なぜ、他人を搾取するのか。サイコパスの脳と行動原理
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表面的には良い人に見えるけれど、他人を搾取したり利用したりしても罪悪感を持たない——。そんな「サイコパス」と呼ばれる人について、これまでの研究で何がわかっているのか、そして、もし身近にいたらどう付き合えばいいのか。大平英樹・名古屋大学教授に解説していただきました。
サイコパスの人の行動原理が浮かび上がる実験の内容と結果がとても興味深いです。精神科専門医です。
サイコパスとは、あくまでも生物学的な理由による脳機能障害によって、本質的に温かい感情を持ち合わせていない特性を持つ人々を指します。
つまり、本当に、脳機能の障害で「相手の痛みが解らない」のです。
しかし誤解されやすいのは、本質的に相手の痛みが解らないからといって、常に鉄仮面の表情ではないことです。
表面的に普通を取り繕うことが出来るので、さも相手に共感しているように見せたり、屈託のない笑顔や優しい言葉を口にすることが出来ます。
そして、その演技は全て、後から頂く果実に繋がっている行動なのです。
生粋の詐欺師、連続殺人鬼、など、
そのサイコパス特性を如何なく発揮した個人による理解不能なニュースが時々、メディアを賑わせることがありますね。
サイコパス的な特性のメリットとしては、
・一切、罪悪感を感じないので、まさに鋼のメンタルの持ち主
・他者の痛みが解らないので、自身の利益、目的、欲求をに向かって、躊躇することなくそれを遂行することが出来る能力
・不安を感じて怖気づくことがなく、淡々と実行する能力
上記のような能力を発揮し、社会に適応しているサイコパスとして、マイルドサイコパスという言葉もあり、優れた業績を発揮したり、時代によっては、カリスマ的な英雄として扱いをされる場合もあります。
時の権力者、経営者、政治家、教祖、医者、タレント、スポーツ選手など、
何かしらの人の上に行く人の中には、マイルドサイコパスが多いと言われたりします。
一方で、後天的な理由、つまり、その人が生きて来た中での経験や境遇により、「あえてサイコパスのように振舞っている人」や、「サイコパスっぽく見える人」も一定数います。
例えば、自己愛パーソナリティ障害のように、自己顕示欲や承認欲求が病的に強いことによって、自分の利益のみに直結した行動を認める場合があり、一見すると、サイコパスのように映ることがあります。
また、それ以外にも、過去に多大な損害を被った苦い経験などによる学習の結果、他者を一切信用しない人格が形成されることはあり得ます。そうなると、不要となれば尽力してくれていた部下でもバッサリ切る、冷酷無比な経営者等が該当する人がいると思います。
こちらも、脳機能障害ではなく、あくまでも後天的な学習の結果なので、本来の意味ではサイコパスではありません。取材・構成担当しました。大平教授の研究テーマは、感情や意思決定の背後にある脳と身体のメカニズムの解明。サイコパス研究の結果は、逆に、わたしたちが普段、いかに感情に左右されて意思決定をしているのかを示しているとも思いました。
いろいろ興味深い取材でしたが、集めて実験できるくらいサイコパス傾向がある人がいるのか…ということが一番衝撃的だったかもしれません…!
記事では紹介できませんでしたが、大平教授の他の研究も面白いのです。
歴史的に心理学で研究されてきたことに、脳科学が合流して、さらに分子遺伝学も加わっていって、「心」のいろいろなメカニズムが解明されている今、知れば知るほど「自分とは何か」の見方が変わってきて楽しいです。