【新】日本経済に希望を灯す、知られざる企業たち
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注目のコメント
日本のものづくり産業は、エンドユーザーに認知されるブランド製品が世界中で売れたことで日本人の誇りにもなり、その反動で1990年代以降の苦境によって日本が自信を喪失していった、そんな象徴のような気がします。
近年、スイスの人たちと接することが多いんですが、スイスは日本に対して強いシンパシーを感じるようです。
というのも、スイスと言えば我々は金融や時計産業、ネスレなどのブランドをイメージするんですが、実は最終製品の中に組み込まれている精密機器をつくっているものづくり産業の裾野が広いんですよね。それが今の日本のものづくり産業とよく似ているというわけです。
ウォークマン、家電、車…と最終製品が世界でモテモテだったかつての日本に対する残像を持っている人たちにとっては寂しさを感じるのかもしれません。
ただ、日本の精密機器や半導体製造装置、部材メーカーの営業利益率の高さを見ると、欧米のグローバル企業でさえ羨むレベルであり、日本のものづくり産業のしたたかさを感じることができます。
私が、日本が参考にすべきは米国西海岸ではなく、スイスや北欧の方が現実的と考える理由はそんな視点からです。2点コメントします。
■ニッチ
ニッチ云々は10年以上前にも“もてはやされた”話題。時代は繰り返します。
ニッチというものは、最終製品に向けたバリューチェーンの中で「欠かせないピース」と捉えることができ、当該バリューチェーンが変わらない限り、特異な強さと地位をもたらすものです。しかし、技術的進化・革新によりバリューチェーンに変化が起きた場合はひとたまりもなく淘汰される。又、企業としてそのニッチ分野に特化している場合、最終製品における景気変動がもろ直撃することになり、継続には相応の体力を必要とすると認識しています。(経験談😢)
こういう点からニッチだから良いということではなく、有する技術に関して、常に大局観をもって捉えていく(大きな流れの中での1ピースとして捉えていく)必要がある事と、特定のニッチ分野に特化することなく、ある程度派生的な多角化が必要と理解しています。
■どこが得意か
日本が得意とされてきた製造というものは、欧米から輸入された技術に改善を重ね、効率的な大量生産を実現したことです(コストダウン)。これには単にたくさん作るというものではなく、例えば「壊れない」という品質面での長所を+αしたものでした(付加価値)。
いずれも高度経済成長時代(大量生産・大量消費時代)にハマったものでした。
しかし、ITや機械技術が進歩した現代においてはスマイルカーブの中での底辺に位置づけられる分野です(特に組立という分野)。これは他社も同じことができる場合が多いので、顧客にとって付加価値が生じ難いという事。
一方で、もちろん難しい製造=付加価値が高い分野もあり、それが上記の「最終製品に向けたバリューチェーンの中で欠かせないピース」、すなわちニッチに相当します。
記事では産業アーキテクチャ論から3つの分類を行っています。一般論として決して間違いだとは思わないのですが、大量消費の時代が一服し、バリューチェーンが複雑化した現代において、実態はそう単純化できるものではなく、結局は「技術・製造面で欠かせない存在になれるかどうか」にかかってくると認識しています。これは多くの分野でいえることですが(たとえば論文数ランキングとか)、日本はGDPが急落したとかいうことはなく、微増はしているのです。
ただ、他の国がはるかに急成長しているから、相対的に小さくなっているのです。
これが日本の衰退です。
「日本の工業製品輸出額が85兆円から90兆円に増えた」といいっても、(そもそも円建てでの数字で、ドル建てにすると減っている訳ですが)これは今では世界第5位です。
2003年までは3位でしたが、2004年に中国に抜かれて4位に、2019年にオランダに抜かれて5位になりました。
半導体製造装置も、韓国製(サムスンのSEMES)、台湾製のシェアが増えてきています。
10年ほど前は、日本はスマートフォンのシェアは無くてもiPhoneには日本製の部品が使われているから、とかいわれていましたが、日本製部品の割合が多かったのは10年以上前の過去の話です。
まだ自動車があるから、まだ半導体製造装置があるから、といっているうちに、家電製品やパソコン同様にシェアを失っていきます。
もっとも、「日本のものづくり」とかいう、日本という枠に執着すること自体が、多くの人にとて意味を失っていきますが。
それから、日本製の半導体製造装置の品質がどうこうより、国際関係上の理由で中国へ半導体製造装置を輸出できなくなる、という方が、よほど経済に影響のある問題です。