「アップルペイ」を他社に開放 競合参入妨げ調査で改善策
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欧州委員会のプレスリリースはこちら。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_24_282
この共同通信の記事では解りにくいのですが、これはサードパーティーによるタッチ決済の実装を困難にしていたiPhoneのNFCへのアクセス案件です。Epic Gamesが訴訟を展開している、いわゆるアプリ内決済のサードパーティー開放ではないので要注意。
今回の提案はiPhoneのNFCをHCE(Host Card Emulation)を用いて利用するAPIをサードパーティーに提供するというもの。HCEはGoogle Payにも用いられている技術で、故に同等のタッチ決済を独自に開発出来るようになります。
日本で例えればPayPayがQRコードに加えてタッチ決済もPayPayアプリに追加できるようになる話。他方で例えばマイナカードのスマホ化に必要なSE(Secure Element)の開放は今回は無し。
参考例としてフランスにはPayLibという事例があって、Google PayやApple Payに対抗してBNP Paribasを中心にフランスの大手銀行が手を組んでおフランスなタッチ決済アプリの開発を試みたことがあります。
これAndroid版はちゃんと完成に至って、私も一時期利用していましたが普通に便利でした。ただUXの面ではやはりGoogle Payが優れていて、また結局Appleが最後までiPhone版の開発を認めなかったため、結局フランスの銀行も降参してiPhoneはApple Payに、AndroidもPayLibからGoogle Payに集約された経緯があります。
他にも今は亡きWirecardなどもEMV互換の独自タッチ決済を提供していましたが、正直この分野に関しては死屍累々で、今更AppleがNFCを開放したところで既に勝負は決着済みという感想です。
他方で地味に影響があるかなと思っているのは交通の分野で、欧州にはCalypsoなどICカードを用いたクローズドループのタッチ乗車技術を供給する事業者があります。
これもAppleがNFC利用を認めていなかったためスマホアプリ化が遅れていたのですが、今回の開放でようやくアプリ化が加速するかもしれません。先日のAppleのiPhoneが世界のスマホ売上で、一位のシェアを韓国のサムスンから12年ぶりに獲得しました。Apple PayはiPhone、iPad、Apple Watchという統合されたエコシステムの中で接続と利用が可能です。加えて、ブランド力と顧客の基盤、セキュリティとプライバシー(CMでもみなさん観てますよね)、他言語対応の国際普及力、今回は金融ですが、提携力とパートナーシップ、競合ないしは代替品を観ると、Google Payと SamsungPayだと普及において大きな差があるような気がします。
欧州サイドの見解も理解できますが、一分一秒のテクノロジーの進化を真剣に捉えていたジョブズと、紅茶や優雅な欧州の景観を眺めながら過ごしたあたりで、市場における優位性と競争力において大きな差が今になって手遅れですが出ている事も認識すべきかと思います。俯瞰的に見れば、国家が超国家的グローバル企業に対してあの手この手で制約をつけようとしている現代ならではの現象なんでしょうけど、将来的にはどっちが勝つんですかね。もうだいぶ国家は敗戦の様相を呈してますが。