【解説】タワマン揺らす「長周期地震動」の脅威とAI予測
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久々の「ディープな科学」。編集を担当しました。
地震国・日本に住む上でぜひ知っておきたい、長周期地震動による高層ビルやタワマンの揺れ。不動産選びの盲点になっている気もしています。気象庁が2月から、緊急地震速報の対象に高層ビルなどを大きく揺らす「長周期地震動」を加えました。
この長周期地震動とは何かについて、東京大学地震研究所で所長を務める古村孝志先生に伺いました。なぜ高層ビルが大きく揺れるのか? なぜ巨大地震ほど長周期の揺れが発生しやすいのか? 基礎的なところから易しく解説していただきました。古村先生が進める、AIを使った長周期地震動予測の最新研究にも注目です。
タワマンに住んでいる方、高層ビルにオフィスがある方に限らず、新しい速報に戸惑わないために知っておくべき基礎知識が満載です。地震にP波やS波があるということは理科の授業などでなんとなく聞いたことがあるという人が多いと思います。地震もいろいろな波の集合でできているのですが、ここ数十年で大きな構造の建物が増えたことにより、より大きな固有周期を持つようになったことで長周期地震動も問題となってきました。
共振は、例えばブランコがいい例で、ブランコをより大きく揺らそうと思ったら、むやみに揺らすよりも、ある一定の周期に従って力を加えたほうが大きく揺れるということは経験上知っていることと思いますが、まさにこれが共振です。ブランコの紐が長いほど周期も長くなるということもすぐにイメージできることと思います。建物も地震の時にはブランコのような仕組みで上が揺れるので、建物の高さが高いとそれだけ周期が大きくなるということになります。
この長周期地震動はまだデータ量が乏しく、今後予想される種々の地震(南海トラフや首都圏直下地震など)でそれぞれどのような周期の地震波がどの建物にどれくらい影響するのかは正確なところは見積もりづらいのが実情です。しかしながら2011年の東日本大震災や、その後の2015年の小笠原西方沖地震など、長周期地震動が影響し高層ビルのエレベーターに影響が出るなどの例が続出したことがあり、今後もエレベーターへの影響が懸念されるほか、高層ビルの高層階ではエレベーター復旧まで生活が困難になるような状況は容易に想像され、今後の大規模な地震への対策という意味で無視できない要素となりつつあります(こうした高層ビルが沿岸部の埋め立て地の軟弱な地盤に建設されることが多いことも長周期地震動を大きくするので心配な点です)。
高層ビルにおける自治会や管理組合の仕組みを通して防災対策を十分にしていく必要がありますし、居住者であったり、商業ビルのテナントであったりする側も自分のビルにおける防災対策がどうなっているかを確認するべきといえるでしょう。