米イーライリリー、バイオ医薬品のダイスを24億ドルで買収へ
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乾癬は、赤斑とうろこ状の皮膚のくずがみられる慢性的な病気で、関節症状が伴うこともあります。免疫系の異常反応により引き起こされ、遺伝が影響している可能性があるともされます。
現在米イーライリリー社がラインナップしている「トルツ」(一般名:イキセキズマブ)は、免疫異常で過剰に増えたインターロイキン-17Aという物質の働きを抑える皮下注射製剤です。買収しようとしているダイス・セラピューティクス社のDC-806(開発コード名)もIL-17の抑制をターゲットにしており、「トルツ」とほぼ同一の働きをもちますが、経口剤です。
現在の株価に対して低くないプレミアムを載せていることから、積極的な買収の姿勢が見られますが、先行する医薬品が特許切れに直面している状態ではないのに、このようなケースで実際に買収対象にされることは珍しく、将来のライバルの出現を抑えるという比較的弱い動機があるなかで、ダイス・セラピューティクス社の株価が振るわず、買収チャンスと考えたことが実行のきっかけになったものと想像します。これは、興味深い。非常に専門的ですけどIL17を狙った化合物特許のReviewが以下です。
https://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.1080/13543776.2022.2143264
Review中に、イーライリリーが創製したCompound55でPhase Iをやってsafety concernsで止まっている(suspended)とあります。(1172ページ3.5. Eli Lilly and Company)
Diceが特許を持っている化合物がさきほどのreviewのFigure 9にありますけど、イーライリリーの化合物とよく似ています。Diceの化合物もPhase Iを行ったようでその結果が以下のDiceから出ている投資家向けの資料にあります。
https://investors.dicetherapeutics.com/static-files/97510404-4b85-43f6-b1de-aa58dbb7c375
これをみると、副作用は、mildやmoderateの範囲に収まっていて、深刻なものはでていない。薬効が発揮できそうな濃度まで十分に投与できそうで、おまけに、Phase Iの主目的ではないものの、投与後29日目で目で見てわかるほど乾癬の症状が改善しているという写真がある(22ページ)。
これらのデータを見せられて、標的も同じで化合物の構造も似ており、前臨床までの蓄積を活かせそうだと考えて自社創製のものよりもDiceの化合物に乗り換えようと判断して、会社ごと買ったのではないかと思います。