住友林業 脱炭素で新ファンド設立へ 国内外で森林の保護や管理
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森林ファンドは欧米ではある程度浸透しているオルタナティブ投資の一種です。
・景気変動に影響されない(相関がない)、・農作物と異なり(干ばつなどの気候被害が少なく)毎年着実に成長する、といった特徴があり、オルタナティブとして特徴的というかおもしろい存在です。
私も過去に、日本でやれないかな・・・と構想した時期がありました。
日本の山林主である住友林業などがやれば資本力ともあいまってうまくいくのかもしれませんが、独立系ファンドがやるのはやめときなさい、というのが当時の投資家の評価でした。
日本の山林は、高度成長期に人工的に植林したおかげで丸々とした大きな木がたくさん育っています(樹齢が長くなりすぎるとCO2吸収力は落ちるので早めに伐採して植林したほうが良い)。
一方、高齢化もあって山林管理をする人員が極端に減っており、必要な間伐などの手入れもおざなりになりつつあります。
またバブル崩壊以降、輸入材の大量輸入などもあって木材価格が数分の一に低迷しているため、本格伐採しても山林主は採算があいません。これも管理がおざなりになる理由です。
加えて、日本の山林は急峻で、欧米のような大型重機を持ち込んで効率的に作業ができるところが少ない。また、個人が細切れに山林を所有していて境界線があいまいなところも多く残っているため、重機の持ち込みに必要な山道を敷設するのも大変。
という課題があります。これらをひとつひとつ解決しようと壮大な?構想を持ちましたが、元手となる資金は集まりません(まあ当時は当然でしたね)。
しかし時代が変わって、CO2クレジットを投資家リターンに加えることで、投資家の採算も合うようになってきたのでしょう。
大変な事業だと思いますが、とても期待しています。言うは易しやるのは・・・。ぜひ頑張っていただきたいとは思うのですが。
海外では、「林業は比較的長期間、安定した収益が見込める事業」との位置づけだったりもするようで、ファンドの投資対象にもなったりするようです。
ひるがえってこの国で、たくさんの(しかも人工的に植林したのに!)森林が「ただでもいらん」って散々なことになっているのは(実際探せばいくらでも見つかります)、「管理に金がかかりすぎてやればやっただけ持ち出しになる」ところばっかりだから、と理解しています。
住林さんが広大な森林を所有しているのは事実ですが、「基本、まとまった広さで条件の良い」ところが多いんだろうと思います。
新たな場所に手を出そうとすれば、「より条件の悪い」ところへ行かざるを得ません。そのままやるだけではファンドとして成立なんかしないのは明らかなのですから、「その資金力に物言わせて土地をまとめる」、とか「林道など、比較的大きなお金がいる効率化投資をする」などが必要になると思います。
これに、「CO2吸収の価値(排出権ビジネス)」を組み合わせて採算化できれば、素晴らしいモデルケースになると期待しています。北米や欧州では森林を投資対象と位置付けてきた歴史があります。米国ではオフィスリートを凌ぐ規模の大型森林リートなども存在し、ドイツの主要大学の一つで19人のノーベル賞受賞者を輩出しているフライブルグ大学には森林のマネジメントに関する学部があり、結果として今回の住友林業のような民間主体がファンドを組成しようとした時に、市場を通じて買うことが出来る森林が多数存在しています。民間資金の流入が森林の整備を下支えするという構図がそこにはあります。ひるがえって、日本の状況は、所有者が細かく分かれすぎている上、誰が所有者がわからない「所有者不明森林」問題もあるなど、課題山積です。所有者の確定作業と、その所有権の集約化が急務です。
そこに手を打たないと、今回の住友林業のような心ざしを持つ企業が、「国内外で」と理想を掲げながら、現実には整備の進んだ海外の森林を買わなければならないという異常事態がいつまでも続いてしまいます。