【解説】習近平氏の3期目で強まる「個人独裁色」
コメント
注目のコメント
もともとトップ7人の中で、習近平氏の言うことを聞かないのは李克強氏だけでしたので(李氏は習氏の「貧困撲滅達成」宣言にもすぐ反論した)、彼を外しただけでも「習近平一色」は達成されたと言えるでしょう。
問題は、李克強氏は内政に於いて余人に代え難い存在だったように思うのですが、それを引っ込めたことで今後どうなるのでしょうか。現在すでにゼロコロナや上海ロックダウンを「成功」と公言して批判を許さないような状態ですが、それが今後益々酷くなるのかもしれません。
習近平氏は古典籍を好むようですが(少なくともそのようなポーズを見せている)、諫臣・能臣を退けて、失敗を「成功」と言い張って反省しない帝王がどうなったのか。『史記』一書に載っている記述だけでも枚挙にいとまありません。
こういった古典籍や歴史書をおそらく読んではいるのでしょうが、どうも実践はできていないように思われます。言い換えると、歴史に学ぶことの難しさを体現しているとも言えるのかもしれません。日本の総理大臣の場合、その権力の源は何であるでしょうか?
いうまでもなく、憲法で行政の長と規定されていることですが、日本は議院内閣制なので、国会で選ばれることが総理大臣になるのには必要です。
総理大臣は議会の多数派から選ばれる必要がありますが、現在は自民党の総裁が選ばれます。自民党総裁でなくなれば総理大臣ではなくなります。
つまり、自民党総裁である=総理大臣ですが(ただし、日本の場合は政権交代がありえます)、自民党総裁になるためには、派閥の議員数を多くして総裁選に勝つことが決め手になります。
習近平国家主席も、中国の国会にあたる全国人民代表大会で選ばれています。ただし、中国の場合、共産党が圧倒的多数で、選挙による政権交代はありえません。中国共産党のトップ=国家主席です。
中国共産党のトップは総書記です(党主席という役職は、1982年に廃止)。ソ連も「書記長」というのが国家のトップであることを意味しましたが、共産党というのは、書記長(日本語だと書記局長、中国語だと総書記)に権限が集中するようになっています。
これは、スターリンが作った仕組みですが、書記長に党の規律検査委員会が属しており、全ての党員の査問、処罰、人事権を握るようになっています。
それでは、中国共産党総書記であれば、中国共産党の権限を握り、国家を完全に支配できるのかというと、中国共産党には中央軍事委員会という独自の仕組みがあります。
軍事委員というのは、ソ連のトロツキーが作った仕組みですが、ソ連や中国の軍隊には、部隊ごとに必ず非軍人の共産党員が所属していて、監視や福利厚生、占領統治などを担当します。軍人が反乱を起こさないように、共産党員が常に監視する仕組みです。
共産党の中央軍事委員会主席は人民解放軍の統帥権を持つと憲法に定められています。鄧小平は、総書記にも国家主席にもなりませんでしたが、中央軍事委員会主席であることで、最高権力者であり続けました。
習近平氏は、2013年から、国家主席、共産党総書記、共産党中央軍事委員会主席の地位を兼任しています。制度上は、文句なく全権を掌握しています。
同世代のライバルも全て引退か失脚しています。
総書記を選ぶのは204名で構成される共産党中央委員会ですが、その中に習近平氏に対抗しうる派閥といえるものは、もうありません。冒頭に書かれているように、「習近平一強だけでなく、習近平派一色へ」が浮き彫りになった党大会だったと総括できます。中国の将来を左右する、故に、歴史に残る一幕でした。
本記事でコメントさせていただいております。