AIが設計した新薬、ヒトで試験 米国と中国で開始
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特発性肺線維症は、効果的な治療薬がないため、開発に成功すれば、重要な薬の一つだなります。
AIが設計したという事に注目を集める記事ですが、記事を読むと、AIがやったことは膨大なデータのデータ解析と、共通項から原因タンパクを導き出したという事です。デザインというと、新しいタンパク質を作り出した様に捉えられるかもしれませんが、ビッグデータを元に、原因タンパクを導き出したという事だと思います。
この領域はAIの得意分野であり、今後はAI無しには新薬開発は出来ないという状態にまでなるでしょう。
単純計算で電卓には勝てない様に、データ解析でもAIには勝てないでしょう。大事なことは、どの様なデータが欲しいのか、得られたデータはどの様な価値があるのかを判断できることだと思います。
ある意味、これまでの研究のやり方とはルールが変わるタイミングなので変化に対応する力が必要となります。最近のAIの急速な一般領域への普及のにより、「AI」という言葉自体に話題性は高いのですが、医薬品の領域に関しては、過去40年くらい、コンピュータを用いた手法により段階的に進歩してきた印象があります。
この間の最大の革命は、2000年の米セレラ・ジェノミクスによるヒトDNAの全塩基配列の読み取り完了で、それ以前は相当な時間がかかるとされていたこの課題に対し遺伝子を短く分割し、同一部位をコンピュータで見つけてつなげることにより全遺伝子の解析を(当時の感覚で)あっという間に(半年くらいで)終了させました。これにより遺伝子操作が可能になり、新しい抗体医薬品やワクチンへの可能性が大きく広がりました。
医薬品の開発の歴史は、おおむね、
(1) 薬草など用途が見つけられた動植物や鉱物 (2) 化学式や立体構造の発見による化学合成とその中から効果があるものの選好(スクリーニング) (3) (2)の大量合成とスクリーニングの自動化 (4) 化学式や立体構造の検討に際して、または病気と遺伝子の関係性データを蓄積を利用したコンピュータによる事前予測(類推や分子間引力の計算)
の順に進歩してきました。記事で紹介されている技術は、上記の(4)にあたります。
現在は医薬品の研究にコンピュータは不可欠ですが、それによっても予測は難しく、実際に生物で効果、毒性、変異原性を確認するプロセスが欠かせません。
次ぐプロセスである前臨床試験(動物実験)で確認されて、そこで残ったものだけが臨床試験(ヒトへの投与)の対象になります。臨床試験も、規模を拡大しながら少なくとも数段階実施します。
今後、AIの力を借りながら、医薬品研究のスピードアップと制度の向上が少しづつ進んでいくことは間違いありません。先端企業の活躍に期待しています。AIを活用して開発した新薬の治験を始めたというニュース。AIを駆使して効果が期待できる治療薬の候補薬を選び出すことができれば、創薬のコストや開発にかかる時間が大幅に短縮できるかもしれません。
AIを利用した薬であっても、他の薬と同じく第1~3相の臨床試験で有効性と安全性を確認するまでは実用的な薬剤かどうかの判断はできません。効果に期待しつつも、現時点では冷静に結果を待つ必要があります。