【提言】大量生産社会は「森を溶かす」ことで終わりを告げる
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私の記事に興味を持っていただいている皆様に心から感謝いたします。
この場をお借りして、なぜ私がバイオマスバリューチェーンという構想に辿り着いたのかをお話しさせています。今回はその2回目です。
ダイセルに入社して、先輩達が歩んで来られたカーバイト→アセチレン→石化を経由してC1ケミカルと常に石油化学に依存しないための技術革新に取り組み、ダイセルがつくる植物由来素材のセルロースもまた、写真フィルムを難燃化するためセルロースに化学修飾を実施したり、セルロイド→酢酸セルロースの道行きは反応性アップと省エネの絶え間ない技術革新の連続であったりと、常により良い進化を遂げてきた歴史があります。
その中で私がセルロース生産部時代に取り組んだのが「ダイセル式生産革新」ともう一つ、サルファイト法パルプからクラフト法パルプへの転換です。これはそれまでの針葉樹だけでなく、反応性が悪いとされる広葉樹を使えるようにすることでした。セルロースの生産は天然物である木材を相手にする事です。それが故に、研究では、出来ない理由、つまり言い訳が蔓延していました。私は論理的に解析出来ることを実証し、製造工程を安定化するために、原料起因のパラメータ、工程起因のパラメータなどが石化プラントより桁違いに多い未知数を一つ一つ解いていく、初期の人工知能を利用し、ノウハウを顕在化・標準化する手法をつくり、一千万以上のノウハウを紐解き、大きな成果を出しましたが、このような複雑解を解くためにダイセル式を編み出さないといけなくなった要因も、反応性が悪いため生産工程が長く、固相になるため品質管理も容易でなく、固相が故の嵩密度換算で液相に対し巨大なプラントになるという結果がもたらせたことによるもので、抜本的解決のためには『溶かす』技術の開発が必須という結論に達したのです。環境学を学ぶ大学生です。
今は鳥取に住んでいますが、出身は三重で、母の実家は映画『wood job!!』の舞台となった津市美杉町という林業が盛んだった地域です。その地域で暮らすおじいちゃんから『山は宝であり、だから麓の地域は栄える』という考えと、自然の恵みに感謝する豊かな精神を感じた経験を思い出しました。
このバイオマスバリューチェーン構想はとても面白いと思います。この間ウェビナーで開催していたディスカバー農漁村の宝(https://www.discovermuranotakara.com/)でもよく考えさせられましたが、やはり日本の第一次産業のポテンシャルは高いと思いました。環境経済学が第一次産業がもつ公益的かつ他面的機能を評価する学問になるのですが、中々経済システムが成り立たない(コストが高く、新規参入しにくい分野)産業ではあります。
しかし今後、第一次産業が持つエネルギー安全保障や食料安全保障に関わる内面的な国力が失われれば、国は内面から崩壊すると思います。また、日本が持つ里山の風景は失われます、第一次産業がその地域の風景を作り出すのですから。
この第一次産業のバリューチェーンシステムがうまく回れば、もっと地域に魅力が溢れ、人がどんどん地域に入ってくると思います。この人口流動を作るためにも、またテクノロジーなど農漁村イノベーションを起こす科学と地域住人の内発的発展などの人間科学を上手く融合させる方法はないものかという観点から第一次産業のポテンシャルについてもっと勉強していこうと思います。大量生産・大量消費を前提に築き上げられてきた社会構造を作り替える。
この難題を「木を常温で溶かす技術」を「国産林」に活用・応用することで解決しようと挑んでいるのが、化学メーカー「ダイセル」の小河義美社長だ。
小河社長が唱える「バイオマスバリューチェーン」構想はなぜ、社会構造の変革につながるのか。低炭素社会、循環型社会の実現の可能性があるのか。
連載2本目の本記事では、「バイオマスバリューチェーン」の全容を紹介します。