従来の研究者は何で飯を食って行くかを本気で考えないといけなくなりそうです。今回のMSでは、MIで候補材料を絞り込んで、既存の全固体の構造でシミュレーションをして、Li使用量を低減させた、といったことに過ぎず、これくらいならどこの国でもやっているでしょう。無機材料データベースも日本ならNIMSで持ってますし、素材の組合せ最適だけでは済まない世界です。
またMIとシミュレーション、量子コンピュータ活用について述べているので、何が新素材探索で決め手になったのか?また新素材が何なのか?が良く分からなくなってます。Li使用料を減らすと有りますが、固体電解質なのか正極材料を指しているのか。
稲葉さんもコメントされているように、従来はひたすらデータを得るために実験する研究者もおり実験屋と揶揄する向きもあります。ただし今でも最後の決め手は、新しい素材と環境系を構築するために、実験屋の手技や測定装置などが必要不可欠です。
第一原理で近似パターンを盲目的に適用して計算しても、システム同定で実際の現象に合わせるようにパラメータ調整していては本末転倒ですし、また材料探索だけでは無く、最近はマテリアルズ・インテグレーション(同じMIですが)といった原子のトポロジーも考慮するアプローチも行われております。効率的な素材組み合わせ探索にAIを使うところに注目が集まります。しかし、計算時間短縮のもう一つの鍵は、時間がかかる評価シミュレーションの並列化でしょう。Azureでクラスタを組んで力技で計算したと推察します。ここが大手IT が強く真似できないところです。