【読書案内】新しい「世界史」を読み解くための必読書
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これは素晴らしいリストです。さっそく書店や図書館へ行きたくなります。
なお、マクニール『戦争の世界史』ほど大胆で総合的ではありませんが、金子常規『兵器と戦術の世界史』も親しみやすくてオススメです。
https://www.chuko.co.jp/bunko/2013/10/205857.html
金子常規氏は長らく自衛隊の幹部教育を担当した人物です。やや古い部分はありますが、決して軽さはなく、実践経験に裏づけられる現実的な視点で歴史を分析しています。砲兵出身なので、砲兵に偏重する傾向があるのはご愛嬌。記事で挙げられている本は、政治史、外交史、国際関係論の本が多いです。もちろん、いずれも重要です。
一方、戦争について学ぶうえでは、軍事学、軍事史も必要なのですが、日本の大学で教えているところが非常に少なく、日本語に訳されている本も少ないです。
今回のウクライナでの戦争についてもそうですが、軍事学と軍事史がわからないと、ロシア軍の発想がわかりません。対抗するNATO諸国も、軍事史、軍事学の研究成果に基づいて行動しています。
ロシア軍でもNATO軍でも軍大学を出たなら読んでいるであろう、主な本はいくつかありますが、
① クラウゼヴィッツ(1832)『戦争論』
フリードリヒ大王とナポレオンの戦争を総括し、近代国家の戦争とは何であるか、の基礎をつくりました。戦争は「政治の一手段」であり基本的には戦争は政治に従属するものであること、戦争は軍隊だけでやるものではなく国民・軍隊・政府の三要素が一体となって行うのが近代戦であるという、現代の常識を示しました。
また、戦争による速度の重要性を明示し、突破、迂回、包囲によって敵を殲滅する、という後の機動戦の基礎を唱えました。
② リデル=ハート(1954)『戦略論』
主に第1次世界大戦と第2次世界大戦での英国の戦いを総括し、「間接アプローチ戦略」を唱えました。最終的に、敵の殲滅を目的とすることでは変わりませんが、、その前段階として、同盟国への兵器などの支援、経済封鎖、通商ルートの破壊、などを行うこと、そして、敵軍を突破するにあたって、まず指揮系統や連絡線を破壊することを提唱しました。これは、空軍などの20世紀のテクノロジーによって可能になりました。
③ グランツ(1991)『ソ連軍〈作戦術〉』
ソ連・ロシア軍の基本的な理論である縦深攻撃・縦深防御についての本で、もともとソ連軍のトゥハチェフスキー元帥が提唱したのですが、日本語で紹介しているのだとこの本になります。
敵軍の突破、包囲、殲滅が目的であることは変わらないのですが、数百キロに長く伸びた(縦深)地上部隊による突破、侵入、そのための長距離砲撃と補給の重視、空挺部隊と空軍による敵の指揮中枢の早期の制圧、などを特徴とします。
ロシア軍のウクライナでの戦いも、これらの教科書に忠実に進められています。開戦の2か月前には、明らかに縦深攻撃を始めるための準備を進めていました。書名がテキストで入っていない。残念。まずは本屋さんでチェックしたい人なので、ISBNとともにリストにしておきました。日本語・日本語翻訳本のみ。
戦略の世界史 戦争・政治・ビジネス 上 (日経ビジネス人文庫) 978-4-532-24007-3
戦略の世界史 戦争・政治・ビジネス 下 (日経ビジネス人文庫)978-4-532-24008-0
戦争の世界史 技術と軍隊と社会 上 (中公文庫)978-4-12-205897-2
戦争の世界史 技術と軍隊と社会 下 (中公文庫)978-4-12-205898-9
国際政治 権力と平和 上 (岩波文庫) 978-4-00-340281-8
国際政治 権力と平和 下 (岩波文庫) 978-4-00-340283-2
ロング・ピース 冷戦史の証言「核・緊張・平和」 4-7556-1162-8
メルケル 世界一の宰相 978-4-16-391473-2
新しい世界の資源地図 エネルギー・気候変動・国家の衝突 978-4-492-44466-5
ポスト社会主義の政治 ポーランド、リトアニア、アルメニア、ウクライナ、モルドヴァの準大統領制 (ちくま新書)978-4-480-07380-8
ロシアについて 北方の原形 (文春文庫) 4-16-710558-6
核の透明性 米ソ・米露及びNPTと中国への適用可能性 978-4-7972-8238-2
「核の忘却」の終わり 核兵器復権の時代 978-4-326-30280-2
新たなミサイル軍拡競争と日本の防衛 INF条約後の安全保障 978-4-89063-401-9
NPT核のグローバル・ガバナンス 978-4-00-022291-4
独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書 新赤版) 978-4-00-431785-2
八月の砲声 上 (ちくま学芸文庫) 4-480-08867-9
八月の砲声 下 (ちくま学芸文庫) 4-480-08868-7