タイ総選挙で野党勝利、親軍大敗 政権交代へ連立協議
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タイの政治には詳しくないのでよく分からないのですが、どんな結果があっても「クーデター」という奥の手にはならない手段がある以上、選挙に意味があることなのかすら分かりませんね。
こうした国とクーデターなどは起きにくい国、何がどう異なるのですかね?
注目のコメント
タイの選挙と議会政治を理解するためには、タイの憲法を理解する必要があります。
現在の憲法は、2014年に軍がクー・デタを起こした後に軍の政権がつくった、2017年憲法です。
2017年憲法では、タイの首相は以下のようにして選出されます。
・上院 250議席
・下院 500議席
・合計750議席の最大多数の支持を得た候補が首相に選出される。
下院の500議席を決めるのが、きのうやった下院選挙です。
上院の250議席というのは、選挙では決めず、軍が指名することができます。
つまり、首相を決める750票の内、3分の1の250票は、軍が自動的に持っていることになります。
軍は、政権を取るためには、下院で126議席取れば376票を取れて単独過半数になります。
軍系以外の政党が政権を取るためには、下院選挙で得た376議席(下院の4分の3以上)が必要です。
下院選の結果は、
1位 前進党(若手企業家系、都市部高学歴中心) 150
2位 貢献党(タクシン財閥系、北部農村で優勢) 144
3位 プライド党(タクシン派から分派して軍政権の副首相などになったグループ) 68
4位 国民国家の力党 (国軍系) 37
前進党が大躍進を果たして第1党、国軍の単独過半数は無くなりました。
この結果だと、前進党+貢献党、あとはプライド党などの非軍系政党で連立政権をつくることになり、その方向で政党間の協議が進んでいます。
ただし、前回の総選挙では、結果が出た後、国軍の判断で前進党当選者らの当選が無効になり、国軍が無理矢理過半数を取りました。
国軍がその気になれば選挙結果を無効にできるのがタイの政治なので、予断はできません。
今回は、国軍がまたそういう無理を通すと前回以上に反発が大きくなるでしょうが。タイでは軍政下において、全750議席中250議席は軍からの任命でないといけない、などのルールができており、軍政要素を全て排除することは難しいと思います。
しかし、民主的野党2党が圧勝していること、そして王室改革を掲げていた「前進党」が若者から人気を集めて第1党になったことは、注目です。
今までタイでは、王の存在を重視した「タイ式民主主義」がとられており、王室は敬愛される存在でした。しかしこの選挙結果には、その前提が崩れ、特に若者は王政に対して不満を持っていることが表れています。
タイ式民主主義がどう変容していくのか、今後着目していきたいです。非常に微妙な結果ですね。王室批判も辞さない前進党が予想以上の議席を獲得したことでこの後の連立政権の組み合わせは流動的になってきました。
前進党は親軍政党の与党2党とは連立政権を組まないと宣言して今回の勝利を獲得したことを考えれば、タクシン派のタイ貢献党が最も有力な連立相手になりますが、タイ貢献党は王室批判は避けています。
また、タイ貢献党は親軍派政党の一部との連立の可能性については明言を避けています。
さらに今後予想されるのが保守的かつ時に政治介入を行う憲法裁判所の判断。何らかの難癖をつけて前進党を解党に追い込むことも考えられます。