健康診断見直しへ 厚労省、女性疾患追加やX線廃止検討
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日本の健康診断は1912年の工場法がその始まりと言われています。当初問題となっていたのは、現場で蔓延する結核や赤痢といった感染症。こういった感染症の蔓延を防ぐことを主目的に健康診断が始まりました。
その後、1972年には労働安全衛生法が制定され、肺結核の早期発見のために一律胸部X線検査が行われるようになりました。ここに背景となる科学的根拠があったかというと十分な根拠は見つからず、有識者による合意形成の上で決定されたものと考えられます。
確かに、健康診断で胸部X線が開始された1972年、現在の10倍を超える人数が肺結核に罹患する時代でした。十分検証されているわけではありませんが、罹患率の高い時代に検査を行うというのは、理にかなっていたのかもしれません。しかし、罹患率が低下している今もなお、同じ検査が有効かは不明です。
胸部X線は肺がんの早期発見になるのではないか、という視点で捉えられることもありますが、肺がんのスクリーニングとしての胸部X線についてはこれまで少なくとも6つの大規模ランダム化比較試験でその有用性が否定されており、米国や欧州諸国では、肺がんのスクリーニング検査として胸部X線検査は推奨できない、としています。
歴史的背景とエビデンスのギャップというのは、他の検査にも見られます。例えば、心電図検査についても、臨床試験において無症状のリスクの低い健常者に行うことに有用性が確認できず、米国や欧州諸国で、「推奨できない」とされています。
こうした検査はもうずいぶん前から「やらない方がいい検査」と分かっていたのですから、もっと早くから見直されるべきでしたが、何にせよエビデンスに基づいて改善されるのは良いことです。
参考文献(自分の書いた記事ですが)
https://mi-mollet.com/articles/-/33907元々日本の健康診断は、大正時代に、結核の早期発見や、炭鉱労働者の健康障害を予防、早期発見の目的のために始まりました。そこから100年以上経過しており、未だに内容が当時のままであったことが驚くべき点です。
特に若い労働者には無駄になる項目も多く、あくまでも「業務に起因する傷病の発見」のためには意味のない項目の廃止は、妥当であると思います。