AIは経済への恩恵か呪いか、歴史に手掛かり
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AIによる生産性の向上の利益を、経営者や投資家に独占させず、いかに市民に再分配するか、これは大きな政治的課題です。
高収益企業や高所得者から税金を取って、給付金を広く行き渡らせるのがベーシックインカムの考え方です。これもありですが、AIを使って働いた報酬やAIに貢献した報酬を増やす仕組みも必要と思います。人はまだ働くことに生きがいを感じていますから。
だから、クリエイターのAI学習への貢献に報酬を払え、というハリウッドのストライキは良い前例になればと評価しています。「MITのジョンソン教授と、同僚の経済学者ダロン・アセモグル氏は今年出版した著書」
このロイターの記事はこの二人の新著"Power and Progress"の内容に概ね沿ったものですね。アセモグル教授は「国家はなぜ衰退するのか」の著者で、この本も邦訳が待たれます。
この本の内容についても触れたFTによる食レポ混じりの対談記事はこちら。
MIT経済学教授ダロン・アセモグル「技術はエリートに都合よくコントロールされ、利用されてきた」
https://newspicks.com/news/8568794
ポイントは技術革新そのものは自動的に大衆の福祉の向上には繋がらず、むしろヒエラルキーを拡大させ労働者の実質賃金も自由度も低下したという点です。
「その状態から抜け出せすのに、経済学の法則は役立ちませんでした。草の根の社会的闘争や組合、進歩的な政治のおかげです。最終的に重要だったのは、より良い制度でした」
技術革新の悪影響を相殺したのはこれらの非市場的な社会のダイナミズムだったという歴史的経験を俯瞰し、それをAIなど今日の技術革新がもたらす社会変化に適用して議論した本となります。
その提言は多岐にわたりますが、前提として社会が「テックビリオネラのアジェンダに魅了される事を止め」(苦笑) 新たな技術による社会の行く先を一握りの起業家やエンジニア任せにせず、社会としてその技術がどう人々に働くのかを議論することなくして繁栄の共有を取り戻すことには繋がらないと述べています。
思えば産業革命が世界に拡散する時代の後に続いたのは普通選挙や労働運動の時代だった事は中学校の歴史でも学ぶ程度の事柄です。そう考えると今日の一見新しい社会状況に対しても社会が歴史に基づいた真っ当な批判的視点を回復する事がまず必要なのは非常に首肯できるところです。産業革命当時ほど悪いことにはならないと思います。当時、労働者の権利という概念もほとんどなく、ありったけの時間が労働に費やされていました。
今はダイバーシティやエシカルなどの概念が浸透して、消費活動にも影響を与えています。インターネットを通して情報の非対称性も極めて小さくなりました。倫理的であるか、まっとうであるかといった価値観が資本主義にインストールされた状態です。
一方でテクノロジーの進展が人類にとって良い結果をもたらすことを目的としていないことも自明です。基本的にはいかに資本にレバレッジをかけるかが要点です。
バランスを取るために私たちにできることは、意識的に消費を選択することです。問題提起をすることです。そして短期的には資本主義を洗練させていくこと、いろんな価値観をインストールしていくことが1番の近道ではないかと思います。