【新潮流】芸術と理系の組み合わせ。アートサイエンスって何?
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アートの語源は、ラテン語のarsですが、元来、人間がものをつくりだす行為全般を含んでいます。英語だと、「人工の」artificialという言葉にその意味が残っています。
建築も、都市計画も、道路や橋といったインフラ整備も、古代ローマ以来、アートの一部であったし、数学を基礎にしていました。
美術にしても、彫刻にしても、解剖学や博物学によって人体や生物、自然現象を解明していくこととの共同作業という面があり、自然学者もまたスケッチなどの技術を必修としていました。
中世のヨーロッパでは宗教なども世界観を提供しましたが、ルネサンス期には科学をアートの基礎としようとする動きが再び強くなっていきました。
日本語で「芸術」という訳語が明治時代につくられましたが、これだと歌舞音曲や芸事の類のようで、社会基盤の整備を含み、自然科学を基礎としているアートというものが、当初からあまりよく理解されてこなかったでしょう。
20世紀に、ヨーロッパでもアートと科学の関係は一度再編成を余儀なくされました。これは、アートも科学もその内部で再編が起きたからです。
アートは、アフリカやインド、中南米、中国、日本と接触したことで、自然科学を前提としない全く異なる世界認識に基づく創作に遭遇しました。ピカソなどはその代表ですが、ヨーロッパによる植民地化は、外部の世界認識を取り入れ、アートは変貌しました。
科学の世界にも、新たな科学と称するマルクス主義や精神分析学、社会学などが現れました。アートは、これらの「新しい科学」に大いに影響を受けて、取り入れようとしました。これら20世紀に新登場した「新しい科学」は、現在は科学からは除外されつつあります。
20世紀を経て、アートと科学の関係は、また再編成されています。結局、現代では世界を認識するのに科学は必須なので、アートが世界の認識を表現するものである以上、科学とは切っても切り離せません。近年、アート界で注目されているテーマ「アートサイエンス」を取り上げます。アートの知見とサイエンスの知見を組み合わせながら制作する手法で、両者に共通するのは「問いを立てていく思考法」だと、今回登場いただいた塚田有那さんは語ります。末尾には、このテーマをより学びたいときに見るべきものついてもまとめていますので、ぜひご興味ある方は、知識を深めていただければ幸いです。