【解説】2020年代の「ファッショントレンド」を見通す
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最近というか今の潮流を、NewsPicks冨岡さんに取材していただきました。
・テイラード、ドレスアップへの回帰
・アスレジャーの定着ないし浸透
・日本の特異性
・カルチュア、コンセプト不在の現在
・20世紀ファッションデザイナーの回顧展が続く理由
こうした要素を中心にわかりやすくまとめていただきました。
ニッチな現象が多様にありすぎて大きなストーリーを語りにくい現在も、5年経って振り返るとなにか特徴が見えてくるのかもしれません。服のカジュアル化は不可逆なものと思い込んでいたところがあったのですが、トレンドは揺り戻しがあるのですね。
確かに、コロナがあけてきて、リアルなイベントなどが激増して、ちゃんとした服を買わねば足りないという事態が自分でさえ起きています。
コロナ前に来ていたスーツとかもあまり時代に合わなくなってきた感じもしていて、、今の悩みの一つです。
季節も変わりますし、これを機にもう一度自分のクローゼットの中を恥ずかしくないようにリフレッシュしようと思います。
読者の皆さんはいかがでしょうか。
流行論の一説では、とくにファッションの流行を形成する要素として「同調」と「差別化」が両立するアンビバレントな消費者心理の存在が言われています。例えば、“ベージュのトレンチコート”の中で”裏地”が個性的なものを選ぶといったように、守るべきルールという側面での同調(=模倣)と、その範囲内で逸脱しない程度の差別化(=個性化)、言い換えれば「ちょっと違う私」が、多くの消費者によってスパイラル的に求め続けられることで流行が形成されるというものです。
そうした観点では本記事で触れられている「テーラーメイドへの回帰」は大変興味深いものだと感じます。
記事に基けば、19世紀以前は上流階級が一般階級に権威と金銭格差を見せつけるため極上の特注品(オートクチュール)が流行した、徹底的な差別化重視の時代だったと言えます。20世紀は周囲への配慮を前提とした既製品(プレタポルテ)が流行した、より同調が重視された時代。
そして21世紀はテーラーメイドの回帰。一説では、オートクチュールとテーラーメイドはともに”オーダーメイド”の意味であって言語表現の違いとも捉えられますが、記事での定義を踏まえれば、オートクチュールが素材の質にまでこだわり抜いたオーダーメイドであるのに対して、テーラーメイドは質の優先度を落とした形重視のオーダーメイドなのでしょう。シンプルに“より気軽なオーダーメイド”と解釈してみると、再び19世紀のような差別化・個性化の時代に戻ったということなのかもしれません。
しかし、19世紀以前のオートクチュールと異なるのは、素材開発や縫製技術の進化を背景に、大量生産で高機能かつ安価な既製の生地素材の生産が可能になったことが手伝って、素材(=機能)ではなくシルエット(=見た目)にオリジナリティを出すという点です。オートクチュール時代が素材まで含んだ徹底的な個性化時代であったことと比較すると、現代は、見た目にはわからない機能部分で弱い同調をしつつ、一人一人コンセプトが異なるよう見た目部分で強い差別化が志向されている時代になっている、こんな考察もできるのかもしれません。