5月の実質賃金、1.2%減 物価高で14カ月連続マイナス
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ヘッドラインの数字ほど賃金は弱くないと言えるでしょう。
というのも、今回の平均賃金は賃金水準の低いパートタイム労働者比率の上昇がかなりの押し下げ要因となっているからです。
実際に記事中にもある通り、一般労働者とパートタイム労働者に分けて名目賃金を見れば、ぞれぞれ前年比3.0%、3.6%と久方ぶりに3%を超えており、実質賃金も依然としてマイナスとはいえ、それぞれ前年比▲0.7%、▲0.2%とヘッドラインより下げ幅は縮小します。
ただ、特に一般労働者の賃金押上げ要因がボーナスなどの特別給与によるところが大きいので、来年度以降もこの賃上げが続くかはまだ慎重に見る必要があるかもしれません。想定されていたとおりの結果とはいえ、今年の春闘の名目平均賃上げ率が3.58%と高く29年振りの3%台であったこと、計算上差し引くインフレ率が政府の電力価格抑制策を反映した数字であったこと、そして実質賃金悪化が1年余りも続いていることなども合わせて考えますと、とても悲しい気持ちになります。
インフレが、実質家計消費を減らし、日本のデフレ脱却を遅らせ、YCC修正を遅らせ、インフレの高止まりがさらに続くという悪循環が始まっているのだとしますと、怖いですね。週初の短観でも改めて示された通り、日本は製造業、非製造業ともに強烈な人手不足に直面しています。企業は処遇改善を通じた人材確保に注力する必要があり、ある程度の賃上げ継続を期待できます。一方、実質賃金については、インフレの抑制も必要です。その点、日銀は今のところインフレの主因に輸入インフレを挙げています。もっとも、国際的な商品市況は一時に比べ、かなり低下しましたからあとは円安です。因みに、OECDによれば2022年のドル円の購買力平価は約97円57銭です。