武田薬社長:株主還元に意欲-注力分野での大型薬候補獲得で買収視野
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円安に対する記載の部分は的を射ていると思います。同社の売り上げは約2.6兆円ですが、その80%以上が海外の売り上げで構成されるという特徴を持ちます。さらに、ほとんどの海外取引分がドル建てで決済されているはずです。非常に簡略化した計算ですが、計算基準のドルー円レートから円が30%下がると海外取引分(約2兆円)の円建て売上額が30%上がる計算です。つまりは、この前提だと売り上げが6000億円上がる計算で、そのほとんどが税引前利益の増額分になります。
しかしこれは円安によってもたらされるものであり、円高に移行すればその逆行が起こります。歴史的円安を前提に経営計画を組むと、逆ぶれしたときに経営危機を招きます。現在の円安の進行は、経営計画に携わる方にとって、非常に悩ましい状態といえます。
株主還元について、これまでも同社は、株価(現在約3800円)に対し年間配当180円を行っています。結果、配当利回りが日本有数に高いことが知られます。利益に対する配当率も異例に高く、年度によっては税引き後利益の100%以上を配当しています。内部留保を減らすことを意味しますので、結果として成長への投資余力が落ちます。
同社の株価は長期的に下落していましたが、高い配当率によって下落が支えられながらも、投資の内容が株主に支持されていないことが読み取れます。さらに株主還元するかのような発言が出ていますが、非現実的です。さらにそれを行わないと短期的な株価が支えられないということを視野に入れているものとの憶測を呼ぶ可能性がありますが、一般的なリップサービスの範疇かもしれません。(実際に実施すれば一時的には株価は上がるはずです。)
製薬企業の長期的な成長は研究開発力が強く関連します。同社の研究投資について、基本的には日本撤退に近い状態です。海外の研究開発拠点も世界の巨大企業と比較すると規模が小さく、近年の同社の基本戦略は「シーズまたは企業の買収」に側に寄っていました。そういった事情と今回の発言にも矛盾はありません。
買収時期と可能性について、円建て利益が上がり豊富なキャッシュ創出力から(日本企業の)買収はやりやすい状況にありますが、海外企業の買収は円建て支出も増えるためメリットは帳消しになります。海外企業から見た場合、逆に円安により武田薬品の買収が積極検討されているとも推測されます。いまのパイプラインを眺めると、優先すべきはパイプライン強化のための製品導入、買収だと私は考える。
その場合、負債による調達が必須になる。
その返済は年々のキャッシュフローが頼りになる。シャイヤー買収の負債削減に旧武田の資産売却をあてにできた状況とは異なる。
増配ではなく、むしろ減配するべきかもしれない。
増配がR&D停滞という経営責任にたいする免罪符になるわけではない。