決済アプリで銀行送金 来年にも、事業者の日銀口座条件
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日銀口座や全銀の門戸が開いたという点は非常に大きな出来事だと思いますが、議論に時間がかかった背景として、新規接続事業者の具体のニーズが見出しづらかったというのはあると思います。
前提ですが、システミックリスクを踏まえると、全銀に接続する事業者には一定の品質を担保する事が求められるでしょうし、U/Xのプロセスにおいても一定の定義はなされると考えられます。資金移動業を持っている=全銀に接続できるではありません。
その上で、具体の有用なケースを考えると、例えば、海外送金等のサービスを提供している事業者からすると、デジタルペイロールと掛け合わせて、銀行を介さずに即座に送金できるというU/Xを実現できる可能性はあると思います。
他方、PayPayやLINEPayの個人間送金は既に手軽な送金U/Xを実現しているのに対して、銀行送金のU/Xは劣後するでしょうし、低廉化したとはいえ、手数料もかかるはずです。
ただ、PayPayやLINEPayを使っていないユーザに対しての送金がしやすくなるという意味では、日本では長らく実現していなかった、個人間送金のマスアダプションが進む可能性はあると思います。PayPay等を使っていない方からすると、何もせずとも銀行口座に振り込まれるわけですから画期的に楽ですよね。そういう点ではとても期待しています。
また、ヤフーや楽天等の大手ECや、メルカリのように自社内での大量の資金決済が発生する事業者からすると、(ヤフーは楽天は銀行を持っていますが)自前の銀行を持たずとも加盟店に対して直接的な資金決済を行うルートができるという点では、今後のお金の流れが変わる可能性は出てくると思います。
但し、その場合においても、資金移動業としての規制が緩和されるわけではないので、滞留規制や上限規制等を踏まえた上でサービス設計を行う必要がありますから短期的にみて、銀行が不要になるような大きな動きにはならないでしょう。
しかし、繰り返しになりますが、長らく規制に守られていた門戸が開いたという点において、決済業界にとって非常に重要な出来事だと思います。
ご尽力された関係者の皆様、本当におつかれさまでした。いくつかのアングルで思うところなど。
1)手数料
日銀への口座開設、自社エコシステム外への送金、ネットワーク利用料など接続に関わる初期投資、限界費用をどうカバーするか。もはや死に体の銀行振込に対して(PayPayが加盟店決済で仕掛けたような)パワーゲームを仕掛けるインセンティブがどれほどあるか。最近1ヶ月で誰かに送金しましたか?
2)ユースケース
全銀ネット接続の本質は振込ではなく口座振替では?ただし資金移動業者の預り金の上限が気になるところ(100万円以上の滞留は引き続き認められないと読める)
また送金事業者からすると送金を受けるためには最低14桁のIBANに変わるコード体系が必要でこのあたりのユーザーへの通知、周知も悩ましいところ。PayPayにお給料振り込んで下さいって会社にどう伝えますか?
3)海外デハノカミ
例えば欧州では既にCEPAに送金事業者の接続は許されており銀行ライセンスと決済ライセンスがきちんと整理されています。日本の法体系は本当に大丈夫でしょうか。少額送金事業者は決済代金をプールしなくて良いだとかマジで言ってんの?という感じではあります。
一方でBaaS事業者にとっては朗報で動かない銀行が動くキッカケにはなるのかなと。フィンテック領域において、これは大きな動きになりますね。ただ接続した際の手数料が気になります。フィンテック企業も営利企業ですから、手数料などのコストは結局はユーザーに転嫁されます。
少々ポジショントーク的な話をすると、ブロックチェーンを介してやり取りされる暗号資産などのデジタルアセットは、異なる複数の異なるアプリケーション間でも、ブロックチェーンを共通の参照先とすることで、相互の価値移転を実現しています。既存のシステムへの接続性を高めるアプローチも勿論大事ですが、コスト構造が劇的に変わるわけではないため、フィンテック企業の志向する新たなビジネスモデルを実現するのに費用対効果が合わない可能性もあります。その意味では、一定の制限下でブロックチェーンなどの新たな基盤を用いたステーブルコインによる決済ネットワークを構築しフィンテック企業に開放するのもアプローチとして面白いのではないかと思います。