【解説】中国はこうして、グローバル・サウスを味方につける
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「日本に重要なのは「対話」だ」との提言には賛成ですが、さらに戦略的に考えてもよいかなと感じました。
欧米とは違い、地理的にアジアに近い日本が、途上国を一括りにするのではなく、国毎にニーズを拾いだし、きめ細かく支援していくべきだとする主張は間違っていないと思いますが、それは、正にこれまで日本が行ってきた途上国支援のあり方であると思います。
むしろ、途上国において中国による支援が優勢になっている背景には、記事にもあるとおり、潤沢な資金とスピードです。他方、ミャンマーなど典型ですが、中国支援によるインフラの質が悪く、あとで問題になるといったことはよく聞きます。
中国によるスピーディだが質の高くない支援と、日本による細やかででも時間がかかる支援に対して、途上国の多くは、前者を志向するケースが(表面的には)目立つといったことかと思います。
私は外交官時代にパキスタンに駐在していたことがありますが、中国の影響力の大きさは実感しました。一方、日本の政府、企業、NGOが細やかで技術力の高い支援や協力を長年行ってきたことから、パキスタン市民の多くが日本への感謝と尊敬を持つ背景の一つになっていたと解釈しています。
卑見は、
①短期的な中国との競争にあまり焦らず、民主主義国であり経済成長著しいインドとの関係を強化しつつ、グローバルサウス全体への影響力を保つ
②人口と経済成長が期待されるアジアとアフリカでの地域的なレジームには関与しつづけ、両地域の秩序に「誠実な協力者」として影響力を保つ
③途上国の短期的経済発展よりは長期的繁栄を図るような協力を行う
④権威主義体制等であっても、長期的には市民の生命・健康・財産・自由を支援する
といったことが思いつきます。
欧米の地位が相対的に減じ、中国がさらに影響を強め、グローバルサウスが台頭する中、日本は市場経済と民主主義を保つ国として、是々非々で色々な国々と協力することが、長期的には日本が影響力を高め、世界の繁栄に貢献していく役割を果たせるのではないでしょうか。米国の相対的力が低下する中で、日本はどうするのというテーマは、国交でも経済でも大きなテーマ。中国が新興国でのプレゼンスを挙げているのは今に始まった話ではなく少なくとも20年。中国の台頭が予見された90年代から、得意の華僑ネットワークも駆使しながら、資金だけではなくプロダクトやインフラで存在感を高めてきていたように思います。
日本の新興国政策ではODAの印象が当方は強いですが、ドルベースでこの10年で1.5倍、円ベースだと三倍近くに拡大していますが、1位米国、2位ドイツとは差を広げられ、フランツと英国と競いながらギリギリの3位。
米国$55bn、ドイツ$35bn、日本$17bn、フランス英国$16bn
中古車は引き続き日本車の耐久性が高くプレゼンスはあると思いますが、それ以外の存在感はかなり低い印象です。日本の大企業で時価総額トップ15は、トヨタ、ソニー、キーエンス、NTT、三菱UFJ、ファーストリテリング、三菱商事、ソフトバンク、東京エレクトロン、KDDI、オリエンタルランド、信越化学、伊藤忠、日立、SMBCですが、国内市場中心か先進国中心にようやく本気でグローバル化を目指している企業が大半です。
新興国プレゼンスといえば、トヨタ、商社、銀行(アジア中心)ぐらいでしょうか。バフェットが日本の商社を買い増した理由もそのあたりにあるのかもしれません。「国家に真の友人はいない」と言ったのはシャルル・ド・ゴールですが、どんな国であれ、自分の国が一番大事なのが当然です。
自国以外の国は、自国の利益になるならその限りにおいて味方するし、そうでなければ、無関心か、敵対もします。
「親日」「親米」「親中」といったものはある国の固定したポジションではなく、その時々の利益次第で、コロコロ変わるものです。
空港とかインフラであれば、日本もアジア、アフリカ諸国でずいぶんつくってきたものです。円借款とかで、金を貸すことによって、の場合が多いですが。
空港などインフラをつくることで永続的な友人になってくれるならずいぶん楽なのですが、せいぜいその時だけ「親日」になってくれるだけです。
空港とかインフラなら、現在なら中国ですが、その前は日本(1990~2000年代)、その前は米国(1950~1970年代)が中東、アジア、アフリカにインフラをつくってきました。
1960年代、70年代に中東で米国と影響力を二分していたソ連も、エジプトにダムをつくったり、シリアなどを支援したり、無理をしてインフラをつくっていました。
今の中国はソ連が抜けた穴を埋めている、という面が大きいでしょう。
そういうのは、冷戦時代の競合や自国企業進出の下準備なので、むこうもそこまで恩に着てくれないし、数十年後にもまだ感謝されているとは思わない方がいいです。
中国が一帯一路で影響力を広げる、という壮大なストーリーも、影響力は数年単位のものだし、すでに方針転換しています。
一帯一路自体が、あくまで中国の利益のためで、その主な動機は、中国国内の過剰な設備投資と在庫の行き場をつくる、という中国経済の調整弁として行われていたものです。
今、中国経済の調整局面は底が抜ける段階に入りつつあり、一帯一路も抜本的に変わってきています。
カンボジアやコンゴ民主共和国あたりには影響力を残し続けようとするでしょうが、アンゴラからすら手を引いていっています。
アジア、アフリカ諸国の人々にとっては、ヨーロッパ人、米国人、日本人、中国人などは、しばらく来ては去っていく連中であり、友人というほどもない、セールスマンや闖入者の類です。
日本はセールスマンですが、よい商売をさせてもらえるならよしとするべきで、セールスマンなりに巧みな対人関係は必要です。