投資額は27年度に10兆円規模、政府がまとめたスタートアップ育成策の全体像
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昨晩行われました総理主催の「新しい資本主義実現会議」にて「スタートアップ育成5カ年計画」が採択されました。これに基づき5年で10兆円の投資がなされるという、日本において初めての本格的なスタートアップ育成の産業政策が展開される事になりますし、これ自体は本当に素晴らしい事だと思います。
他方、昨晩の会議で私は、「支援策だけでは不十分。スタートアップが新しいサービスを提供できる空間(=規制改革)を創る必要がある」と意見具申をさせて頂きました。正直、ライドシェアも受け容れられない国で、世界的なスタートアップの勃興など無理だと思っているからです。
支援も規制改革も揃う中で、世界にチャレンジして勝つのは、あなた達、起業家ですよ!スタートアップが政府の重要なアジェンダとして俎上に載るようになったことは非常に心強いです。そのうえで、スタートアップを取り巻く議論が一過性のものではなく、より本質的な国家の成長戦略にまで発展することを望みます。
この点、スタートアップが育つ環境の創出を本気で目指すのであれば、最も効果的な施策は過去のツケを一掃する覚悟で徹底的に構造改革に取り組み、社会と産業の新陳代謝を促すことでしょう。
閉塞感漂う衰退市場でリスクをとって事業を興す人が続出することを望むのは厳しいものがあります。
スタートアップは成長産業の牽引者のみならず、日本社会の行動変容を促す黒船としての役割を担い得る存在です。その黒船を内製化できることが、スタートアップ支援の最大の意義だと私は思います。
新しいものを生み出すことと、歴史的使命を全うした古いシステムの退出を促すことはコインの裏表。
「スタートアップ育成」という表面的な大義を以て、古いシステムの退出をぬるりとなし崩し的に促すことが、リーダーシップを受け容れる土壌のない日本における構造改革の道筋ではないでしょうか。リスクマネーの総量として、現在8000億円規模のスタートアップへの投資額を5年後に10兆円規模とする計画。5年という短期で各VCがトラックレコードを大きく積み重ねることはハードルがあるため、政策的な観点とGP側の努力として以下が重要と感じています。
・中小機構等の官ビークルを通じたVCへのLP出資のより一層の規模拡大、個人・富裕層向けのファンド出資のチャネル拡大、規制緩和
・日本のVC・GPのファンドレイズ能力、営業力、IR能力の一段の向上、知見のシェア
・国内の事業会社、投資家にとどまらず、海外の機関投資家へのアクセス力の向上(幸い、地政学的な影響で中国へのリスクマネー投資が抑制されるなか、日本のスタートアップ領域に関心を持つ海外機関投資家が増えているのは追い風です)