米当局、預金保護強化で新基金の創設議論-さらなる銀行破綻に備え
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新基金などというと唐突な印象を受ける読者が多いかもしれないが、FRBやFDICの当局者でなくても米国金融政策の歴史を少し勉強したことがあれば、「ああなるほどあれか」と思う動きです。
金融機関の破綻というと、直近に起きた08年のリーマンショックばかりが取り沙汰されますが、実は今回のSVBの事例はそれよりもさらに歴史を遡った1980年年代から90年代のS&L危機(S&L はSaving & Loan Association :中小規模の貯蓄金融機関、日本でいうと信金に近い預金受け入れと住宅貸付を中心とした業態)に近いと私は考えています。危機には二段階があり、第1次危機(80年代前半)は、70年代後半から始まったインフレによる金利上昇で、これら金融機関のバランスシートにおける資産と負債のミスマッチが起こり破綻が増えた段階で、今のSVBの事例とほぼ同じです。これを受けて、S&Lの収益を後押しするための規制緩和(不動産向けノンリコース融資や商業ローンの解禁)を行ったところ、それらの融資に関するリスク管理や審査の不備が原因で不良債権を抱えて破綻してしまうS&Lが急増するというお粗末な結果となり、ピークの1988年の一年だけで200行を超えるS&Lが営業を継続できなくなるという第2次危機を招いた歴史がアメリカにはあります。その際に破綻したS&Lの資産は顧客保護のためにFDICに接収されて、その資産をキャッシュ化するために「基金(またはファンド)」としてRTC(整理信託公社)という機関が設立された、という経緯があります。
米国の金融当局者はその歴史を知るはずなので、この記事にある「新基金」という発想が生まれたのだというのが私の受け止めです。
(ちなみにRTCは証券化の手法を用いて、接収した資産の売却を行い、1995年に約8割の資金を回収するという結果を出して、役割を終え廃止、一部の業務はFDICに継承されています)
今回のSVBのような事案が、かつてのS&L危機の時のように波状的に広がるとは考えられないので、当時のような大掛かりな基金設立には至らない、と私は考えています。
S&L危機については↓
https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sa07-02/sa07-01-01-02-02.html米国の預金保険の上限は10万ドルで、ドル円相場が100円なら、1千万円が上限の我が国と似たような水準です。預金保険は預金者の安心を担保するのみならず、金融機関の支払い不能が連鎖的に広がって、金融システム全体の安定性が損なわれることを防ぐ役割も担っています。
経営的に健全な銀行が何らかの要因で一時的な資金不足に陥っただけなら、FRBが最後の資金の出し手としての役割を発揮し支えれば良いわけで、預金保険のような基金に依存する必要はありません。そうだとすると、金融システムを混乱させる銀行は何らかのところで経営に失敗しているわけで、議論はそうした銀行の預金者を救うため、健全な銀行とその預金者に負担を求めるべきか、というところに行き着きます。
預金者を保護する基金が厚いほど預金者もFRBも安心感が高まりますが、自由な活動を自己責任で行うことを尊ぶ米国で、どこまでこうした保護が容認されるものなのか・・・ 「FRBの担当者はコメントを控えた」とのことですが、手の内を明かすのは難しそう (^^;バブルが弾けて、規制をひく。コンプライアンス強化によりまたらされるのは安定。大切なことなんですが、それは低成長低インフレの世界観の肯定だったなぁと。
次なるスタートアップのサイクルがどうリカバリーできるほか今想像はつかないですが、未来より今大事!
やっぱりスタートアップもテイラールールに基づいて考えるべきで、企業価値算定とかあらためてそこを軽視するなってことよねと考えてるところ。
アメリカの金融政策は日欧のルールとは違い、バブルは弾けてからしかわからないという中で、弾けたら速やかに対策講じることができるわけで、これらは、金融政策は引き続きテイラールールにのっとってやりますというシグナルでもあるんでしょうかね。
いずれにせよ過去の歴史は思い出したくなくても思い出すのと、無駄に知識ついてしまっているので、ドル円のオーバーナイトスワップだけは明日以降も注視したいです。あと3年のスワップ金利は私のこう言う局面で必ずみる指標。
とりあえず備えあれば憂いなしなので、三寒四温で心緩まないようにキャッシュマネジメントしてゆきたいです。